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【22-50】中国のエネルギーモデル転換の歩み方

操秀英(科技日報記者) 2022年10月13日

 北京でこのほど開催された「グリーン低炭素·エネルギー変革」国際ハイレベルフォーラムで、エネルギー問題の世界的権威であるS&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は、「エネルギーのモデル転換は人々が想像しているよりもずっと複雑で、たくさんの課題がある。もし、この問題をうまく処理できなければ、世界的なエネルギー危機、経済衰退、不安定な社会といったリスクに直面する可能性がある」との見方を示した。

 今回のフォーラムでは、世界及び中国のエネルギー産業のグリーンと低炭素へのモデル転換の発展におけるホットな問題、重点、ボトルネックをめぐって、チャンスや課題を分析し、戦略やレイアウトを計画し、発展ルートを模索し、政策的提案を行うことをその重要な目的としていた。

エネルギーのモデル転換実現にはエネルギーの安全保障が先決

 中国工程院の院士で、中国石油集団の戴厚良董事長は、「今年に入り、各国でエネルギーの安全保障に対する懸念が広がり、エネルギー価格が高騰を続けている状況下で、世界のグリーンと低炭素へのモデル転換の道はより複雑化し、紆余曲折するようになった。中国のエネルギーやエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量は、CO2総排出量の80%以上を占めている。『カーボンニュートラル・CO2排出量ピークアウト』の目標を達成するためには、エネルギー関連の問題を解決することが非常に重要になる」と分析している。

 そして、「理に適ったエネルギー発展戦略を計画し、旧制度を壊し、新制度を構築するという姿勢を貫かなければならない。短期と長期の関係を統一してうまく処理し、安全性と経済性、クリーン性の関係もうまく処理しなければならない。数ある目標の中で、最適解を導き出し、エネルギー業界のグリーンと低炭素の発展を確保し、エネルギーのモデル転換の道を安定して、長期間にわたって歩み続けなければならない」と強調している。

 中国工程院の院士で、同院の李仲平副院長は、「新たなテクノロジー革命や産業変革により、世界のエネルギー技術と供給の構造が再構築されており、風力発電・太陽光発電、先進的原子力エネルギー、グリーンな水素エネルギー、新型エネルギー貯蔵といった新型エネルギー技術が現在、未曾有の速度でイテレーションを加速させ、エネルギーのグリーンと低炭素への変革を推進する重要な原動力となっている」との見方を示している。

 また、世界は高まり続けるエネルギーニーズや日に日に際立つ構造的矛盾、エスカレートする地政学的緊張、地域の不安定化という問題に依然として直面しており、世界のエネルギー体系の大幅な調整が進められている。李副院長は、「エネルギーの安全な発展は、グリーン発展や質の高い発展の前提であり、それが現在、そして今後しばらく、エネルギー発展をめぐる上での際立った任務となるだろう」と指摘している。

 それはフォーラム出席者の共通の認識でもある。ダニエル・ヤーギン副会長は、「世界の多くの国は今後、エネルギーの安全保障を議題に再び組み込むようになるだろう。エネルギーのモデル転換を実現するためには、エネルギーの安全保障が先決だからだ」と強調している。

三段階の戦略でエネルギーのグリーン・低炭素へのモデル転換推進

 2021年、中国工程院は「中国CO2排出量ピークアウト・カーボンニュートラル戦略・ルート」重大コンサルティングプロジェクトを始動し、中国石油天然気集団有限公司が中心となり、「CO2排出量ピークアウト・カーボンニュートラル」の目標下の「エネルギー発展戦略研究」を担当した。

 課題グループは、中国のエネルギー発展戦略を系統的に計画・制定し、「石炭」をメインとし、「石油、ガス、新エネルギー」をサブとする「一大三小」のエネルギーシステムから、新エネルギーをメインとし、石油、ガス、石炭をサブとする「三小一大」のエネルギーシステムへのモデル転換を促進することを提起している。

 戴董事長は、「三段階の戦略に基づいて、エネルギーのグリーンと低炭素へのモデル転換を秩序良く推進しなければならない」と指摘している。

 第一段階は、2035年をめどに、化石エネルギーがピークの状態で停滞期に入るようにし、石炭のクリーンな応用、減量、石油の安定的な発展、天然ガスの発展加速、新エネルギーの発展加速を推進する。化石エネルギー消費のピーク到達を実現し、非化石エネルギーの割合が30%以上に上昇するよう取り組む。

 第二段階は、2036年から2050年までの期間。非化石エネルギーへのチェンジ推進を加速させ、新エネルギーの効率的な開発、利用、技術をめぐる難関攻略強化を通じて、ターミナルデバイスが利用するエネルギーを電気化する飛躍的アップデートを促進し、新エネルギーを主体とした新型電力システムの構築を加速させ、新エネルギー供給体系を整備する。2050年頃に非化石エネルギーの割合が60%以上に到達するよう取り組む。

 第三段階は、2051年から2060年までの期間。クリーン・低炭素で、安全、効率的な近代化エネルギー体系を全面的に構築し、石炭、石油の原料属性、ベース保障機能をさらに際立たせ、新エネルギーの大規模利用におけるベストパートナーという天然ガスの役割をさらに発揮させるようにし、風力エネルギー、太陽光エネルギー、バイオマスエネルギー、原子力エネルギーの利用規模を拡大する。2060年までに非化石エネルギーのエネルギー全体に占める割合が80%以上に達するよう取り組む。

モデル転換をめぐる課題克服のために必要な積極的な模索と行動

 中国工程院の院士で、国家エネルギー専門家コンサルティング委員会の副会長、国家気候変動専門家委員会の顧問を務める杜祥琬氏は、「『カーボンニュートラル・CO2排出量ピークアウト』の目標達成を目指す中国は今、エネルギーのモデル転換という重い任務を遂行しなければならないほか、一刻の猶予も許されないハードルに直面している」との見方を示している。

 そして、「現在際立っている問題として、産業構造が偏っていることが挙げられる。また、エネルギー産業の経済に対する寄与率は40%であるものの、エネルギー消費は全体の68%を占めており、エネルギー構造のバランスが悪く、総合的な効率が悪いのも問題だ」と指摘している。

 また、「先進国は通常、50年から70年ほどかける計画であるのに対し、中国はCO2排出量ピークアウトからカーボンニュートラルに達するまでの期間が30年しかない。そのため、全面的なグリーンと低炭素へのモデル転換を実現するためには、エネルギーのモデル転換をさらに加速させなければならず、難度は非常に高い」としながらも、「そのような困難はあるものの、積極的に模索し、行動するなら、技術の進歩や発展のモデル転換加速を推進し、『カーボンニュートラル・CO2排出量ピークアウト』の目標を達成することは可能だ」との見方を示している。

 さらに杜氏は、「『カーボンニュートラル・CO2排出量ピークアウト』の目標達成は、複雑なシステム工程で、数十年に及ぶ科学のモデル転換のプロセスでもある。その目標達成のためには、しっかりとした管理やテクノロジーイノベーション創出を呼び掛けなければならないほか、金融サポートや企業の参加が必要」と強調し、「モデル転換のリズムをつかみ、画一的に簡素化したり、モデル転換に注ぐ力が不十分で、時代遅れの投資や無意味な投資が行われたりするという状況を阻止しなければならない。旧制度を壊し、国家の変革と進歩を踏み込んで促進しなければならない」としている。


※本稿は、科技日報「我国的能源転型之路要這様走」(2022年9月6日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。