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【22-72】竹を模した振動と衝撃に強い複合材料を高速鉄道車両に応用

李 禾(科技日報記者) 2022年12月20日

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画像提供:視覚中国

 再生可能な軽量の振動減衰複合材料は、原材料源が幅広く、再生可能で、無公害で、密度が低く、質量が軽く、耐疲労性が高く、衝撃に強く、振動減衰・防音効果、防火・難燃性も高いといったメリットがあり、鉄道交通車両フロアの総合的な性能に対する要求を満たすため、将来的には、高速鉄道、地下鉄、路線バスなどの車両で大活躍し、広く応用されると期待されている。

 現在、世界の高速鉄道が急速に発展しているが、その走行速度が速くなるにつれて、金属材料で作られた従来型の列車は、振動や抵抗力が強く、騒音が大きいなどの問題に直面している。特に、高原や砂漠を含む高温、極寒、高い標高といった複雑かつ変化に富む環境下で、現有の金属材料は、振動減衰、防音などの面の性能が低いほか、エネルギー消費が大きいなどの問題点があらわになっている。

 国際竹藤センターの科学研究チームと福建和其昌竹業股份有限公司はこのほど、竹材の強靭な性能を模した再生可能な軽量の振動減衰型鉄道交通車両フロア材料の開発で大きな進展を遂げた。竹の生物構造からインスピレーションを得て、層積構造にする設計を考え出し、竹材の壁層構造に似た複合材料を作り出した。この竹材や木材といった天然のグリーン材料も利用して作り出される再生可能な軽量振動減衰複合材料は、軽量、振動減衰、難燃性、耐疲労性、耐衝撃性などの特徴を備えており、高速鉄道を含む鉄道交通車両のフロア用材の研究開発の重要な方向性となっている。

 国際竹藤センターの博士課程在学中の韓善宇氏は、「現時点で、速度250km/hの高速鉄道列車車両フロア材料に使われているのは、炭素鋼とステンレスが多い。しかし、この2種類は材料密度が高いため、車両が重くなり、エネルギー消費も多くなる。また、環境による腐食がしやすく、設計時に、腐食の余剰量を多く持たせておかなければならない。速度350km/hの高速鉄道列車車両フロア材料に使われているのは、アルミニウム合金と炭素繊維複合材料が多い。この2種類の材料は密度が低く、エネルギー消費も少なく、展延性が高く、腐食しにくいが、非常に高価。さらに、上述した金属材料はいずれも非再生可能材料で、振動減衰と防音の性能も低い」と説明する。

 竹は天然の繊維増強バイオマス複合材料で、長い年月をかけて進化して、秩序正しく整然とした傾斜層積と多孔質構造、複層的な界面を形成している。傾斜層積構造とは、竹の繊維分布密度を指し、竹の表皮に沿って、内層に向かって次第に小さくなる。そのため、竹材の力学的性質も場所によって変化し、傾斜機能の特性が顕著であるほか、竹材の構造は、繊維--繊維、繊維--薄壁細胞、薄壁細胞--薄壁細胞と、複数の界面で構成されており、強靭性能、振動減衰性能を備えている。

 国際竹藤センターの副研究員・陳復明氏は、「我々は天然の竹材の構造と機能を模倣して、手に入りやすい数種類の材質が軽くソフトな速生人工林木材単板と廃棄ゴム単板を熱間圧接して層積材にし、高強度、高硬度、多孔質構造といった特徴を備えた板状の竹炭を表面に置いて、二次冷間成形し、竹のような傾斜層積構造、多孔質構造、複層的な界面という特徴を備えた再生可能な軽量振動減衰複合材料を作り出す。振動減衰により、材料構造の共振の振幅が小さくなり、動的応力が極限に達したことが原因で、構造が破損するのを避けることができ、材料は安定した状態に速やかに戻ることができるほか、騒音も小さい」と説明する。

 この複合材料は、原材料源が幅広く、再生可能で、無公害、密度が低く、質量が軽く、耐疲労性が高く、衝撃に強く、振動減衰・防音効果、防火・難燃性が高いといったメリットがあり、鉄道交通車両フロアの総合的な性能に対する要求を満たしている。

 国際竹藤センターの研究員・王戈氏は、「一般的な竹・木質の構造材料は、建築や装飾・内装、家具といった分野によく用いられており、高速鉄道に応用されることは少ない。しかし、研究・イノベーションを通して、軽量化された、強度と耐候性の高い再生可能な軽量の振動減衰複合材料が既に、一部の速度350km/hの高速鉄道車両フロアに応用されるようになっている。将来的には、高速鉄道や地下鉄、路線バスなどの車両で大活躍し、広く応用されるようになるだろう」との見方を示す。


※本稿は、科技日報「減震又耐造"竹地板"被舗上高鉄列車」(2022年11月23日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。