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【23-07】世界のSKAイノベーションネットワークに中国の力で貢献

付 麗麗(科技日報記者) 2023年02月10日

 2022年12月5--6日、世界最大の電波望遠鏡であるスクエア・キロメートル・アレイ(SKA)の中周波アレイと低周波アレイの建設が、遥か遠い南半球の南アフリカとオーストラリアで開始した。

 国際ビッグサイエンスプロジェクトであるSKAは、世界の複数の国が資金を拠出して建設する世界最大規模の開口合成電波望遠鏡で、本部は英国に設置され、望遠鏡は南アフリカとオーストラリアに設置される。最終的に、1平方キロメートルの電波集光能力を持つようになる計画で、人類が宇宙を深く知るために大きな役割を果たすようになると期待されている。

 SKA天文台(SKAO)の創始国の一つである中国科学技術部(省)(以下、科技部)の王志剛部長は、SKA建設開始セレモニーにおいて、動画で挨拶を行い、「SKAの建設開始は、SKAOの発展の歴史において一画期的な意義を持つ重要な出来事であり、SKAOの各参加側が長期にわたって共に努力してきた象徴的な成果だ。SKA天文台のメンバー16ヶ国は、南北両半球のアジア、欧州、アフリカの3大陸から来ており、世界の複数の国が広く参加している。SKAプロジェクトのグローバル性を際立たせており、多国間国際テクノロジー協力の模範となっている」と語った。

SKA建設に向け積極的に準備

 SKAは、数千個のアンテナを1千キロに上る範囲に並べる開口合成技術を利用した望遠鏡で、広視野、高感度、高解像度、広い周波数範囲といった卓越性を一体化している。その科学研究目標には、宇宙最初の星の誕生や銀河の形成と変化、ダークエネルギーの性質、宇宙磁場、重力の本質、生命分子、地球外文明などが含まれている。

 業界では、上記のどの問題の解明も、自然科学の画期的なブレイクスルーになると一般的に考えられている。SKAの革命的な設計は、想像を超える膨大な情報量とデータ量を意味し、電波天文学の研究手段を根本的に覆し、そのイノベーション研究に全く新しい理念をもたらすこととなる。

 SKAの発起人、提唱者、研究開発者としての中国は、SKA建設において、欠かすことのできない重要な役割を果たしている。2019年3月、科技部は中国政府を代表してイタリア・ローマで、「SKA天文台設立公約」(以下「公約」)に調印し、SKAの第一段階から参加し、オーストラリアやイタリア、オランダ、ポルトガル、南アフリカ、英国といった国と国際機関・SKAOの創始国となった。同期、中国国務院は、科技部がSKA特別プロジェクトを立ち上げることを承認した。その後、2021年4月には、第13期全国人民代表大会常務委員会第28回会議で「公約」が批准され、習近平主席が批准書に署名した。「公約」に基づいて、2021年6月26日から、中国は正式にSKAOのメンバーとなり、中国のSKA参加は新たな段階に突入した。

 実際には、中国はもっと早くからSKA建設計画に参加していた。2013年から、中国は10数ヶ国の優位性ある科学研究機関と共に、国際ワークパッケージ連盟を立ち上げ、SKA建設の準備段階の設計・研究開発に参加していた。数年かけて技術の研究開発に成功し、中国の一部の研究開発チームは、技術の面で、追走から、並走し、先頭を走るまで躍進するようになった。そして、2017年には、中周波アンテナ国際ワークパッケージ連盟の議長国となり、低周波アレイ、信号・データ伝送、科学データ処理といった国際ワークパッケージの研究開発にも参加するようになった。

中国の知恵により遠くよりはっきり観測できるSKA誕生へ

 中周波アンテナ構造は、中周波アレイにおける中核施設で、望遠鏡観測の感度と精度に直接関係する。

 2022年12月2日、科技部と国際機関SKAOは、SKA中周波アレイ構造現物出資協定オンライン調印式を開催した。SKAOへの一度の現物出資としては、過去最大となり、中国がSKA計画参加におけるもう一つの画期的な進展でもあり、電波望遠鏡であるSKAの完成に向けて大きな一歩が踏み出された。

 中国電子科技集団公司・ネットワーク通信研究院(中国電子科技集団公司第54研究所)のSKA中周波アンテナプロジェクトの杜彪チーフエンジニアは、「今回、調印された64セットの中周波アンテナは、SKA中周波アレイにおける重要な構成部分だ。中周波アレイは、SKA建設において、投資額が最大のワークパッケージで、帯域幅が最も広く、完成後は、観測範囲がより広くなる」と説明する。

 杜氏によると、解像度、感度、検出速度は電波望遠鏡の3つの重要指標だ。感度が、宇宙の極めて弱い電波を「見られる」かどうかを意味するのであれば、解像度は、そうした微弱な電波を「はっきり見られる」かどうかを意味し、そして検出速度は、宇宙観測の効率と密接な関係がある。それは、アンテナの反射面の精度や波束の変形、指向精度、電磁両立性といった面に対する要求が極めて高いということで、電波天文学界が、世界の工業界の現有の設計とプロジェクト実践に突きつけた大きな課題となっている。

 杜氏は、「現有の周波数が同じ最先端望遠鏡と比べると、SKA中周波アンテナは上記の面で、大きく進歩している。米国のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(JVLA)と比べると、SKA中周波アレイの解像度は4倍、感度は5倍、検出速度は60倍となっている。今後は、より高い指標を求め続け、SKAが一層遠く、一層はっきりと『見る』ことができるよう、努力し続けたい」と語る。

「2+1」科学目標を制定する中国

 国際ビッグサイエンス計画とビッグサイエンスプロジェクトは基礎研究の最先端科学の分野における全方位的な開拓で、人類が最先端知識を開拓し、未知の世界を探査し、世界的な重要問題を解決するための重要な手段となる。

 SKA1(SKA第一段階)の主な科学目標は、宇宙最初の発光天体の誕生及びパルサー捜索、重力理論の検証となっている。それら目標が達成されれば、革命的な科学的発見となり、人類の宇宙に対する認知を覆すと期待されている。世界のSKAの今後の科学研究の方向性の展開に基づき、中国の電波天文学の分野の研究基礎を結び合わせて、中国はSKA「2+1」科学目標と、三段階発展戦略を少しずつ制定した。「宇宙の夜明けと再電離の探査」、「パルサー捜索」、「時間測定と重力理論の検証」を重要な方向性とし、その他の優位性を誇る分野を特色ある方向性として選定している。そして2020年に、SKA特別プロジェクトの第1弾関連研究開発プロジェクト7件を立ち上げた。

 中国国家リモートセンシングセンター(SKA弁公室)の趙静センター長は、「科技部は近年、SKA特別プロジェクトを頼りに、3期に分けて研究ミッションを立ち上げ、能力構築を加速させているのは注目に値する。中国の科学者は世界の同業者と共同で、FASTやMWA、ASKAP、MeerKATといった最先端施設を活用し、パルサーや高速電波バースト、宇宙磁場といった分野で複数の研究成果を生み出している」と説明する。

 趙センター長は、「今後に向けて、我々は世界のSKAイノベーションネットワークにさらに溶け込み、『中国の力』で貢献し続けたい。そして、世界の同業者と手を携えてSKAの各目標を達成できるよう取り組みたい」と語る。


※本稿は、科技日報「融入全球創新網絡 持続貢献中国力量」(2022年12月07日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。