【23-19】安定しつつ、質の高い発展を推進する甘粛省
邸 金、頡満斌(科技日報記者) 2023年05月01日
甘粛省の蘭州科技大市場では、科学技術イノベーションのニーズに応じて、全方位的かつ多層的なワンストップ式サービスを提供している。(撮影:頡満斌)
中国甘粛省では2019年から22年にかけて、ハイテク企業の数が増加した。22年における省レベルのハイテク企業総数は前年比22.7%増の1682社で、同年の全省科学技術型中小企業の評価認定数は37%増の2500社余りだった。省レベル科学技術イノベーション型企業に新たに534社が認定され、総数は128%増の768社となった。
中国甘粛省は、春節(旧正月、2023年は1月22日)が終わってから、立て続けに力強い措置を打ち出した。全省経済運営調整会合では「年始から走り始める」との使命感を示し、「スタートダッシュ」の精神力と活力を集約した。2月3日には「経済安定を維持しながら前進を促し、質の高い発展を推進するための若干の政策措置」の実施を発表。47項目の具体的政策措置で発展を後押しした。2月8日には、23年全省科学技術活動会議が開催され、8つの指標で年間の科学技術イノベーション活動を強化した。
同省科学技術庁の関係者は「2022年は企業主導による省レベルの科学技術重要特別プロジェクトが全体の70%以上を占めた。17年に比べ、省内のハイテク企業数は175%増の1683社に上り、前年比では22.8%増加した。技術契約の成約額は倍増し、ハイテク技術の産業化指数は4.37ポイント上昇し、科学技術の進歩による寄与率は58.2%に達した。省全体の質の高い発展を支援する過程において、企業のイノベーションが輝きをさらに増している」と述べた。
独自技術で企業の市場攻略を支援
計画を立て、実行に移す。春節を前に、甘粛省建材科研設計院有限責任公司(以下、甘粛省建材院)は、蘭州中川国際空港の第3期拡張建設プロジェクトの深層高温岩体熱供給プロジェクトの入札に成功した。同プロジェクトは国家交通インフラ重要プロジェクト建設3カ年行動計画、民用航空第13次五カ年発展計画、甘粛省第13次五カ年計画総合交通発展計画といった民用航空重点建設プロジェクトに組み込まれている。
同設計院の司双竜副総経理は「これは甘粛省がASEANに向けた陸上と海上の国際貿易新ルートと、中央・西アジアに向けた『新疆ウイグル自治区を通りチベット自治区に入るルート』という2本の戦略的発展ルートを構築する上で非常に重要な意義を持つ」と述べた。
科学研究機関がなぜこのような「ホットな」プロジェクトを落札できたのか。そのカギは、同設計院が独自の知的財産権を持つ無干渉の深層高温岩体の熱供給技術を持っていたことにある。
司氏は次のように説明した。「ボーリングマシンを利用して地下の中高温の岩盤層に穴を開け、その穴に密閉された金属製の熱交換器を設置し、軟水を熱交換器に注入し、熱交換によって岩盤層の中の熱エネルギーを誘導し、最終的に建築物の暖房用の熱として供給する。この技術では熱交換井戸の中で密閉された状態で熱交換を行い、熱は採取するが水は採取しないので、自然環境に干渉しない。地下水や土壌などの地質環境への影響もない。プロジェクト完成後は、暖房が必要なシーズンで、標準炭約1535.1トン、二酸化炭素(CO2)排出量3791.69トン、二酸化硫黄(SO2)排出量30.7トン、粉塵排出量15.35トンを削減できる」
科学技術成果は企業の市場競争力を高められるのか。商品化できる新製品や新技術に結びつくのか。技術の移転や取引といった科学研究成果につながるのか。同設計院はここ数年間、国有ハイテク企業として、この3つの可能性を「試金石」とし、経験の総括を続け、根本から研究の質を保証してきた。これまでに甘粛省内外で、無干渉の深層高温岩体の熱供給技術による暖房への熱供給プロジェクト13件を推進・建設し、熱交換井戸57カ所を完成させ、プロジェクトによる熱供給・冷却面積は約100万平方メートルに上った。さらに、粉砕助剤や減水剤、硬化促進剤使用コンクリートをはじめとする複数の新製品の産業化を実現した。
22年、甘粛省建材院は甘粛省企業技術イノベーションモデル賞を受賞し、「イノベーションモデル」としての栄誉を勝ち取った。同院の邵継新董事長は「グリーン低炭素という発展の方向性に沿って、新材料と再生可能エネルギー分野で、科学技術研究がやるべきことはまだたくさんある。現在、当社では『グリーン』関連業務の売上高が40%以上を占めており、新規業務の育成とモデルチェンジが省全体のグリーン低炭素と質の高い発展を力強く支援している」と述べた。
強力な支援で「小さな農薬」が大きな力を発揮
蘭州新区グリーン化工パークにある蘭州鑫隆泰生物科技有限公司では、機械音が響き、各種車両が行き交い、活気あふれる生産現場の姿を示していた。
同社は2019年に江蘇省から甘粛省に移転した。主力事業は農薬および農薬中間体(農薬原料)の研究開発、生産、販売。甘粛省に移転後、ピメトロジン年産千トンプロジェクトをわずか6カ月で完了し、半年間の付加価値額と売り上げが共に1億元(1元=約20円)を超え、同パーク初の一定規模(年間売上高2000万元)以上の工業企業になった。
同社の黄建忠董事長は「イノベーションが加速し、甘粛省での挑戦によってさらに自信を持つようになった。ピメトロジンは環境に優しい殺虫剤で、毒性は白砂糖よりやや高いほどだ。農業農村部(省)によって『重点推進無公害農薬』として認定されている」と説明した。
幸先の良いスタートを切った蘭州鑫隆泰生物科技では、業績の好調が続いた。21年には国家レベル蘭州新区化工パーク初の「ハイテク企業」に認定。このことは同社がイノベーションの道を勢いよく走るための「カンフル剤」になった。19年に申請した「年産6千トンのピメトロジンとその副産物の建設プロジェクト」は甘粛省重要科学技術特別プロジェクトに承認され、建設が始まった。黄氏は「25年にはフル稼働で生産する予定。その頃には世界最大のピメトロジン単品のメーカーになっている」と見通しを語った。
移転から生産開始までのわずか3年余りの間に、同社は国家発明特許7件を取得した。内訳はピメトロジン関連プロジェクトの発明特許が2件、ジノテフランの発明特許が1件、中間体の発明特許が4件となっている。22年の生産高は1億5800万元で、税引き前利益は1600万元。ピメトロジン単品の生産能力は国内業界トップで、国内の大手製剤農薬メーカーや東南アジア、欧州連合(EU)などにも販路を広げ、「小さな農薬」が大きく展開している。黄氏の「実効性を求め、中身を充実させ、質を高め、科学技術によって甘粛省の科学技術イノベーション発展を支える新たなランドマークの構築に力を入れる」との言葉は、企業トップの発言として、同社の発展の原動力を反映している。
23年はハイテク企業2千社以上を目指す
科学技術が強くなると、ハイテク企業を強化できる。甘粛省科学技術庁の関係者は「甘粛省では2019年から22年にかけて、ハイテク企業の数が増加した。22年における省レベルのハイテク企業総数は前年比22.7%増の1682社で、同年の全省科学技術型中小企業の評価認定数は37%増の2500社余りだった。省レベル科学技術イノベーション型企業に新たに534社が認定され、総数は128%増の768社となった」と説明した。
同省は22年、「甘粛省ハイテク企業倍増活動案(2022~2025年)」を発表し、「科学技術型中小企業-省レベル科学技術イノベーション型企業-ハイテク企業」の段階的育成発展システムの構築を表明。管理サービス能力の向上、企業に恩恵と利益をもたらす政策の実施、ハイテク企業育成特定支援資金の設立など、19項目の具体的な措置を制定した。
同関係者は「新規あるいは再度認定されたハイテク企業に対し、省の財政予算から、それぞれ1回限りの補助金として20万元または10万元支給する。新たに認定された省レベル科学技術イノベーション型企業に対し、省の財政予算から1回限りの補助金として5万元を支給する。22年には1億元近い財政奨励的補助金の支給を実施した。我々は大胆にイノベーションを進め、勇気をもってイノベーションに取り組み、包摂的で革新的な社会のムード作りに力を入れている」と述べた。
甘粛省科学技術庁の張世栄庁長は全省科学技術活動会議で、「西北地域の重要な科学技術イノベーションセンターの構築を目標とし、科学技術イノベーションによる質の高い発展をテーマに、『四つの計画』の踏み込んだ実施を主軸とし、国家イノベーションプラットフォームの構築、企業のイノベーション能力の向上、科学技術イノベーション人材の誘致・育成に取り組む」と述べた。また、省内の科学技術界に対して、五つの面で努力し、イノベーション土壌を豊かに育み、科学技術強化行動を取り、科学技術イノベーションという「最大の変数」を、甘粛省の質の高い発展を牽引する「最大の増加量」とするよう呼びかけた。さらに「23年までにハイテク企業2千社突破、技術契約の成約額370億元の達成」との目標を示した。
※本稿は、科技日報「甘粛穩中求進推動高質量発展」(2023年2月17日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。