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【23-21】建築業界に変化をもたらすAI

呉純新(科技日報記者) 2023年05月15日

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(画像提供:視覚中国)

 スマートコンストラクション(智能建造)とは、最先端の情報技術と生産技術を融合させた新しい建築スタイルを指す。スマート化された手段とその関連技術を十分活用し、スマート化システムを応用することで、建築プロセスのスマート化レベルを高め、プロセスにおける人間への依存を減らし、建築物のコストパフォーマンスと信頼性を高めることができる。

 中国の北京市住宅・都市農村建設委員会は3月27日、「北京市スマートコンストラクション試行都市活動案」を打ち出した。2025年末までに、同市でスマートコンストラクション分野のリーディング企業を5社以上育て、スマートコンストラクション・イノベーションセンターを3カ所以上、スマートコンストラクション産業拠点を2カ所以上設立するほか、「張家湾設計小鎮」にスマートコンストラクション・イノベーション実践拠点を重点的に建設し、通州・豊台両区にスマートコンストラクション産業クラスターを構築し、建築業企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)実現を目指す。

 テクノロジーによる活性化と、スマート高度化の過程において、「中国建造」が新たな競争の場に進出している。

建築業のモデル転換・高度化で必ず通る道

 中国建築第三工程局で党委員会書記を務める陳衛国董事長は、「スマートコンストラクションとは、最先端の情報技術と生産技術を融合させた新たな建築方式を指す。スマートコンストラクションを採用することで、スマート化された手段とその関連技術を十分活用し、スマート化システムを応用することで、建築プロセスのスマート化レベルを高め、プロセスにおける人間への依存を減らし、建築物のコストパフォーマンスと信頼性を高めることができる」と説明した。

 中国の建築業は数多くの「世界一」を生み出してきたが、品質の劣化、資源の浪費、悪い生産効率、人手不足とそれに伴う人件費高騰などの課題にも直面している。そのため、建築業の質の高い発展を推進し、スマートコンストラクションを実現するのが、建築業のモデル転換と高度化で必ず通るべき道となっている。

 中国はこれに対し、一連の政策・措置を制定した。例えば「スマートコンストラクションと建築工業化の協同発展推進に関する指導的意見」では、2035年までにスマートコンストラクション分野で中国が世界の強国の仲間入りすることを目指している。また「『第14次五カ年計画(2021~25年)』建築業発展計画」では「第14次五カ年計画」期間中、中国が建設ロボットの生産や施工、メンテナンスなどにおける典型的な応用を積極的に推進し「危険、複雑、汚い、ハード」な作業を補助する、あるいは人間に代わって実施するよう取り組むと明確に述べている。このほか、2022年11月には、住宅・都市農村建設部(省)が、北京など24都市を「スマートコンストラクション試行都市」に指定し、科学技術革新を通じて、建築業のモデル転換・発展を推進する考えを示した。

建築業界に大きな影響を与えるAI

 人工知能(AI)は現在、建築で幅広く活用されており、業界全体に大きな影響を与えている。建築工事の管理の面では、可視化分析やリスク予測、性能最適化、プロセスマイニング、エネルギー管理といった付加価値サービスを提供することができる。

 中国情報通信研究院の余暁暉院長は「中国はAIコンピュータービジョンの応用面でリードしている。生活におけるAIコンピュータービジョンの認証技術の典型的な応用例には、顔認証や車両ナンバー認証などがある。建築工事においては、検査や監視に活用でき、映像によるリアルタイム監視が可能で、構造パーツや危険行為、状態の認識などができる」と説明した。

 AI技術は応用過程において、ディープラーニングを通じて、画像や映像のデータを自動で処理、分析、理解し続けるほか、認識精度を高め、施工業者がさらに高精度かつ正確に現場の施工状況を把握できるようサポートすることもできる。

 また、作業員の観察力や操作に頼っていた従来の施工管理の弱点を補う面でもプラスとなる。現時点では、端末設備に搭載されたAI認識技術を利用し、データを自動で記録するとともに、現場作業員の状態や環境、進捗状況などを撮影するのが主流となっている。そして、機械学習アルゴリズムを活用して、建設プロジェクトのデータ・情報を適時収集し、それを管理ソフトに集積することで、データを自動分析して、政策決定を行うことができる。

 こうした高度な分析は、管理者が建築プロジェクトの各施工段階で現場の状況を全面的に把握し、施工における潜在的な問題を迅速に発見するのを助ける。

 AI技術は、施工現場のデータ収集に応用されているほか、従来のリスク分析の限界を効果的に打破し、専門家の経験や主観的判断によるあいまいさや脆弱性を解決するサポートにもなる。

 AIは膨大なデータや建築業界関連の理論モデルに基づき、人間の意識と思考のプロセスをシミュレートし、関連するアルゴリズム分析を通じて、重要な問題に対する補完的かつ予測的見解を提供することで、プロジェクトマネージャーによる潜在リスクに対する的確な解決策をサポートでき、工事の質を確保することができる。

 また、建築業界では、作業員の落下や感電などの事故が発生しやすく、頻度も他の業界と比べてかなり高い。AI技術を活用することで、工事現場や設備の危険性をリアルタイムで監視し、事前に警告を出してリスクを知らせることができる。

新技術、新成果がスマート建築を活性化

 中国ではスマートコンストラクション分野の新技術や新たな成果が続々と誕生している。

 中国建築第四工程局湖北省公衆衛生緊急事態対応指揮センターのプロジェクト責任者、徐春氏は「フロントエンドデバイスをデジタルクラウドプラットフォームに統合し、施工プロセスの全面的なモニタリングを行う。工事用安全点検ロボットは、屋内外で稼働でき、レーザーレーダーが周辺環境をスキャンすることで、自動SLAM(自己位置推定・空間地図作成)を可能にしている。また、ロボットの視覚モジュールと、AIエッジコンピューティングサーバーを組み合わせることで、工事現場の環境における温度異常や危険なガスを迅速に認識し、アラートを出すことができる。このプロジェクトは、国家級デジタル建造技術イノベーション重点プロジェクトの成果応用モデルプロジェクトとなっている」と説明した。中国工程院の院士(アカデミー会員)である孟建民氏は「プロジェクトでは、BIM技術を採用し、設計、調達、施工、計量・見積もり計算、メンテナンスを一体管理しており、3Dデータでの引き渡し、設計図なしの建設、正確な見積もり、工期の短縮、施工の質向上などを実現する」と語った。

 中国建築第三工程局が独自開発した中国初の「鉄骨構造工業工場スマートコンストラクション一体化プラットフォーム」が2022年10月、浙江省舟山華潤電力標準工場プロジェクトで稼働した。同プラットフォームは、鉄骨構造の工場施工に対するソリューションを提供し、業界のコア技術設備のブレークスルーを実現した。チーフエンジニアの廖峰氏によると、従来の施工方式と比べ、作業員の高所作業リスクを低減したほか、工期を大幅に短縮し、作業効率を20%以上高めた。

 AIは施工の安全確保だけでなく、施工効率を高めること可能だ。例えば、スマート鉄筋結束作業ロボットを使うことで、出窓の鉄筋を結束することができ、構造の構築や鉄筋の視覚認識・位置測定、繋ぎ目の自動結束が可能となった。上海市嘉定区のニュータウン、金地菊園コミュニティの建設では効率が人手の3倍に達した。

 AI技術を活用した施工図の自動審査も行われている。重慶市万科四季花城プロジェクトでは、設計図1枚当たりの審査にかかった時間は平均約6分で、正確率は90%以上だった。

 AIはすでにスマートコンストラクションの発展を推進する新たな原動力となっている。今後、建築分野の各種業務で、よりスマートで重要な作業を担い、融合発展の相乗効果、複合効果、乗数効果を継続的に発揮させることで、建築プロジェクトの活性化や、真のデジタル化、スマート化を促すことが期待される。