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【23-25】磁気測定データを活用し、鉱物資源のポテンシャルを予測

華 凌(科技日報記者) 2023年06月14日

 鉱物資源のポテンシャル評価は国情調査の重要な構成部分であり、鉱物資源の探査、管理、調整コントロールにおける重要な基礎作業でもある。中国国内の鉄鉱石資源のポテンシャルを明らかにして予測を立てることは、基本的な国内状況を把握する上で重要なデータの一つとなっている。

 中国自然資源航空物探遥感センターは4月7日、同センターの首席科学家である熊盛青教授率いるプロジェクト「全国重要鉱物資源ポテンシャル評価磁気測定応用重要技術」が重要な進展を得たと明らかにした。

一連の成果が鉱物資源の迅速な評価を実現

 熊氏のチームは2006年から11年間にわたり、1949年以降蓄積されてきた大量の航空・地上磁気測定データを収集、整理、集積し、研究を行った。これを基礎として、チームは大規模な磁気測定資料の応用研究を実施。鉱物資源の予測・評価における磁気測定資料の地質解析モデルの構築、磁気測定データの応用モデルの構築、磁気異常の定量的測定、資源のポテンシャル試算などの理論・方法における問題を解決し、磁気測定データの処理・解析の技術的方法を革新した。全国的な磁気測定資料の大規模応用に関する規範化・工学化・情報化した作業システムを構築、運営し、磁気測定資料に基づく全国規模のマルチスケール・マルチ深度による鉱物資源の定量的予測と迅速な評価を初めて実施した。さらに全国陸域の地下2000メートルより浅い位置にある鉄鉱石資源のポテンシャルを科学的に評価し、銅やニッケル、鉛、亜鉛など23種類の戦略的鉱物資源の評価と予測をサポートし、その研究成果は世界的レベルに達した。

 熊氏は「中国の重要な鉱物資源のポテンシャルをより正確に評価するために、私たちのチームは磁気測定資料に基づく鉱物資源の迅速な評価の理論的方法を革新した。マルチスケールで定性評価と定量評価を合わせた磁気測定資料による地質解析モデルを採用し、典型的な鉱床の地質-地球物理モデル、磁気測定資料応用データモデルを構築し、鉱物を構成する地質的要素の迅速な採取という難題を解決した。また、国内に潜在する断裂構造や侵入岩体、火山岩、変質岩、腐食により変質した岩石などの鉱物を構成する地質的要素を初めて解き明かし、航空磁気異常の特徴と磁鉄鉱、および磁鉄鉱と共生・伴生する銅やニッケルなどの非鉄金属鉱物の鉱石制御の構造などを明らかにした。さらに、中国陸域の航空磁気-地質構造図を初めて作成し、国内の鉄や銅、ニッケルなどの戦略的鉱物資源のポテンシャル評価に不可欠な重要情報を提供し、鉱物生成の法則、鉱物資源の予測、鉱物探査のターゲットエリアの選出など「鉱物資源があるかどうか?」という重要な地質学的問題を解決する科学的根拠を提供してきた」と説明した。

予測の精度・深度が大きく向上

 新たな成果には、どのような革新的な注目点があるのか。同チームは磁気測定資料に基づく鉱物資源の迅速な評価の技術体制を構築し、迅速なモデル分割に基づく重力の異常場の分離技術を発明した。全国規模で初めて、磁気解析の方法を2次元から3次元に変え、定位予測の精度を約15%向上させ、鉱物資源のポテンシャル評価における磁気測定資料の応用技術要件を作成し、規範化・工学化・情報化した磁気測定資料の大規模応用作業システムを構築。予測作業エリア、鉱物鉱床区、省レベル及び全国の5つのレベル・範囲で、鉱物資源の予測・ポテンシャル評価を全面的に規範化、指導している。

 業界専門家によると、このプロジェクトは全国規模で初めてマルチスケールによる深部鉱物資源の定量的予測と迅速な評価を実施。全国の鉱物資源ポテンシャル評価における磁気測定資料の応用工学技術の難題を解決し、予測の精度と深度を著しく向上させた。同チームが作成した中国陸域磁性鉄鉱石資源ポテンシャル予測図は、深さ2000メートルまで予測している。

 同チームは国内で鉄鉱床区36カ所、鉄鉱石予測エリア1317カ所を選定。予測エリアの面積は約30万平方キロで、鉱物探査範囲を大幅に縮小し、全国の鉄鉱石探査の方向性を指し示し「鉱脈がどこにあるのか?」という問題の解決に科学的指導を提供した。予測による全国の鉄鉱石資源量は1935億トンで、うち2000メートルより浅い位置にある資源のポテンシャルは1334億トンとなっている。スカルン鉱床予測エリア702カ所では、鉄鉱石資源のポテンシャルが223億トンに達した。

 実際の応用レベルでは、プロジェクトの成果はすでに全国鉱物資源ポテンシャル評価特定プロジェクトに活用されており、国の鉱物資源戦略計画と全国鉱物探査ブレークスルー行動において、探査エリア選定を支える重要な役割を果たしている。全国の集中探査エリアや重要鉱物集積エリア、昔からある鉱山の深部、重点探査エリアでの鉱物探査にとって指針となる重要な役割を担い、その後の探査で大型の鉄や銅などの多金属鉱床10カ所以上を発見した。これには山東省斉河県の「洪張荘予測エリア」で発見された鉱床などがある。この成果は将来、新たな鉱物探査のエリア選定と探査において重要な役割を発揮するとみられている。


※本稿は、科技日報「为解决"有没有矿""哪里有矿"问题提供科学依据 创新运用磁测数据,预测矿产资源潜力」(2023年4月12日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。