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【23-27】宇宙飛行士の安全を守り抜く 有人宇宙飛行捜索・救助・回収技術チーム

付毅飛(科技日報記者) 2023年06月22日

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 中国電子科技集団第二十二研究所の有人宇宙飛行捜索・救助・回収技術チームの責任者、宋磊さんには心に秘めた1つの願いがある。

「いつの日か宇宙から帰還した有人宇宙船『神舟』をこの手で触り、その温度を感じることができたら、どんなにすばらしいことだろう」。宋磊さんはこう語った。

 宋さんのこの願いは、たやすく実現できそうに思えるが、実はそうではない。

 1995年に発足した同チームは、主に中国有人宇宙飛行プロジェクトの帰還モジュールの測位装備開発と有人宇宙飛行の保障任務を担当する。20年以上にわたり、チームの代々のメンバーが任務に技術的支援を提供してきた。メンバーの仕事は「神舟」を見守ることだ。

 任務の中で、メンバーは捜索・救助・回収の各ポジションに分かれることになる。捜索・救助のためにヘリコプターや自動車に乗って宇宙船の着陸地点に駆けつけるメンバーもいれば、捜索・救助船に随行して数千キロ先にある海上緊急着水エリアで事前準備をし、風と波の中で宇宙飛行士を守るメンバーもいる。

「功績を上げずに戻る」のが一番嬉しい

 研究所内では、中国有人宇宙飛行プロジェクトのコード番号がそのまま用いられている。彼らは「921チーム」と呼ばれ、メンバーはこれをとても誇りに思っている。

 同研究所の所長で党委員会書記の陳欣宇氏は「神舟1号から15号まで、私たちのチームは全プロセスにわたって捜索・救助・回収に関わり、複数の記録を生み出してきた」と述べた。

 1997年、同チームは国内初の捜索・救助用車載短波方位測定装置のサンプル機を開発。この設備は99年11月21日に宇宙船「神舟1号」の帰還モジュール発見に成功した。2001年、同チームは中国初の宇宙船搭載方位測定装置を開発し、中国の有人宇宙飛行プロジェクトの海上緊急着水エリアにおける帰還モジュール捜索に重要な手段を提供した。

 打ち上げは有人宇宙飛行任務の中でリスクが非常に高いプロセスの1つで、ロケットの点火・上昇、飛行の過程で緊急事態が生じた場合、宇宙飛行士の安全を保障するため、宇宙船は打ち上げ脱出システムにけん引されて迅速にロケットと切り離され、緊急脱出プロセスを開始する。このため、有人宇宙飛行船の打ち上げのたびに、飛行経路に沿って緊急捜索・救助の準備をしなければならず、最も遠いところにある海上緊急着水エリアは中国から5000キロ以上離れた太平洋上にあり、1往復するだけで20日以上かかる。

 李蕤氏は921チームで海上保障任務を主に担当し、捜索・救助船の一番高いところに設備を取り付け、操作規定に基づいてテストとキャリブレーションを行い、毎日決まった時間に起動テストを行い、設備を常に最良の状態に保っている。任務遂行時に台風に遭遇し、李氏は嘔吐を繰り返して胃が出血し、1週間以上も食べ物が喉を通らないこともあった。このような状態でも、遂行しなければならない毎日の業務はこなしてきた。

 チームの「兄貴分」である張永宏氏は李氏の苦労に理解を示している。神舟1号の任務に参加してから現在まで、張氏は海上任務に何回も参加したが、緊急捜索・救助を行う状況は一度もなかった。毎回「功績を挙げずに戻る」のが、張氏にとっては最も嬉しいことなのだ。張氏は「私たちが不要なのが最も良いことだ。打ち上げが順調に行われたことを示しており、これが何よりも重要だ」と話した。

加速し続けるイノベーションの歩み

 帰還モジュールの着陸・回収は有人飛行任務の成否を決めるカギだ。最短の時間で帰還モジュールを発見し、宇宙飛行士を迎え入れるのが、着陸・回収任務において最も重要なことだ。

「243シグナルを検出」。これは有人宇宙船の帰還プロセスにおける暗号であり、ネットで話題になった「感覚良好」や「北京が了解」などのように人々の注目を集めてはいないが、921チームにとっては極めて重要な暗号だ。

 宋氏は「帰還モジュールが一時的に地上との交信が途絶えるブラックアウトから抜け出し、パラシュートを開いた時に243シグナルを発する。これは宇宙船が正常なプロセスによって帰還しつつあることを意味する。この時、方位測定装置は信号に基づいて帰還モジュールを発見することができ、宇宙船をしっかり追跡するとともに『243シグナルの追跡が正常』との報告を発信する」と説明した。

 03年に神舟5号ミッションがスタートすると、着陸・回収任務に空中での捜索・救助活動が加わったが、当時使用していた捜索・救助機搭載の方位測定装置は輸入に依存していた。08年、921チームが海外による技術の独占状態を打破することに成功し、国産の捜索・救助機搭載の超短波方位測定装置を開発、製造した。この年に行われた神舟7号帰還モジュールの回収作業では、初めて空中での捜索・救助が中心的役割を担い、地上での対応が補助的役割となった。神舟7号がゆっくりと降りてきて、捜索・救助用ヘリコプターがその周りを旋回する様子は、忘れられない歴史的場面となった。


※本稿は、科技日報「编织搜救密网,守护航天员回家」(2023年5月4日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。