【23-29】高い比エネルギーと安全性を兼ね備えた凝聚態電池
操秀英(科技日報記者) 2023年06月30日
重量エネルギー密度が最大500ワット時毎キログラム(Wh/kg)と非常に高く、電動飛行機に搭載すると有人飛行も可能性とされる凝聚態電池(Condensed Battery)技術を、中国車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が4月に開催された上海モーターショー2023で発表した。
凝聚態電池は比エネルギーが極めて高い化学材料の電気化学反応変化に対応している。出力特性の高いバイオニック凝聚態電解質を採用し、マイクロメートルレベルの自己適応型メッシュ構造を構築しており、チェーン間の相互作用力を調整し、ミクロ構造の安定性を増強するとともに、電池の動力学的性能を高め、リチウムイオンの輸送効率を高めている。
CATLの首席科学者、呉凱氏は「当社の凝聚態電池と半固体電池はタイプが異なる。凝聚態電池の正負極は、比エネルギーの高い各種材料にマッチし、ケースの形態の制約を受けないが、四角いケースで最も性能を発揮する」と強調した。
CATLの解説員は上海モーターショーで、「電気化学において、電池の安全性能と正負極材料のエネルギー密度には密接な関係がある。凝聚態電池は、電池の安全性能が大幅に高まっており、比エネルギーの高い状況下で、高い安全性を保証することができる。当社は既に、6系から9系までの凝聚態電池を開発しており、セルを解体しても発火や爆発は起きない」と紹介した。
より高い電池エネルギー密度
呉氏は「凝聚態電池はCATLによる材料と材料体系イノベーションの最新成果で、比エネルギーが極めて高い正極や新型負極、隔離膜、製法など、一連のイノベーション技術を結集し、優れた充放電性能と高い安全性能を兼ね備えている」と説明した。
一連のイノベーション技術により、凝聚態電池は、高い比エネルギーと高い安全性の面で、長年にわたり電池業界の発展を制約していた壁を打破し、高い安全性と軽量化を中心とした全く新しい電動シナリオを切り開くと期待されている。
従来のリチウムイオン電池と比べ、凝聚態電池の電池エネルギー密度は非常に高く、500Wh/kgに達し、現在の液体リチウムイオン電池の理論上のエネルギー密度の上限(350Wh/kg)を42%上回っている。
エネルギー密度は、動力電池の最も重要な技術指標である。500Wh/kgというのは、凝聚態電池のエネルギー密度の上限ではなく、技術が成熟するにつれて、さらに高くなるとみられている。
安全性については、液体電解液が漏れると、流動の液体電解液の場合、広範囲でショートが起き、高圧電弧が発生し、電池が発火し、爆発が起きる可能性がある。一方、凝聚態電池の場合、内部の高分子と連結するメッシュ構造が自動で適応調整され、構造の安定性が確保されるため、熱の安定性がより高い。
年内に量産へ
呉氏は「正負極材料によって、凝聚態電池のエネルギー密度も異なる。有人航空機の企業1社と既に提携している」と明らかにした。
CATLによると、エネルギー密度が低い車載向け凝聚態電池は、年内に量産が可能になるという。
呉氏は「新しい製品としての凝聚態電池は現時点ではコストがやや高い。凝聚態電池の研究開発は、航空機向け電池の需要があるためだ。航空機向け電池に求められるのは、コストパフォーマンスではなく、軽量化と高い安全性だ。自動車の場合、それほど高いエネルギー密度を必要とせず、車載向けの研究開発では、エネルギー密度を適度に調整している。ただ、主な性能は同じだ」と述べた。
CATLの関係者は「動力電池の安全性、性能、コストなどの面の全面的な向上とバランス調整は、追求し続ける目標だ。また、研究開発において、その回収、再利用という問題も考慮に入れなければならない。それらの面が、当社の今後の研究開発の主な方向性になる」と語った。
※本稿は、科技日報「凝聚态电池来了兼顾高比能和高安全」(2023年5月19日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。