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【23-45】データの可能性を引き出してイノベーション発展を促進

房漢廷(浙江大学区域協調発展研究センター研究員) 2023年09月06日

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(画像提供:視覚中国)

 2022年に開かれた中国共産党第20回全国代表大会で「デジタル経済発展を加速させ、デジタル経済と実体経済の深い融合を促進し、国際競争力を有するデジタル産業クラスターを構築する」という目標が掲げられた。データ要素は、デジタル経済の中核部分で、土地や労働力、資本、技術に続く第5の生産要素とされている。データの潜在能力を発掘することは、社会全体に眠っている生産要素を有効活用し、生産要素を増やし、イノベーション駆動発展を実現するための重要な選択肢となる。

デジタル経済が世界の経済発展の主要業態に

 生産力の観点から見ると、人類は文明社会に入ってから主に農業経済と工業経済という2つの大きな段階を経験してきた。農業経済の特徴はツール(道具)による駆動であり、つまり、人類は道具の大規模な製造と使用を通じて、土地の開拓や家畜の利用、生産能力の大幅な改善、栽培や牧畜の発展促進などを行ってきた。道具を作って、それを使うことで推進された経済文明は、道具型文明と言うことができ、それによって推進された経済成長が「算術級数的成長モデル」を切り開いた。

 工業経済の特徴は、人類がツール(道具)を作り、それを使う能力が高まるとともに、エネルギーの大規模化・標準化利用、特に電力の発見とその一般的な応用が実現し、社会全体の労働生産率が大幅に向上したことだ。道具とエネルギーという「二輪駆動」の経済文明が工業文明となり、それによって推進された経済成長が「乗数的成長モデル」を切り開いた。

 21世紀に入り、全く新しい経済形態として登場したデジタル経済の特徴は、ツール(道具)とエネルギーの駆動の上に、データ駆動が加わったことだ。デジタル経済は情報革命の成果で、データ駆動はデジタル経済の中核となる原動力だ。道具、エネルギー、データという「三元駆動」の経済文明がデジタル経済文明となり、それにより駆動される経済成長が「指数関数的成長モデル」を切り開いた。

 デジタル経済時代において、中国は既に「先手」を打っている。2022年、中国のデジタル経済規模は50兆元(1元=約20円)を超え、国内総生産(GDP)に占める割合は40%を超えた。そして、10%というハイペースの成長をキープし、経済成長を安定させる原動力となった。2032年、その規模は100兆元を超えようとしている。

データ技術の急速な世代交代がデジタル経済の転換点を出現させる

 1970年代から現在に至るまで、情報革命は情報処理革命、情報伝送革命、情報収集革命という三つの大きな波を経験してきた。現在は情報収集、情報伝送、情報処理および応用が爆発的に成長する時期を迎えている。特にアルコリズムや計算能力が飛躍的に発展し、社会全体の経済形態が、デジタル経済時代に急速に突入し、データが重要なリソースと資本になっている。データの境界コストは固定コストに近づいており、デジタル経済は既に転換点を迎えている。

 第一に、ブロードバンドIoT(モノのインターネット)が今後、万物のインターネット(IoE)を実現し、全てのデータを収集することが可能になると見られている。「市場調査研究オンライン」が発表したデータによると、2023~29年の間に、中国のIoT市場の規模は3兆5000億元に達し、成長率は20%以上になると予測されている。

 第二に、5G/6Gネットワークが今後、低遅延、大容量、高速のデータ伝送を実現し、全てのデータが一瞬で届くようになる。移動通信関連の業界団体「GSMA」が発表した「中国モバイル経済発展(The Mobile Economy China)2023」年度報告によると、2025年には、中国は世界の市場で初めて5G接続数が10億に達すると予想されている。

 第三に、クラウドコンピューティングやChatGPTをはじめとする人工知能(AI)技術が今後、効率的で質の高いデータ処理を実現し、全てのデータが加工、整理、再利用できるようになる。インターネットデータセンター(IDC)が発表した「V1世界AI支出ガイドライン2023」は、中国のAI市場の支出規模が今年、147億5000万ドル(1ドル=約148円)に達し、世界全体の約10分の1を占めると予測している。また、26年には、中国のAI市場の規模が264億4000万ドルとなり、21~26年の複合年間成長率(CAGR)が20%を超えると見ている。

データ駆動型イノベーション発展は4段階に分けて展開される

 データは、実際にはコード化情報や半コード化情報、非コード化情報といった情報の集合体だ。イノベーション要素としてのデータは、情報革命の重要な成果であり原動力でもある。それ自身の価値だけでなく、他の生産要素を活性化させる面でも、明らかな限界効用逓増効果があるデジタル経済運営の重要な要素だ。データ駆動型イノベーション発展は、以下の4つの段階に展開される。

 その一、データマイニングの構築。断片化、異質化した小規模のデータは通常、利用価値に欠け、それを収集・伝送するシステムがなく、処理する人もあまりいない。つまり、データというのは、集積され、同質化され、大規模にならなければ、収集、伝送、処理する価値はなく、それがデータマイニングをする理由となる。データマイニングでは、種類が多く、細分化されたすべての分野のデータを少しずつ鉱山に蓄積することができる。例えば、阿里巴巴(アリババ)のECプラットホームが蓄積した電子商取引(EC)と消費者のデータは一定の規模に達すると、的確にマーケティングできるデータ資源となる。また、SNSの微信(WeChat)が蓄積したユーザーデータは一定の規模に達すると、特定層のプロファイルデータとなる。データマイニングの構築では、データ収集、伝送、処理、使用のプライバシー倫理基準をできるだけ早く打ち出し、データのライフサイクルの全過程を法制度に組み入れなければならない。次に、データのエンコード細則をできるだけ早く打ち出し、基礎データの質を高め、データクレンジングコストを低減しなければならない。さらに、国家データ・ミドルプラットフォームを構築し、「データブレイン」を作り出し、データマイニングの形成を加速させなければならない。

 その二、データリソースの共有。データをリソースとするためには、データの有用性、データのソフトウェア・ハードウェア、およびネットワークサポートシステム、効果的な供給者と消費者が必要だ。発掘する価値があり、関係部門がそのデータを発掘してはじめて、データリソースとなる。データの効果を最大化するためには、関係部門の調整の下、政府データと企業データ、生産データと消費データ、国内データとグローバルデータの間にあるブロックや障害を解消し、デジタル経済の参加者が、容易かつ安価にデータリソースを共有できるようにしなければならない。

 その三、データ資産の発掘。データが資産となるためには、価値の属性(価値がある)、権益の属性(所有権の帰属先がある)、取引の属性(売買可能)という3つの条件を満たさなければならない。データ資産を発掘するためには、まず、計算能力センターなどのインフラ整備を強化し、計算すべきデータはすべて計算できるようにしなければならない。次に、データ資産評価・権利確認メカニズムを構築し、データの所有権を明確にしなければならない。そして、データ取引所を設置し、データ資産が活発に動く生産要素となるようにしなければならない。

 その四、データ資本の抽出。データが資本となるためには、付加価値性、投・融資性、所有権の帰属性という3つの条件を満たさなければならない。データの資本化は、データ要素の市場化を実現し、それが経済成長の原動力となるようにするのがその本質だ。データ資本の抽出を加速させるために、国の関係部門は「データ貸付・融資管理規則」や「データ資産証券化実施規則」をできるだけ早く制定し、中国が少しでも早くデータ大国からデータ資本大国に発展し、データ資本が新たなエンジン的役割を果たすようにしなければならない。


※本稿は、科技日報「挖掘数据潜能 驱动创新发展」(2023年7月10日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。