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【23-61】中国ディスプレイ産業の20年:弱点克服し産業基盤が形成

劉 艷(科技日報記者) 2023年11月07日

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2023世界ディスプレイ産業大会の新型ディスプレイイノベーション成果展で展示された中国製の車載用3つ折りディスプレイ。(撮影:唐文豪)

 中国四川省成都市で開かれた「2023世界ディスプレイ産業大会」で、中国科学院院士(アカデミー会員)の欧陽鍾燦氏は、中国のディスプレイ産業の発展に言及し、「20年近くの発展を経て、世界の注目を集めるほどの成果を挙げ、生産量の少なさというボトルネックを完全に打破し、電子情報産業の得意分野へと成長している。テクノロジー・ロードマップという観点から見ると、中国は既にディスプレイ産業の技術の種類が最も充実し、技術革新が最も活発で、川下における応用が最も豊富な国の一つとなっている。イノベーション力という観点から見ると、中国企業は超薄型、フレキシブル、透明ディスプレイ、4K/8K高解像度ディスプレイなどの分野で大きな進展を遂げており、複数の世界初となる製品を打ち出し、ディスプレイパネルの特許出願数は世界全体の35%を占め、世界一となっている」と説明した。

 中国電子情報産業発展研究院の張立院長は、ディスプレイ産業の発展を総括した際、「中国は既に巨大な産業基盤を築き、中央政府から地方政府、マクロ政策から細分化された分野の政策に至るまで、ディスプレイ産業が成長できる環境づくりに取り組んでいる。産業に投じられた資金は計1兆4千億元(1元=約21円)を超えている」と紹介。「中国のディスプレイ産業が質の高い発展において直面している多くの課題は軽視できない。このことも『中国の新型ディスプレイ産業の質の高い発展指数(2023)』(以下『指数』)が発表された目的だ」と率直に語った。

「指数」によると、マクロレベルでは、中国のディスプレイ産業の経営主体は相対的に分散しており、集中度の強化が待たれる。イノベーションレベルでは、イノベーション資源が十分に集積しておらず、技術による牽引力の向上が急務となっている。市場レベルでは、従来的な応用の成長力が乏しく、新興市場の成長が思うように進んでいない。エコシステムレベルでは、産業連携能力が依然として弱く、下支えするプラットフォームのサービスが未熟だ。

 中国工業・情報化部(省)の張雲副部長は「新型ディスプレイ産業の基礎的、戦略的、先導的特徴が日増しに際立つようになっている。産業主管当局としての当部は今後、経済・社会の発展のニーズにしっかりと合わせ、産業の供給体系を整備し、産業がバリューチェーンにおいて、ミドル・ハイエンドへ飛躍するよう推進するほか、企業のイノベーション主体としての地位を強化し、産業のウィークポイントとボトルネックに焦点を合わせ、基幹・コア技術の研究開発を強化する。そして、各種資源を集積し、川上の関連産業の発展水準を高めるよう取り組む」と語った。


※本稿は、科技日報「中国显示产业20年:摆脱"少屏"之痛 产业基础形成」(2023年9月25日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。