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【23-65】「標準化」が中国のイノベーションの世界進出を後押し

張 曄(科技日報記者) 2023年11月20日

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中国は近年、超高電圧送電技術において標準のグローバル化を進め、新たな高みに達している。画像は福建省の超高電圧交流送配電線での敷設作業。(撮影/林善伝)

 10月14日は世界標準の日だ。標準は科学技術イノベーションの推進や技術的障壁の除去、国際協力の強化などの面で重要な役割を果たしてきた。世界で採用される中国の標準が増え、世界の標準化の舞台における中国の立場は「参加者」から「貢献者」「推進者」「牽引者」へと変化している。

 小さな電子レンジから、大きな高速列車、超高電圧送電網に至るまで、多くの中国の標準が海外進出段階へと進み、世界で評価されるようになっている。標準化が中国製品の海外進出に翼を提供していると言えるほどだ。

 2022年末時点で、中国が主導して制定したISO/IEC国際標準は1337項目に上り、国際標準機関に登録された専門家の数は1万2000人を超え、中国は国際標準への貢献が大きい国の一つとなっている。

 今年10月14日は54回目の世界標準の日だった。この日は国際電気標準会議(IEC)、国際標準化機構(ISO)、国際電気通信連合(ITU)の3機関が制定した記念日で、世界の経済活動における標準化の重要性に対する認識を高めることを目的としている。

 標準化は、科学研究活動にとって、どんな意義があるのだろうか? 国際標準の制定に積極的に参加することで、中国の経済・社会の発展にどんなポジティブな影響をもたらすのだろうか? 標準化を推進する過程で、どんな課題に直面するのだろうか? これらについて専門家の話を聞いた。

科学技術の成果を実用化する懸け橋

 標準は、世界の経済・貿易協力と技術交流における共通言語の役割を果たし、世界の貿易や投資の80%に影響を与え、科学技術イノベーションの推進や技術的障壁の打破、国際協力の強化などの面で重要な役割を果たしている。

 標準は、科学技術イノベーションのキャリアーであり、科学技術の成果を実用化する懸け橋でもある。超高電圧を例に挙げると、これは世界最先端の送電技術であり、遠距離や大容量、低消耗、敷地面積が小さいという総合的優位性がある。中国は近年、超高電圧送電技術の分野において、科学的研究と工学的実践に注力し、同技術で世界をリードするととともに、標準のグローバル化事業が新たな高みに到達するよう推進してきた。

 国家電網は2005年、超高電圧送電の研究開発を始め、重要プロジェクトのイノベーションを通じて、技術の標準化と標準のグローバル化を同時進行させ、超高電圧技術イノベーションを国際標準へと転換することに成功した。

 中国は2009年、IECの高電圧直流送電技術委員会(TC115)の発足を推進した。TC115というプラットフォームを通じ、世界に向けて中国の超高電圧の研究開発、建設、運営・メンテナンスの経験が共有された。こうした国際標準はブラジル・ベロモンテ水力発電所±800kV超高圧直流送電プロジェクトに応用され、同技術が世界的に受け入れられることを証明した。

 IEC国際標準促進センター(南京)の主任を務めるIEC市場戦略局の范建斌博士は「成功したイノベーション型企業は往々にして技術革新の成果と標準を密接に結び合わせ、一体化した計画を制定している。そして、標準の普遍性、規範性、統一性を通じて、技術革新成果の普及、応用を推進している」と語った。

「まず技術、次に標準」というスタイルは発展ニーズに対応できず

 新技術や新業態、新スタイルが次々と誕生し、中国企業の技術標準と科学技術イノベーション、市場開拓の連動効果がますます際立っている。2010年、中国が第74回IEC総会で提出したスマート家電モバイルプラットフォーム性能評価方法国際標準案は、消費市場を効果的に育成している。2008年から12年までの5年間、中国のスマートサービロボットの国内販売台数は12倍になった。

 5G応用や新世代情報技術、スマートエネルギー、ロボット、インダストリアルインターネットといった戦略的新興産業が急発展するのに伴い、標準は、コネクティビティの保証、科学技術イノベーション、情報の融合推進、相互運用性実現などの面でますます重要な役割を果たすようになっている。この背景の下、標準化機関はガバナンス体制変革を積極的に推進し、戦略的新興産業にターゲットを絞り、事業に取り組んでいる。

 IECセンター国際標準部の胡浩主任は「戦略的新興産業は既に国際標準化の主な競争の場となっており、世界の国際標準をめぐる競争はますます熾烈になっている」との見方を示した。新興技術が急速に発展する今、「まず技術、次に標準」という従来のスタイルでは時代の発展に適応できなくなっており、標準化と技術研究開発を密接に結び合わせて協同で発展させ、国際交流・協力を強化し、制度型開放を推進し続け、世界的に共通の標準を制定し、技術を共有しなければならなくなっている。

国際標準化事業を強化する3つの措置

 ISO、IECの常任理事国としての中国は、国際標準化戦略制定とガバナンス改革計画制定に深く参加しており、国際標準体制構築のために中国発のソリューションを積極的に提供している。現在、中国が担当するISOとIECの技術機構事務局の業務は89件、ISOとIECの技術機構の会長・副会長業務は88件に達している。また、ECや電力ロボット、新エネルギーの系統接続、ブレイン・マシン・インタフェースといった分野の国際標準機関、技術機関を立ち上げ、グラフェンやドローン、量子技術、デジタルツイン、スマートシティ、アディティブ・マニュファクチャリングといった新技術の分野でも国際標準を提案している。

 范氏は「中国は先進国と比べ、国際標準化の分野で依然として大きな向上の余地がある。まず、国際標準機関への参加度をさらに高められる。現時点で、国際標準機関のトップのポストや標準化技術機関の責任者を務めている中国人の数は依然として少なく、国際標準化戦略の方向性を定める能力を高める必要がある。次に、国際標準制定能力もさらに増強する必要がある。ISOやIECが制定している3万項目以上の国際標準のうち、中国が筆頭となって制定された国際標準は1300項目余りしかなく、中国の産業規模や地位と見合っていない。さらに、国際標準化人材が不足している。企業の標準化に対する意識は全体的に低く、標準化人材の『使用を重視し、育成が重視されていない』という問題が際立っている。そして、体系的な国際標準化人材育成体制が構築されていない」と指摘した。

 さらに「2021年12月に南京で発足したIECセンターは、中国企業に対し、国際標準化政策研究やプロジェクトインキュベーション、標準研究開発、人材育成、協力・交流など、全方位的なサービスを提供している。当センターは、ゼロカーボン電力系統やペロブスカイト、未来型スマートセンサーといった新興技術分野において標準化戦略的研究を積極的に展開し、複数のIEC戦略白書の発表を主導した。新型電力系統や動力電池、仮想発電所、エネルギー貯蔵といった分野において10項目以上の国際標準化の成果を上げ、中国の標準化と科学技術イノベーションが相互作用する、発展にとって重要な実践経験を提供している」と説明した。

 中国は製造業大国で、世界の科学技術イノベーション発展を推進する重要な力となっている。新たな情勢や課題に対応するために、范氏は「中国は以下の3つの措置を通して、国際標準制定能力を高め、中国のテクノロジー産業の質の高い発展を後押しするべきだ」と指摘した。その3つを下に紹介する。

(1)国際標準機関の戦略制定と機関のガバナンス改革に深く参加し、人工知能(AI)やクラウドコンピューティング、新型電力系統、仮想発電所、エネルギー貯蔵、ペロブスカイトといった新興技術分野において、標準化戦略的研究を踏み込んで推進し、重要なルール作りの過程で、中国の力を積極的に貢献する。

(2)国際標準育成能力を高める。重要プロジェクトのイノベーションとハイテクの分野において、キーテクノロジーの国際標準化研究を強化し、国際標準機関においてさらに多くの技術委員会を立ち上げ、さらに多くの国際標準を形成するよう取り組む。

(3)国際標準化人材の育成・ストックを強化する。国際標準活動人材バンクを構築し、国際標準化人材激励メカニズムを整備し、より多くの専門家が国際標準化活動に参加するよう働きかける。


※本稿は、科技日報「标准化助中国创新走向世界」(2023年10月13日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

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