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【24-05】江南大学、複数の機能を備えた「超分子エラスチン」を作成

李詔宇(科技日報実習記者) 于 楽、孫嘉隆(科技日報通信員) 2024年01月16日

 中国の江南大学生物工程学院の呉俊俊教授のチームが、中国工程院院士(アカデミー会員)である同大学の陳堅教授チームの周景文教授タスクチームと共同で、合成生物学やバイオコンピューティング・バイオインフォマティクス、超分子化学、ナノテクノロジーなどを結び付けた学際的研究により、細胞の修復を非常に強く促すタンパク質「超分子エラスチン」の作成に初めて成功した。「超分子エラスチン」の細胞の増殖や修復を促す作用は、現在商品化されている全ての組み換えタンパク質を上回っているという。関連研究成果はこのほど、国際学術誌「Advanced Materials」に掲載された。

 オボアルブミンペプチドは、生物体内の非常に重要な構成成分であり、生命維持に必要な各種活動において重要な役割を果たし、アンチエイジングや抗酸化、抗アレルギー、抗微生物、抗血栓、細胞の活性化促進といった栄養学的および生物学的機能を備えている。また、ナノ粒子自己集合やバイオロジカル検査、ドラッグデリバリー、組織化といった働きに参加し、応用の見通しが非常に幅広いため、科学研究界で注目されている。しかし、動物の組織から直接機能性タンパク質を抽出することは、成分が複雑で単体を分離するのが難しく、抽出工程が複雑でコストが高く、生産ロットによって質が安定せず、タンパク質が溶解しにくいなどの課題があり、ウイルスや病原体が付着しているといった安全面のリスクも存在する。そのため、環境に配慮した効率的な微生物細胞工場を構築し、動物由来タンパク質の代わりに、特定の機能を備えた組み換えタンパク質をカスタマイズすることが必要となっている。

 現時点で、中国の組み換えタンパク質市場は巨大であるが、多くの生理活性タンパク質(コラーゲンなど)は、高い生理活性を安定した保つために超分子構造を形成する必要がある。呉氏によると、安定した超分子構造を持つ機能性タンパク質をいかに獲得するかが、業界における難題であったという。

 呉氏は「われわれの研究により、超分子の自己集合メカニズムとエラスチンを結合させて作り出した超分子エラスチンが、静置しておくだけで安定した超らせん構造を得ることがわかった。この種の超らせん構造は、超分子が自己集合することで作り出され、タンパク質の活性を変化させることなく、超分子タンパク質構造の安定性や活性を高める」と説明した。

 今回の研究で作り出された「超分子エラスチン」は、超らせん構造の活性部位が互いに破壊し合うという弊害を避け、活性部位の機能を最大限発揮させることができる。一般的な遺伝子組み換えで作成されたエラスチンは、低温下でしか可溶性を保つことができず、室温下で静置すると固まって沈殿してしまう。一方、「超分子エラスチン」は、乳酸菌などの遺伝子組み換え技術を採用することで、発現量が極めて高くなり、室温下でも高い安定性を示す。

 呉氏は「これは現在、世界で唯一の、高分子ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンなど、重要な分子特性を備えた新型機能性タンパク質だ。分子量が小さくて吸収されやすく、活性部位が露出した超分子構造、非常に高い保湿特性、水中での高い粘着特性などを備え、細胞の接着や増殖、分化、損傷修復の促進などの作用があり、細胞修復能力が非常に高い」と述べた。

 研究チームが開発した中国製の「超分子エラスチン」は、独自な細胞修復特性を備えており、将来的にはスキンケア商品への応用が期待されている。実現すれば分子量が小さいため、肌に直接吸収でき、創傷被覆材に応用することで傷口の治癒が早まる。また、純粋なタンパク質としての「超分子エラスチン」は粘着性が極めて高く、バイオ止血剤として使うと、剥がす必要がなく、栄養として直接吸収される。

 陳氏は「この『超分子エラスチン』は今後、独自の特性により、スキンケア・美容、栄養・ヘルスケア、細胞培養基材、バイオ止血、土壤・肥料などの分野で変革を牽引する可能性がある」と期待感を示した。


※本稿は、科技日報「超分子弹性蛋白实现多效合一」(2023年12月7日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

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