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【24-17】化学反応で焼き芋がふかし芋より甘くなる

王文潔(科普時報実習記者) 2024年02月27日

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(画像提供:視覚中国)

 寒い時期に「食いしん坊」の心を満たしてくれる食べ物と言えば、街角で甘い香りを漂わせている焼き芋を思い浮かべる人も多いだろう。

 しかし、焼き芋の「きょうだい」とも言えるふかし芋は、焼き芋ほど人気がないようで、多くの人が焼き芋ほどおいしくないと感じているようだ。中国では最近、「焼き芋はどうしてふかし芋よりおいしいのか」といった話題がたびたび検索のトレンドに登場している。では、焼き芋がふかし芋より香ばしくて甘いのには、一体どんな秘密があるのだろうか。

 中国栄養学会の体重管理コーチで登録栄養士の王艶麗さんは「サツマイモの糖度は水溶性糖類の含有量と直接関係がある。研究によると、焼くことでサツマイモの水溶性糖類の含有率が9.12%から36.65%に上昇する。これが焼き芋がふかし芋よりも甘くなる主な原因だ」と語った。

 焼き芋がふかし芋より香ばしい点について王さんは「これはサツマイモを焼く過程で大量のフランとテルペノイドが作られるからだ。フランの生成には、メイラード反応が欠かせない」と説明した。

 メイラード反応とは褐変反応とも呼ばれ、食物に含まれる還元糖(炭水化物)とアミノ酸またはタンパク質による、常温または加熱時に生じる一連の複雑な化学反応を指す。褐色の高分子物質メラノイジンを生み出す反応の過程で、レダクトンやアルデヒド、複素環式化合物など、さまざまな香りの反応中間体が生成され、こうした物質が食欲をそそる香りを食物に添えるようになる。

 このほか、焼き芋のおいしさはカラメル反応とも切り離せない。王さんは「カラメル反応は一種の化学反応であり、通常は高温(160~210℃)下で起こる。この反応によりさまざまな化合物が生成され、これらの物質が焼き芋をよりおいしくする。暮らしの中でよく見かけるキャンディや焼き菓子などは、加工過程でカラメル反応が起きている」と述べた。

 では、サツマイモを焼くのとふかすのでは、どちらがより健康的な食べ方なのだろうか。

 王さんは「栄養学的に言えば、関連研究により、ふかし芋にはカロテンが失われにくいという利点があることがわかっている。血糖値の上昇度合いを示すグリセミック指数(GI値)を見ると、ふかし芋は44と低いのに対し、焼き芋は94と高い。GI値が高いということは、糖に分解されるスピードが速いということ、あるいは体内の血糖値が短時間で急上昇するということを意味する。また、タンパク質と脂質の含有量の面では、両者には大きな違いはない」と回答した。


※本稿は、科技日報「化学反应让烤红薯甜过蒸红薯」(2024年1月4日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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