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【24-22】上海データ取引所が取引規則体系を発表

魏 路、王 春(科技日報記者) 2024年03月08日

 データを握る者が主導権を握る。「2023年中国データ取引市場研究分析報告」の試算によると、22年における中国データ取引業界の市場規模は876億8000万元(1元=約21円)で、中国のデータ業界は市場規模が25年に2046億元、30年に5155億9000万元に達する見込みとなっている。

 データ業界の勢いある発展だけでなく、その背後にある課題も見なければならない。たとえば現在、市場のデータ取引サービス体系の構築はまだ不十分で、デジタルビジネスはデータ取引において、一連の課題に直面している。市場取引の活発度はさらなる向上が待たれ、経営主体が取引を「する勇気がない、する能力がない、する意欲がない」という問題も引き続き存在している......。こうした問題を解決するために、上海データ取引所(以下、上海取引所)はデータ流通取引の推進とデータ資産のイノベーション応用という2つの主要課題について、このほど世界初となるデータ取引所の取引規則体系である「上海データ取引所取引規則体系(2024年)」を発表した。同規則体系の狙いは、データ取引制度を整備し、データが商品・資産としての流通価値を生み出すよう推進し、データ要素の乗数効果を発揮させ、データ取引のイノベーション発展を推進することにある。

データ取引制度を整備

 22年12月に発表された「データ基礎制度を構築し、データ要素の役割をよりよく発揮することに関する中共中央・国務院の意見」は、データの知的財産権、流通取引、収益分配、セキュリティ・ガバナンスの4つの面から、中国のデータ基礎制度体系をほぼ構築し、データ流通取引における大半の問題を解決した。今回発表された「上海データ取引所取引規則体系(2024年)」では、「規則-規範-誘導」の3つのレベルからなる取引制度メカニズムを構築した。

 同規則体系は「上海データ取引所データ取引管理規則」を全体的な指導文書として、「主体管理-取引管理-運営管理-紛争解決」の4セクションにまとめ、データ取引の市場発展や管理ニーズに対応した。9つの規範に細分化し、特色あるデータ取引サービスの項目を打ち出すとともに、取引実践を指導するための6項目のガイドラインを導入した。これにより、グランドデザインから操作レベルまでが規範化、体系化された実践的な取引制度を構築する。

 上海市法学会の施偉東党組副書記・専任副会長は「データ要素の基礎制度の構築は全く新しい分野であり、実践の中で絶えずイノベーションと模索を行う必要がある。今後はガイドラインが規範よりも多くなり、規範もさらに発展する。データ取引の境界がどこにあるかに対応して、制度のサービス保障もそれに足並みを揃えるだろう」と述べた。コンプライアンスのガイドラインの面では、上海取引所は「上海データ取引所データ取引セキュリティ・コンプライアンスガイドライン」と「上海データ取引所データ取引コンプライアンス注意事項リスト」を発表し、データ取引のコンプライアンスの取り扱い方法を明確にした。紛争解決メカニズムの模索の面では、北京大学法学院と共同で「データ取引セーフハーバー(安全港)白書」を発表。「コンプライアンス技術」と「法律規則」が結びつき、「主体的投資」と「予想の免責」が結びついたセーフハーバー・規則を打ち出し、データ取引場所という監督管理環境を通じて、経営主体の革新的かつ探査的で大規模なデータ取引シーンにおける法的リスクを引き下げるためのソリューションを提供している。

データ流通環境を最適化

 データ取引のイノベーション発展を推進するには、データ取引制度を整備するだけでは遥かに不十分であり、データ流通環境の最適化も同様に重要となる。

 信頼性はデータ要素の流通使用の前提条件であり、中心的な要求でもある。上海取引所は中国工程院の鄔江興院士(アカデミー会員)率いる復旦大学ビッグデータ研究院と共同で、データ取引の内的信頼性デリバリーフレームワークのグランドデザインを完成させている。このフレームワークをベースに、上海取引所のシステムはデータ取引チェーン、データのインターネットといった新型インフラを体系的に展開し、5つの中核業務システムを構築し、データ取引チェーンとのマッチングを実現するとともに、信頼できるデータ流通のためにシステムによるサポートを提供している。このほか、同取引所はデータ取引チェーン一体型マシンをハードウェア面の支えとして独自開発した。データ取引チェーンの地域ノードを構築する過程で、データ取引チェーン一体型マシンがその重要インフラになるとみられている。

 鄔氏は「データ取引はただ利用できるというだけでなく、利用しやすいもの、利用して役に立つものでなければならない。そのためには実質的な技術的手段によってデータ取引の健全で持続可能な発展を保証する必要がある。私たちはデータが流動し始め、データがより安全で効率的にさまざまな業界に寄与するにはどうすればよいかという点に注目することになる」と指摘した。

 データの要素化は進化し続けるプロセスであり、データ資源からデータ製品へ、さらにはデータ資産へという3つの段階をたどる。データ資産のコストの累積の難しさ、償却期間の確認の難しさ、データ資産の市場価値の試算の難しさといったデータ資産の計上・評価における難しい問題に対し、上海取引所は戦略的デジタルビジネスチームと共同で、「データ資産計上および評価の実践・操作ガイドライン」を発表し、企業の計上に関する操作の課題10項目、収益試算3種類、イノベーション応用8項目に対するガイドラインを提供している。同ガイドラインは、データ資産を流通取引できるようトークン化し、データ資産価値の創出、価値のマーキング、価値の交換、価値の分配を行うことで、データ資産を将来、株式や債券と同じように取引市場で流通・取引できるようにすることが必要だと指摘している。データ資産のトークン化がもたらすトークンエコノミーは、これから中国の経済成長の新たな原動力になるだろう。


※本稿は、科技日報「对数据流通交易既细化规范又强化指引」(2023年12月21日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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