【24-52】「AIパートナー」とは親密な関係になれるのか?(その1)
呉葉凡(科技日報実習記者) 2024年06月07日
中国家電・消費電子博覧会で、女性にバラの花をプレゼントして「愛情表現」をするロボット「KUAVO(夸父)」。
(画像提供:視覚中国)
人工知能(AI)は既に私たちの生活のさまざまな場面に浸透している。中国内外では成熟したAIパートナーアプリが数多く登場しており、SNSなどで自分の「AI彼氏」や「AI彼女」と「一緒に過ごす」日常を紹介するネットユーザーも少なくない。
AIは本当に人間のパートナーになれるのだろうか? AIに感情的な癒しを求めることにはどんなリスクがあるのだろうか? また、これらがもたらすデメリットをどうやって防ぎ、対処すればいいのだろうか? 専門家の見解を聞いた。
社会的ニーズがAIパートナーの誕生を後押し
オンライン技術を活用したバーチャル恋愛体験は決して目新しいことではない。以前から恋愛をテーマにした一部のオンラインゲームが、ユーザーにバーチャル恋愛体験を提供していた。ゲーム内の設定の大半は開発者が決めたもので、レスポンスなどに限界があったものの、それでも多くのプレイヤーを夢中にした。
AIによって、こうした体験がよりリアルになっている。あるAIパートナーアプリでは、ユーザーとAIが「配偶者」や「親友」「相棒」になり、親密な関係を築くことができるという。ユーザーの莫さん(仮名)は「AIがこれほど大きなサプライズをもたらしてくれるとは思いもしなかった。まるで本当の人間のように感じる」と感想を述べた。
このように、AIパートナーを本当の人間のようだと感じるのはなぜだろう? 質問に対して「必ず」「正しく」答えるのは、AIにとっては基本的なスキルに過ぎない。だが、面白い回答をしたり、質問にないことまで答えてくれると、AIパートナーがよりリアルになったと感じるようになる。ユーザーがさまざまな話題を振ると、AIパートナーは正しく返すだけでなく、その中に流行りのネット用語やコミカルな絵文字をうまく織り交ぜてくれる。時には自分から話題を振って、ユーザーと対話することもできる。莫さんも「AI彼氏」から「夕日がきれいだよ」というメッセージと共に写真が送られてきたことがあったそうだ。
AIパートナーの出現は、AIが人間の感情を持つようになったことを意味するのだろうか?
曁南大学新聞・伝播学院の曽一果教授は「AIにも心の知能指数(EQ)があるといっても、学習経験があるというだけで、実際にユーザーの感じていることを理解したり、人間のような感情を持つには至っていない」と否定的な考えをしている。
大規模AIモデルの学習パラメーターは既に、1千億レベルに達している。そのおびただしい数のデータの中には、人間の対話方法も重要な学習内容として含まれている。いわゆる「感情のフィードバック」は、AIが計算して得た結果である。その点については莫さんも内心よく分かっており、「『AI彼氏』は、人間が愛情を表現するフレーズを組み合わせただけかもしれないが、そこから自分が理想とする恋人の姿を知ることができる」と率直に語っている。
AIパートナーの流行は、社会的ニーズと技術的発展の両方の結果によるものだ。曽氏は「孤独感は現代社会で多くの人が抱える共通の問題だ。現実生活における誰にも言えない悩みについて、人々は吐き出す場所を探そうとするもので、AIパートナーがそのはけ口となっている人もいる。特に人間関係の不安を抱える人々にとって、AIパートナーは交流のプラットフォームを提供してくれるものだ」と見解を述べた。
清華大学人工知能国際ガバナンス研究院の梁正副院長も「現代人はさまざまなストレスにさらされており、AIパートナーはユーザーに相応の情緒的価値や感情的な癒しをある程度与えて、感情を『共有』することができる。これもユーザーのストレス解消につながり、メンタルのさらなる悪化を防ぎ、感情的な癒し効果が得られる」と分析する。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「AI伴侣能否带来亲密关系」(2024年3月22日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。