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【24-59】ナトリウムイオン電池のエネルギー貯蔵への大規模応用に期待

劉 昊、葉 青(科技日報記者) 黄 昉、陳欽栄(科技日報通信員) 2024年06月28日

 中国広西チワン族自治区南寧市に建設された中国初の大容量ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵発電所である伏林ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵発電所が、このほど稼働した。これは、同電池の大規模エネルギー貯蔵技術の開発が重要なブレイクスルーを遂げたことを示している。

 南方電網広西電網公司南寧電力供給局の羅伝勝シニアエンジニアは「ナトリウムイオンエネルギー貯蔵発電所は、電力のピーク調整に参加でき、新エネルギー電力の柔軟な貯蔵と放出を実現し、クリーン電力を数多くの世帯に供給することができる」と説明した。

 中国の国家重点研究開発計画「100メガワット時(MWh)級ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵技術事業」プロジェクトの第1期である伏林ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵発電所は発電設備容量が10MWhとなっている。プロジェクト全体が完成すると、設備容量は100MWhに達し、発電されるクリーン電力量は年間7300万ワットに達する。これにより、二酸化炭素排出量を年間5万トン削減し、3万5000世帯の電力需要を満たすことができる。では、ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵には、どんな優位性と市場の見通しがあるのだろうか?

リチウムイオン電池エネルギー貯蔵と相互補完を形成

 中国は現在、新型エネルギー貯蔵の多様化した質の高い発展を加速させている。産業の規模拡大と同時に新技術が続々と誕生し、テクノロジー・ロードマップも百花繚乱の様相を呈している。中国で既に完成している新型エネルギー貯蔵プロジェクトのうち、リチウムイオン電池をはじめとする電気化学エネルギー貯蔵が全体の95%以上を占め、絶対的地位を築いている。

 だが、リチウムイオン電池の原材料は輸入に依存し、資源が不足しており、中国の新型エネルギー貯蔵産業の持続的かつ急速な発展を支えるのが難しい。そのため、リチウム電池エネルギー貯蔵に取って代わる、またはそれと相互補完できるエネルギー貯蔵技術が切実に求められている。

 中国の全国電力エネルギー貯蔵標準化技術委員会の副秘書長を務める中国南方電網の戦略技術専門家、陳満氏によると、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池は電気化学メカニズムが似ている。しかし、ナトリウムイオン電池の原材料は、リチウムイオン電池と比べて埋蔵量が豊富で、抽出が容易で、コストが低く、低温環境下でも高い性能を示すなど、大規模エネルギー貯蔵における優位性が際立っている。

重要技術のブレイクスルーを達成

 中国では、ナトリウムイオン電池製品の研究開発・製造、標準制定、市場での応用・拡大の取り組みが全面的に進められているが、ナトリウムイオン電池を大容量エネルギー貯蔵発電所に応用する事例は、世界でも前例がなかった。

 南方電網エネルギー貯蔵の技術専門家である李勇琦氏は「ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の反応原理は似ているものの、前者の充放電の特性を踏まえてエネルギー貯蔵システムを開発するには、数多くの新たな課題を解決する必要がある」と指摘した。

 プロジェクトの責任者を務める南方電網広西電網公司革新管理部の高立克副総経理は「われわれは高性能セルの大規模製造、システムインテグレーション、安全対策などのキーテクノロジーの難関を攻略し、独自の知的財産権を持つナトリウムイオン電池の製造およびシステムインテグレーション技術を開発した」と説明した。主な技術提供者である南方電網エネルギー貯蔵のエネルギー貯蔵科学研究院は、ナトリウムイオン電池の充放電特性を踏まえたエネルギー貯蔵システムを開発した。

 高性能セルは、ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵システムの基礎ユニットだ。プロジェクトチームは、1年半にわたる研究を経て、世界で初めて、寿命が長く、動作温度域が広く、安全性の高い、210アンペア時(Ah)ナトリウムイオンエネルギー貯蔵電池を開発した。中国科学院物理研究所の胡勇勝研究員は「このナトリウムイオン電池は、動作温度域が広く、充電が速く、高倍率特性というメリットがあり、12分間で90%の充電が可能だ」と説明した。

新エネルギー発電の高い割合での利用を促進

 キーテクノロジーのブレイクスルーに伴い、ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵が最も低コストの電気化学エネルギー貯蔵方法になる可能性がある。その大規模応用により、新型エネルギー貯蔵発電所の集中化、大規模化発展を加速させ、新エネルギー発電の高い割合での利用を促進することができる。

 陳氏は「ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵が大規模発展の段階に突入すれば、製造コストは20~30%低減する可能性がある。電池の構造と製造法を十分改善し、材料の利用率を高め、サイクル寿命を伸ばすことを前提に、発電コストを1キロワット時(kWh)当たり0.2元(1元=約22円)まで下げられる可能性がある。これは新型エネルギー貯蔵の応用を推進する重要な技術的方向性だ」と説明した。

 高氏は「今回稼働したエネルギー貯蔵発電所は、ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵システムを使用して、モジュール化した組み合わせを柔軟に拡張することができる。それは、積木で家を作るようなもので、積木が多いほど規模が大きくなる。モジュール化した組み合わせの柔軟な拡張を通じて、発電所は100MWh級規模に達することができる」と述べた。

 そして「ナトリウムイオン電池は今後、エネルギー密度やサイクル寿命などの面でブレイクスルーを継続し、1kWh当たりの発電コストの持続的な低下を実現する。発電所の稼働データを蓄積することで、100MWh級のナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵システムインテグレーション技術および応用モデルプロジェクトにおいて、システムインテグレーション技術が持続的に最適化され、エネルギー貯蔵システムのコストがさらに低減する可能性がある。このことは、ナトリウムイオン電池エネルギー貯蔵の大規模応用にプラスとなるだろう」と見解を語った。


※本稿は、科技日報「钠离子电池储能规模化应用未来可期」(2024年5月28日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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