トップ >科学技術トピック> 科学研究のスイッチを入れ、成果の受け皿を作る

科学研究のスイッチを入れ、成果の受け皿を作る

2019年4月24日 華凌(科技日報記者)

 近年、中国の各大学や科学研究機関は経済のモデル転換と高度化、社会民生の需要をめぐる科学技術研究成果の実用化を加速させている。しかし、実際の取り組みにおいて、成果の実用化の難しさや実用化率の低さなどの問題が浮かび上がるようになっている。統計によると、中国の科学技術研究成果の実用化率は30%未満にとどまっている。一方、先進国の実用化率は60%から70%に達している。

img

視覚中国より

 北京市はこのほど、2019年度財政予算を公開した。その中で北京市科学技術委員会は「2019年北京市ハイテク成果実用化統一調整・サービスプラットホームの建設」を重点支出に盛り込み、特定プロジェクト資金として7,000万元(1元は約16.68円)を計上している。同資金を通して、北京の大学や研究所のハイテク成果実用化統一・調整サービスプラットホームの建設、移転・実用化機関の設置をサポートする計画だ。

特定プロジェクト資金を計上し実用化の新たな道を模索

 昨年、北京市科学技術委員会は、北京の大学や研究所、市場の主体などに赴き一歩踏み込んだ調査研究を行い、北京各区の主管者と協力して、成果の実用化の難しさや実用化率の低さといった問題点を一つ一つ整理し、解決策を模索した。

 北京市科学技術委員会の副巡視員・劉暉氏は今回の取材に対して、「この度の調査研究によって、北京市の大学や研究所は、内部部門における科学技術研究成果の実用化能力が低く、実用化可能なハイクオリティの成果の供給も不足していること、さらに、パイロット生産による熟成部分の欠落、実用化業務が専門機関に十分に開放されておらず、現地の実用化をめぐるポテンシャルが十分に掘り起こされていないなどの問題が見られた」と説明する。

 ある大学の関係責任者は、「科学技術研究成果の実用化に向けて、マッチングをめぐる問題を解決しなければならない」と指摘する。現在、大学や研究機関は、市場や企業の技術的需要を十分には理解しておらず、製品を持っていても誰に提供すれば良いのか分からない状態だという。また、一方の市場や企業には技術的需要があるものの、どこから必要としている解決方法を探し出せばよいのかわからず、資金はあっても、どこに活用すれば良いのか分からない状態なのだという。

 北京市科学技術委員会・科技成果転化処の施輝陽副処長は、「北京市各区に溢れるイノベーションの受け皿とハイテク成果の実用化に対する需要は、北京の産業の再編、高度化が進むにつれ、日に日に高まっている。市場の各主体は、の大学や研究所の成果とマッチングし、実用化に向けたサービスを提供したいという意欲が非常に高い」との見方を示す。

 そのため、北京市科学技術委員会は、北京のハイテク成果実用化の統一調整・サービスプラットホームの建設を積極的に推進し、特定項目7,000万元を計上してそれをサポートし、組織的に成果の実用化を実施し、科学技術研究成果の実用化の新たな道の開拓を模索している。

成果の提供側と受け入れ側のマッチングを強化

 問題に合わせた解決策を講じるため、北京市科学技術委員会は、系統的な計画を制定し、統一を強化し、市級当局、各大学や研究所、各区、各種市場主体が力を十分に発揮できるよう取り組み、科技部(省)、教育部、中国科学院北京分院などの政府機関・委員会、市教育委員会、市知的財産権局、中関村管理委員会などの支持を取り付けるよう努力し、共同で成果の実用化を推進している。

 施副処長は、「我々はピンポイントで2つのことを抑えて、道筋をつける措置をとる。1つは大学や研究所に対して、科学技術研究成果の実用化のポテンシャルを発揮できるようサポートして、高水準の科学技術研究成果の供給源を強化する。もう1つは、受け入れ側の各区に対しては、成果の『受け皿』を大きく、深くすることができるようサポートする。こうしてボトルネックとなっている障害を取り除けるよう取り組み、キーポイントとなる科学技術研究成果の実用化へのルートを開通させている」と話す。

 業務を必要とする場所で実施できるよう、北京市科学技術委員会は、科学的に業務構造を構築し、具体的な業務プランを制定。大学の実用化構造をさらに整備し、市場化したメカニズムの構築を推進している。具体的には、大学や研究所が内部の技術移転機関の建設を強化するようサポートし、科学技術研究成果の評価・厳選、特許の配置、科学技術研究成果のパイロット生産による熟成・成果の受け入れ、社会実装専門サービス機関との業務提携などを強化し、さらに、北京で成果を実用化し、プロジェクトを実施できるよう取り組んでいる。

 さらには市場の主体を対象にした成果バンク、ニーズバンク、サービスバンクの構築にも力を入れている。現時点で、成果バンクに納められている科学技術研究成果は1,372件、ニーズバンクに納められている技術的ニーズは約300件に達し、募集、調査研究、面談、選別する機関は70を超えている。

産業発展と学科の優位性にスポット当てる

 施副処長によると、「現在、清華大学や北京大学、中国科学院微電子研究所など、約30の大学や研究所、サイエンスパーク、天合テクノロジー成果科技成果転化促進中心などの社会実装専門サービス機関などが、北京市ハイテク成果実用化統一調整・サービスプラットホームに続々と集まっている」という。

 ある統計によると、8割以上の大学や研究所が内部に技術移転機関を立ち上げた。また、まだ立ち上げていない大学や研究所も政策に基づいて、積極的にそれを計画し、その立ち上げを段階的に進めている。

 施副処長によると、「昨年、(北京の)亦荘経済技術開発区や順義区、大興区、延慶区などのエリアが、大学や研究所と積極的にマッチングを行い、産業発展と学科の優位性の両方にスポットが集まるようになっている。例えば、中科院空天信息研究院や北京大学、北京理工大学、首都医科大学、中国医学科学院薬物研究所など大学や研究所21校・機関と、成果実用化プラットホームを共同で立ち上げることで合意した」としている。

 ある統計によると、2018年、北京の企業210社が大学や研究所の10大最先端分野をカバーする科学技術研究成果合わせて1,127件を受け入れ、投資総額は108億7,000万元に、その売上高は278億4,000万元、納税額は18億9,000万元、純利益は54億5,000万元に達した。

 施副処長は、「北京市のハイテク成果実用化統一・調整サービスプラットホームの建設は、科学技術研究成果実用化の良いムードを作り出し、大学や研究所の関連業務に対する意識も少しずつ高まっている。各区も関連政策を段階的に整備しており、社会の主体も積極的に参加するようになり、北京市の最先端経済構造のモデル転換と高度化、全国にサービスを提供するテクノロジーイノベーションサービスセンターの建設が効果的に推進されている」とその成果を強調した。


※本稿は、科技日報「打開科研供給"開閉",砌好成果落地"池子"」(2019年4月11日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。