第153号
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中国が全世界に「責任あるAI」の発展を提唱

2019年6月21日 周 少丹(中国総合研究・さくらサイエンスセンターフェロー)

 国家次世代AI(人工知能)ガバナンス専業委員会は6月17日午前、中国の「次世代AIガバナンス原則――責任あるAIの発展」(《新一代人工智能治理原則――発展負責任的人工智能》)を発表し、AIガバナンスの枠組みと行動ガイドラインを示した。本発表では、次世代AIの健全な発展を促進し、発展とガバナンスの関係をより調和させ、AIの安全・信頼の制御可能性を確保し、経済、社会、生態の持続可能な発展を推進し、人類運命共同体を共同建設するため、AI発展の各方面の関係者は調和・友好、公平・公正、包括・共有、プライバシーの尊重、安全管理、責任の共同担当、開放・協力、速やかなガバナンスの8つの原則を守らなければならない、としている。

 中国のAIガバナンスの原則は、「責任あるAIの発展」というテーマを強調するが、これには2つの意味が含まれる。1つはAIの発展は人類の価値観と倫理・道徳に合致すべきで、人類共通の幸福の促進を目標とし、「人類」に責任を負うことで、もう1つはAI研究者、使用者、管理者などの関係者は、高度な社会的責任感と自制の意識を持ち、共にAIの健全な発展に責任を負うべき、というものである。

 中国のAIガバナンスの原則には、国際的な共通認識を強調すると同時に、独特な中国の発展理念を含む。プライバシーの尊重・保護と、向上し続けるAIシステムの説明可能性、透明性、信頼性、制御可能性などは、世界的に広く共通認識が形成されているAI発展の規範とされている。一方で、グリーン・エコロジー、業界・地域協調、包括的発展によるデジタルデバイドの解消、共有発展によるデータ・プラットフォームの独占の回避、開放と協力で中国内外の協調と相互交流を推進するといった内容は、中国5大発展理念を直接示している。特に中国は世界と対話及び協力を展開し、各国のAIガバナンスの原則と実践を尊重した上で、広い共通認識を持つ国際AIガバナンスの枠組み、標準規格の形成を推進するとしている。これは責任ある大国としての中国の態度と責任を十分に示している。

 中国のAIガバナンスの原則はさらに、政府ガバナンスと公共サービスの先見性と科学性を強調している。1つは原則における「速やかなガバナンス」に示されている。すなわちAI技術、製品、サービスなどの更新ペースが速いという発展の法則を尊重し、その中の新たな問題を速やかに発見し、生じうるリスクを研究・判断し、さらに新たな政策とメカニズムで積極的に対応する。もう1つは、原則の策定の全プロセスに現れている。原則の策定はネット上での意見募集、専門家による度重なる検討、各方面からの意見募集などを踏まえている。価値ある提案をした関係者は原則の策定の議論に直接加わった。つまり公表されたバージョンは、中国のAI事業者、管理者、一般人の広範な共通認識を凝縮しているものと言える。

 注:中国は2019年3月に国家次世代AIガバナンス専門委員会を設立した。同委員会の主な職責は下記の通り。AIガバナンスの政策、法律・法規、倫理マニュアルの研究を全面的に展開。国際的な関心事を基準に、データ独占、アルゴリズムによる差別、AIの濫用、高度な偽造、データへのウイルス埋め込み、プライバシーの保護、倫理・道徳、不平等なインテリジェントオペレーション、社会構造への影響などの重点分野のモニタリングと研究・判断を強化。地方、大学、企業の関連AIプラットフォームとの連携を強化し、中国のAIガバナンス活動ネットワークを形成。国際交流と協力をさらに拡大し、世界のAIガバナンスに関する問題の研究に積極的に参加し、国際的な共通認識を強化。

関連リンク:

調査報告書 『中国における人工知能研究開発の現状と動向