先手を打つ上海―AI産業集積地を構築
2019年7月18日 侯樹文/王春(科技日報記者)
2019年第2四半期の中国の宇宙活動状況
現在、AIを代表する次世代の技術クラスターが世界規模で生産方式の変革を推進し、グローバル生産、投資、貿易構成の大きな転換が起きている。
中国初のAI活用シーン設置の実施計画、中国初のAIイノベーション活用先導区、次世代AIイノベーション発展試験区...。今年8月、「2019年世界人工知能大会」が上海で開幕した。世界の注目がふたたび東洋へと集まり、かつて中国の改革開放の際に一際目立つ先導者であった上海は、「長年にわたる研鑽を重ねた」辛抱強さや強靭さにより、産業改革の歴史的起点に立ち返り、これからの歴史に新たな1ページを加える。
ここでは、AI産業路線の規定やエコシステム建設の分野におけるスポットが頻繁に現れている。また、ここでは、革新的モデル活用がAIのポテンシャルを高めている。
急速に進む産業発展 上海にAIエコシステム構築
上海市の呉清副市長は、「昨年からAIはすでに上海の優先的発展戦略に上りつめ、産業発展は急速に進んでおり、上海は中国のAI発展の最先端エリアの一つとなりつつある」と語った。
昨年12月、上海は全国に先駆けて初のAI活用シーン設置の実施計画を発表。全世界に向けて10大活用シーン、60点のイノベーション製品を発表し、ランキング掲示重視のメカニズムを採用し、AIの新技術や新製品の初発表や初利用の分野におけるモデルを構築した。上述の入選した活用シーンは国際最高基準、AIによる経済の高品質な発展、市民の高品質な生活、都市セキュリティの高効率な運用の活性化を基本的な出発点とし、全国に先駆けてAIの大きな活用を特色とするスマート都市の新たなスポットを構築する。
現時点で、上海は情勢に応じて有利に導かれており、第2期AIシーンのニーズを収集している。また、医療や教育、都市管理、コミュニティ、村落、商業圏、文化観光などの10分野における34の具体的な方向性に重点を置き、社会のホットスポットや都市ガバナンスを際立たせ、AI活用シーンの開放推進を加速させる。
今年5月、国の関連部門と上海市政府は、上海(浦東新区)AIイノベーション活用先導区と上海国家次世代AIイノベーション発展試験区の建設をスタートさせ、モデルプロジェクトを打ち出し、AIと実体経済の深い融合を促進し、全国AIイノベーション発展を先導する。
関連分野の統計によると、上海はすでにAIコア企業を約1,000社有しており、全国でも上位に位置しており、「先導者による利益の牽引」の言葉に如実に示されている。マイクロソフト-儀電イノベーションプラットフォーム、上海脳科学・類脳研究センターなどの基礎研究開発プラットフォームが始動し、アマゾン、BAT(百度<バイドゥ>、阿里巴巴<アリババ>、騰訊<テンセント>)、科大訊飛(iFLYTEK)などが産業イノベーションセンターやAI実験室を上海に設置し、中国本土企業の依図は初のAIクラウドチップを発表した。それと同時に、上海はすでに徐匯濱江、浦東張江などを重点イノベーションモデルエリアとし、楊浦、長寧、閔行、静安などのエリアが連動する発展構成を形成しつつある。このことは、上海が全世界に影響力を持つAIエコシステムを構築しつつあることを意味している。
350社以上が集結 浦東がAI産業の発展を推進
先ごろ、全国初のAIイノベーション活用先導区となる上海(浦東新区)AIイノベーション活用先導区が正式にオープンした。「深化改革の前衛チーム、新たなメカニズムや新たな方法を模索する試験地点、イノベーション発展を育成する主力軍」。これは国が浦東新区AIイノベーション先導区に与えた位置づけである。先導区の建設目標として、2021年までに、国際競争力を有するAIコア産業集約区、全国AIイノベーション技術・製品の活用先行区、およびAI産業基準規範のイノベーション発祥区の初期段階の建設を行い、長江デルタ地域ないしは全国に波及するデモンストレーション効果をつくり出し、全国AI高品質発展を導くという。
国家工業・情報化部(省)科技司の朱秀梅副司長は、「浦東新区AI先導区は今後、制度の先行探索、新技術・新製品の先行試行、コア技術の先行進展、およびトップレベルの国際的協力を担っていく」とした。
浦東新区の管小軍副区長は、「浦東新区のAI産業はすでに強固な基礎を築いている。AIの技術革新やAIによる各種産業の活性化は、現在のAI産業発展を突出して反映している点だ」と述べた。浦東はランキング掲示重視などのイノベーションメカニズムを通して、技術イノベーションのためのレーストラック、産業活性化のためのモデル、制度基準の探索の参考となる。浦東は優勢な産業を核とする重点産業分野にフォーカスし、AIによる駆動力あるシフトチェンジ・アップグレード、中国のレーストラックを背景とする先行テスト、プラットフォームサービス、計算力サポート、先駆的活用分野におけるAI産業の発展を推進する。
データによると、浦東新区のAI企業は350社以上あり、上海市のAI企業の約3分の1を占めている。そのうち、約60社のAI企業の評価額が650億元(約1兆100億円)以上となっており、AI産業チェーンは基本的に形成されている。それと同時に、浦東にはすでに中国内外の最先端の基礎的インフラのサポートやAI技術企業を集まっており、国内の細分化された各市場で比較的高い市場シェアを占め、専門分野にフォーカスしたAI活用企業を集結させている。
島の住民が「新技術の活用」―スマート活用シーンがいち早く張江に登場
上海の張江科学城核心区にある広さ6.6平方キロメートルの半島では、独立した事務棟16棟の間に草木が生い茂り、阿爾飛思(Alpheus)のスマートゴミ箱、インフィニオンのスマート街灯がそれぞれ役割を果たし、思嵐安(SLAMTEC)のセキュリティロボットや紐勱科技(Nullmax)の自動運転シャトルバスが行き交っている。
これは「AI島」の初期段階のスマート活用シーンだ。今年1月、張江AI島に最初の企業としてIBMが進出した。5月には、マイクロソフトのAI、IoTラボが正式に起動した。現時点で、すでに15社が上海の張江AI島と契約を結んでおり、マイクロソフト、アリババ、同済大学、雲従科技(CloudWalk)を含む科学研究院やリーディングカンパニーが同パークに進出している。
張江集団党委書記・董事長の袁涛氏は、「私たちは『AI島』を張江AIのエンジンにし、より多くのAIプレイヤーや技術指導者の注目を張江に集めさせ、AI島の周辺に興味を持ってもらい、張江中区を浦東新区ないしは上海全体をリードする科学技術イノベーション発祥地、AI産業や人材の集積地にしたいと思っている」と述べた。
今後、最も代表的なAI企業のコア技術や製品はAI島で、スマートセキュリティ、音声認識、マシンビジョン、ディープラーニングなどに関わる新技術を率先して活用し、活用シーンと深い融合を果たし、AI島で連動試験や双方向体験を行う。「新技術の活用」のほかに、AI島では「住民」の事務作業や研究開発、生活をさらにスマート、スピーディ、高効率にする。将来的に、張江はAI島を主軸とし、張江エリアへのAIやビッグデータ、クラウドコンピューティングなどのデジタル産業プロジェクトの集結を加速させ、その技術力や応用力を張江科学城全体に拡散させ、その他の産業と交配・融合させる。
現時点で、張江AI島は上海市の第1期AI活用シーン12に選定されており、唯一の「AI+パーク」の実施キャリアとなっている。AI活用シーンはこのほか、上海市市西中学・上海中医薬大学付属閔行薔薇小学校・上海世外教育集団の「AI+学校」シーン、上海市第十人民医院・復旦大学付属腫瘍医院の「AI+病院」シーン、長寧区北新涇街道・徐匯区斜土路街道の「AI+コミュニティ」シーン、臨港科技城の「AI+交通」シーン、静安区政務データ管理センターの「AI+政務」シーン、中国建設銀行上海支店の「AI+金融」シーンなどがある。
※本稿は、科技日報「打造人工智能産業高地 上海這様下好"先手棋"」(2019年7月1日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。