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エネルギー分野で強い存在感を示すAI―導管網応急修理、予測誤差などへの応用

2019年8月9日 張景陽(科技日報記者)

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視覚中国より

 人類の科学技術の最先端として、人工知能(AI)は自動車工業やハイエンド製造、インターネットなど多くの分野で応用されているため、広く社会から注目されている。実際、電力や石炭、石油化学工業など、人々とかけ離れたように見えて実は常に人々の生活に影響しているエネルギー分野と産業においても、AIは広範に応用され、そのニーズも差し迫ったものとなっている。

 先ごろ、中国石油天然ガス集団有限公司(以下「中石油」)はメディア開放日を実施し、傘下の北京天然ガスパイプ有限公司の生産運営状況を公開し、スマート空気圧縮ステーションやスマートパイプ輸送、スマート運営管理などが披露され、人々の視野を大きく広げた。今回公開された内容から、AIのエネルギー分野における応用・発展をうかがい知ることができる。事実上、スマートエネルギー時代はすでに到来している。

産業の各段階にまで広がるニーズ

 中国の北方地域の広大な大地の下には、陝北ガス田と首都圏を結んで数千キロも延々と続く導管網が縦横に交差しており、沿線地域と北京への天然ガス供給を保障している。中石油北京天然ガスパイプ有限公司の末端空気圧縮ステーションで、科技日報記者は華北のガス供給大動脈におけるAIの応用とその重要性を現場で体感した。

 安全性モニタリング評価、安全警報、リスク評価、スマート稼働メンテナンス、パイプ応急修理、地下ガス貯蔵庫施設、空気圧縮ステーション建設工事インテグレーション、環境保護など、天然ガス輸送のどの段階にもほぼAI技術が用いられている。

 中石油北京天然ガスパイプ有限公司科技処技術主管の王東営氏は、「長期にわたり生産実践をするなかで、当社では生産の実際の状況とAIの結合をベースに、スマートパイプ・スマート導管網という概念を打ち出した。つまり、統一基準でデジタル化されたパイプをベースに、データの全面的統一性、センサーによる相互可視化、システムとインターネットの融合、供給の正確なマッチング、スマートで高効率な稼働、制御可能な予測・警報を特徴とし、「端末+クラウド+ビッグデータ」という体系の枠組みを通じてパイプの全寿命サイクルデータを集積し、スマート分析と意思決定サポートを提供し、情報化手段を用いてパイプの可視化やネットワーク化、スマート化管理を実現し、全方位的な感知、総合的予断、一体化管理制御、自律適応最適化の能力を備えるという概念だ。これは、現在および将来においてエネルギー分野の生産運営が必然的に直面し、経験するべき段階でもある」と説明した。

 世界的に有名な市場調査機関であるCB Insightsが先ごろ発表した報告書「AIのエネルギー業界における5つの応用」は、「エネルギー業界からは大量のデータが産出されており、これらのデータを生産性向上とコスト削減の原動力に転化するために、多くのエネルギー企業がAIに関心を寄せている。AIはエネルギー貯蔵、スマート送電網、故障管理、石油・ガス探査、エネルギー消費・消耗の五大分野に広く応用されることが見込まれ、また実際に応用されている」としている。

 エネルギー業界は今後主に最適化と予測に取り組んでいくことになるが、AIはまさにエネルギー生産やエネルギー輸送網バランス、消費習慣などの面で独自のソリューションを提供することが可能だ。AIがエネルギー業界の重要な構成部分となり、生産サイド、輸送サイド、消費サイドで応用されていくことは容易に予測できる。実際、産業チェーンが長く、構成産業が多く複雑で、サポートの役割が極めて重要な工業分野であるエネルギー分野では、AI技術に対するニーズがすでに各段階、各関連産業にまで細分化されている。

応用シーンが多く、生産品質を効果的に向上

 国家エネルギー集団神華補連塔炭鉱の深さ200メートルの立坑の下では、粉炭切削や石炭採取・引揚運搬、掘削作業面を進める作業などの工程がすべてスマート化され、世界初の高さ8メートルの大採掘高重型総採掘作業面での作業が完全に人工採掘に切り替えられていた。炭鉱総採掘面責任者は、「ここでは、鉱山労働者の肉体労働は指を動かしてコンピューターを操作することだけ。地面穿孔垂直電気供給技術、周波数変換駆動制御技術、自動排水・恒圧水供給などの技術によって、当社では石炭を見なくても採掘することが可能となっている」と説明した。

 中石油北京天然ガスパイプ有限公司の運営管理スマート化について王東営氏は、「現在、我々はビッグデータやクラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、AIなど新世代の情報技術を活用すると同時に、新世代スマートハードウェア設備を配置して、パイプ状態スマート評価、リスクや潜在的トラブルのスマート検知、パイプ寿命予測、パイプ欠陥警報、動画モニタリングスマート検知、設備点検・スマートメンテナンス、パイプパラメータスマート分析、応急自動応答処置を実現し、パイプ管理はすでにスマート処理とAI自動化管理段階に入っている」と語った。

 現在、中国のエネルギー分野における実現したAIの応用技術はすでにかなりの割合で全面的なものになっているという。送電網の安全と制御分野では、この技術は電力システムのシミュレーション分析に応用でき、ディープラーニングによって送電網の安定特性を自動的に抽出することで、送電網の安定稼働方式と効果的措置に対し迅速な判断を実現している。また、送変電分野では、画像認識技術によって送変電設備巡回検査と送電ルートリスク評価に応用することができ、送変電設備状態データのディープラーニングを通じて、設備故障の正確な検討・判断と設備状態の評価分析が実現した。さらに、ナビゲーション画像の知識蓄積とディープランニングをベースに、空間ナビゲーションとスマート巡回検査計画に基づき、巡回検査ルートと重点的徹底調査区域を最適化する。

 現在最も注目されている新エネルギー分野においては、企業は画像認識と機械学習技術を通じて、気象動向スマート分析、気象システム時空特性スクリーニング・識別、予測誤差、不確実性マイニングを実現し、電力気象スマート化予報のレベルを効果的に高めることも可能となっている。また、ディープランニング技術の雲観測画像における雲の層と雲系の識別をベースにして、雲の層に遮られた条件下における太陽光発電電力の急激な変動に対する予測を実現している。

深い融合にはビッグデータ構築をベースにすることが必要

 業界関係者は、AIとエネルギー産業の結合は、ある単独の項目やいくつかの技術の結合ではなく二大技術分野の深い融合であり、短期間内にできるものではなく長い過程を経て成し遂げられるものだと指摘している。

 中国工程院院士で航空工程学院院長の何友氏は、「AI工業化の道をしっかりと歩んでいくには、ビッグデータ構築をベースとしなければならない」との見方を示している。さらに何氏は、「工業ビッグデータは新たな産業革命の核心であり、工業インターネットと中国のスマート製造を実現するための重要な足掛かりとなり、企業の『製造』から『智造(スマート製造)』への転換を促すだろう」と語った。

 このほか、AI技術プランのエネルギー産業における応用は、業界特性と生産ニーズとも密接な関わりを持つ必要がある。メディアの報道によると、2017年11月、インド北部のある火力発電所が爆発し、32人が死亡したが、その原因は石炭ガスパイプが詰まったことによるボイラー爆発だった。これはエネルギー業界でよく発生する類の故障で、事故を引き起こした原因は設備に対して日常的に検査を行っていなかったことだった。しかしAIで設備を観察し事故発生前に故障を検出すれば、時間とコストを節約し、さらには命を救うことも可能になる。

 中国電力科学研究院副院長で、中国AI産業発展連盟副理事長の王継業氏は、「AIはデータや計算能力、アルゴリズム面での急速な発達、特にディープランニングによる学習強化、転移学習、敵対的学習など基礎理論アルゴリズムにおける飛躍的進歩により、人類文明発展の加速をもたらした。AI技術は送電網とエネルギー電力のモデル転換・発展における重要な戦略的支柱である。エネルギー・電力分野では、システムの安全性とタイムリーなレスポンスが重視されるため、AIは主に状況感知と意思決定補助に用いられるべきであり、エネルギー電力業界のほうも自身の業務ニーズに立脚し、AI技術をいっそう開発利用するべきである。そうすることで、エネルギーと電力システムの技術進歩と変革が促進されるだろう」と述べた。

 AIのエネルギー業界における応用はエネルギー業界の最適化を促していくと同時に、全産業チェーンのネットワークを形成して、さまざまなエネルギーインフラを一つにつなぎ、インターネット化とスマート化がさらに進むだろう。AIはエネルギー業界でますます重要な役割を果たしており、新たな試練とチャンスがそれに伴って生じている。そしてエネルギー業界も新たな観念でAIがもたらした変化に対応し、変革がもたらすチャンスをつかもうとしている。

 将来、AIはエネルギー業界でますます多くの使命を担っていくだろう。その使命には、エネルギー生産、供給に関する独自のソリューションを提供すること、大規模かつ迅速なデータ処理能力によってエネルギーの生産プロセスを最適化し、複雑なアルゴリズムと技術データ、自然環境データを結び付けることでエネルギー採掘を最適化すること、大量の消費データに対する学習を通じて、消費者の習慣、価値観、動機、個性を理解し、消費行動を予測し、より効果的に意思決定を行う▽複数のエネルギー源から産出されたエネルギーの輸送管理をサポートし、リアルタイムで変化する空間・時間的ニーズに対応することなどが含まれる。


※本稿は、科技日報「搶修管網、予測誤差能源領域AI強刷存在感」(2019年7月29日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。