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浙江嘉興港区―原料相互供給、資源共有によるエコ発展の新モデル

2019年10月10日 李禾(科技日報記者)

 浙江省の嘉興港区内にある各企業の入口には電子ディスプレイがあり、同区内の汚染物質排出状況がリアルタイムで映し出されている。現在、モニタリングポイント35万カ所が設置され、同区内の全ての企業をカバー。企業の安全、汚水排出、大気汚染などのオンラインモニタリングデータがディスプレイで公開されており、さらに、漏れ検知と修理(LDAR)が化学工業企業すべてをカバーし、モニタリングデータが公開されている。

 2018年、嘉興港区の国内総生産(GDP)は183億元(約2,760億円)に達した。12年に37億1,700万元(約560億円)だった工業付加価値額は年間20%のペースで増加し、2018年に111億5,800万元(約1,680億円)に達した。化学工業新素材産業は、同区で最も重要な主力産業になっている。化学工業のエコ産業チェーン・ネットワークの継続的な整備、グリーン発展の推進を通じ、(港区内の)化学工業新素材パーク全体における環境の質を高めており、嘉興港区は、中国国家エコ工業モデルパークリストに名を連ねている。

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嘉興港区の化学工業企業(視覚中国より)

トップレベルデザインを実施し、エコ工業チェーン・ネットワークを構築

 清華大学環境学院の教授で、生態文明研究センターの陳呂軍副センター長は、「現在、中国の国家級、省級の各種工業パークは2,543カ所、各級のパークを合わせると約1万カ所あり、中国全土の工業生産の50%以上に寄与している。工業パークは経済発展を牽引するエンジンであると同時に、工業汚染対策、二酸化炭素の排出削減の主戦場でもある。グリーン、低炭素、リサイクル、エコロジカルな発展がその唯一の道だ」との見方を示す。

 どうすれば、資源をより効率的に利用し、汚染物質の排出を削減することができるのだろう?陳副センター長は、「それには将来を見据えた産業発展のトップレベルデザインが必要だ。嘉興港区は、中国唯一の国家級化学工業新素材パークを有し、パークは産業チェーンの誘致を実施し、エコ工業チェーン・ネットワークを構築している」と説明する。

 エコ工業チェーン・ネットワークとは、パーク内の企業と企業との間で、製品チェーンや産業ネットワークの関係に基づいて、有機的にそれらを結合させ、原料の相互供給、資源の共有を実現することを指す。嘉興港区内の企業間では、整った製品チェーンと製品ネットワークが次第に形成されており、さらに、企業間分業を基礎とした競争的補完関係と提携関係も形成している。三江嘉化集団を例にすると、興興新能源が生産したエチレンを、三江化工がエチレンオキシドを生産するための原料にしている。また、美福石化が生産したブタンは三江化工がMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を生産する主要原材料であり、興興新能源がプロピレンを生産するための主要原材料となっており、美福石化が生産する硫黄は三江嘉化が硫酸を生産する原材料だ。三江化工が生産した窒素は、興興新能源、嘉化能源、美福などの企業の補助原料で、三江嘉化が生産した水酸化ナトリウム、液体塩素、塩酸、硫酸などはパーク内の徳山化学工業、讚宇科技、合盛、帝人などの企業に生産原料として提供されている。区内企業の信匯合成新素材が生産するブチルゴムに必要な11種類の原料のうち、9種類はパーク内の企業が提供している。さまざまな製品の共同生産、資源の相互供給など、産業の共生対策を通して、資源の利用率が向上し、廃棄物の排出が減少し、化学工業パーク産業のエコ新型生産スタイルが形成されている。

 陳副センター長は、「嘉興港区は嘉化能源が入居したのを契機に、エネルギーや基礎化学品の供給ネットワークを継続的に構築・最適化し、化学工業新素材業界が良い発展を遂げられるよう促している。そして、大企業グループを中心とした、関連インフラが建設され、企業間のエネルギー、物質の交換ネットワークの循環型発展のスタイルがほぼ構築されている」と説明する。

 エコ工業モデルパークの構築の過程で、嘉興港区は、「エコ、低炭素、循環」をコンセプトに、投資誘致を「選択的な投資誘致」に変え、同区の産業基礎と優位性を組み合わせて、科学的に産業チェーン誘致を展開している。同パークに入居している企業には、ロイヤル・ダッチ・シェル、ロッテ・ケミカル、BASFなど、米誌フォーチュンが毎年発表している「フォーチュン・グローバル500」に入る企業のほか、日本の帝人、韓国のヒョースン(暁星)、シンガポールの美福などの世界有名の企業や、嘉興石化、三江化学工業、浙江信匯、嘉化能源などの中国の有名企業があり、ポリカーボネート、有機ケイ素化合物、ビニルアルコール、PTA(高純度テレフタル酸)、MTO(メタノール由来オレフィン)、ハロゲン化ブルチなど、業界で競争力ある複数の産業チェーンが構築されている。

スマートインフラ、パークのグリーンモデル転換を促進

 工業パークは、大量の資源、エネルギーを消費し、工業汚染物質を大量に排出する。陳副センター長のチームが、工業パークの温室効果ガス(GHG)の排出削減状況を研究したところ、1,600カ所のパークで稼働中のエネルギーインフラの総設備容量は515ギガワット(GW)で、2014年の中国全土の総設備容量の38%を占めていた。それらインフラのGHG排出量は中国全土の18%を占め、二酸化硫黄排出量は12%、窒素酸化物の排出量が15%、淡水消費が中国全土の工業用水量の5%を占めていた。

 工業パークのグリーンモデル転換、スマートインフラの建設は非常に重要で、嘉興港区は、中国全土で唯一の政府主導型スマート化学工業パークモデル機関だ。

 うち、嘉化能源はパークに集中型熱供給を提供し、嘉興市危険廃棄物処理センターは危険廃棄物を処理し、和恵環境はパーク内の企業に汚泥処理プランを提供し、2018年に5億2,600万元(約79.4億円)を投じて、パーク工業集中汚水処理場を建設した。また、長さ7,000メートルの公共共同溝がパーク内のいたる所に伸びており、企業内部のパイプラインの総延長は計約100キロにのぼる。液体化学工業原材料を運ぶためのパイプが港から企業まで途切れなく完全につながり、20社以上の企業、2大形態の化学材料30種類以上の輸送を担っている。現在、パーク内の循環型製品は約100万トンと試算され、公共共同溝などの建設により、材料の輸送に必要なエネルギー消費が大幅に削減されただけでなく、危険化学品の輸送リスクを低下させ、材料を輸送する際に、それが漏れるなどして環境汚染につながるのを避けている。

 嘉興港区スマート化学工業パークには、スマート保安、スマート環境保護、スマートエネルギー、スマート物流、スマート地理情報の五大サブシステムがあり、「一つのネットワーク」はパークの運行状態を立体的にモニタリングし、「一つのクラウド」はパークの公共情報ソースを集め、共有できるようになっている。化学工業パークの各種カギとなる情報を感知、伝送、統合、分析することで、パークの安全、環境保護、物流、公共サービスなどに対して、正確で、効果的なスマート・レスポンスを行い、最終的に、パークのインフラのスマート化、管理の精密化、生産管理の情報化、物流輸送の一体化、産業発展の近代化を実現している。

 そのうち、スマート環境保護の建設のために合計4,350万元(約6.6億円)の資金が投じられ、化学工業パークの有害大気汚染因子自動モニタリングステーションを2ヶ所、鎮・区の通常大気環境モニタリングステーションを2ヶ所、小型大気ステーションを30ヶ所、地表水モニタリングステーションを8ヶ所建設し、企業の廃水・排気のオンラインモニタリング51セット、カードによる汚染物質排出モニタリング15セット、動画モニタリング37セット、固体廃棄物の出入口動画モニタリング12セットを完成した。そして、ビッグデータの集約を通して、揮発性有機化合物(VOCs)の汚染因子の出所調査、パークのモニタリング警報、企業のリスク管理、パークの環境保護の動的モニタリングなどを一体化し、パークのスマート環境保護プラットフォームと嘉興市の汚泥危険固体廃棄物全プロセスモニタリングシステムを通して、固体廃棄物の発生から処理までの全プロセスをモニタリングし、中国全土の化学工業パークに、運営の規範化、基準化、スマート化のモデル、参考、根拠を提供している。

構造、プロジェクト、管理における排出削減でエコ建設の成果が顕著に

 嘉興港区は、情報技術を活用してモニタリングを強化し、区内の環境の質やパークの企業の廃水、排気ガス、固形廃棄物の廃棄状況を随時把握し、モニタリングの効率を向上させている。さらに、「五水共治(汚水・洪水・冠水・給水・節水の管理)」、「五気共治(工業排気・自動車排ガス・建設現場の粉じん・生活上の有毒ガス・排煙の管理)」、「五廃共治(生活ごみ・建設廃棄物・工業固体廃棄物・農業廃棄物・医療廃棄物の管理)」、「汚染対策による排出減」、「業界による改善」などの特定項目キャンペーンを展開して、構造、プロジェクト、管理における排出削減を実現している。

 2018年12月31日の時点で、同区の大気が「優良」の日の確率が85.9%と、前年比で5.4%上昇し、微小粒子状物質・PM2.5の濃度が1立方メートル当たり32マイクログラムと同比で13.5%改善し、大気をめぐる苦情が同比49.2%減少した。

 同区はさらに、工業企業のICカードによる汚染物質排出システム導入を全面的に推進し、85%以上の工業廃水の濃度と総量をモニタリングできるようになっている。また、水を大量に使う企業の再生水利用を大々的に推進している。例えば、嘉興石化有限公司はPTAプロジェクトで2億元を投じて、再生水利用設備を建設し、再生水の利用率は65%以上に達し、廃水量を年間約400万トン削減している。また、三江化学工業有限公司も3,800万元(約5.7億円)を投じて、再生水利用設備を建設し、再生水利用率が85%以上に達している。

 一方で、嘉興港区のエコ・グリーン建設の成果も顕著だ。2018年と2012年を比べると、全ての汚染物質排出が減少し、エネルギー消費の強度指数が低くなった。そして、一人当たりの工業付加価値額の増加幅は258.3%に達し、1事業所当たり工業用地の工業付加価値額の増加幅は161.9%に達した。1事業所当たり工業付加価値額の総合エネルギー消費量と水の消費量はそれぞれ42.8%と42.6%減少し、1事業所当たり工業付加価値額の廃水と固形廃棄物発生量もそれぞれ57.5%と24.7%減少した。1事業所当たり工業付加価値額の化学的酸素要求量と二酸化硫黄排出量はそれぞれ81%と95.5%減少となった。さらに、同区の特許出願は累計700件以上で、うち発明特許が約200件だ。同区内には、ハイテク企業17社、省テクノロジー型中小企業が28社、院士専門家研究開発拠点3ヶ所がある。

 陳副センター長は、「工業パークのグリーン発展を目標に掲げ、産業のエコ発展を推進し、インダストリアル・エコロジーの理論やクリーン生産の理念に基づいて、工業パークのグリーン化をさらに推進し、国家エコ工業モデルパークの構築活動を、量の増加から、質の向上へと次第にステップアップさせていく。嘉興港区は産業エコ発展の新スタイルを構築し、工業パークがグリーン発展を実現するために経験とモデルを提供する」と話す。


※本稿は、科技日報「原料互供、資源共享 浙江嘉興港区構建生態発展新模式」(2019年9月25日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。