成都の経験、研究成果の実用化をより能動的に
2019年12月4日 盛利(科技日報記者)
作業員が成都市のハイテク企業の生産ラインで、忙しそうに働いていた。筆者撮影。
所有権帰属改革、成果を実験室から生産ラインに
国務院弁公庁はこのほど、国務院第6回大規模監督・検査で見つかった典型的な経験・手法を表彰した。「職務科学技術成果所有権帰属改革の模索により、科学技術と経済を結びつけるルートを構築」という「成都の経験」がそのうちの一つだ。成都市科学技術局が明らかにしたところによると、西南交通大学(成都市)は全国に先駆け、科学技術成果所有権帰属混合所有制改革を行った。成都市はさらに一連の政策措置を打ち出し、研究成果の技術移転・実用化体制およびメカニズムの改革を推進した。
職務発明者、割合に基づき特許権を共有
ハイテクの研究成果が古くならないように、西南交通大学は職務発明者が7対3の割合で学校と特許権を共有でき、値踏み出資後に発明者が特許権から生まれる7割の株式を所有できるとした。
西南交通大学国家大学科学技術パークインキュベーションセンター長の劉安玲氏は「これにより発明者が研究成果の実用化の主体になる。改革により、過去に研究成果の実用化に存在していた、仕事の受動性、奨励の遅延、実現の不確実性、権益の継承性の欠如といった消極的な要素が自ずと消え、発明者チームの実用化の積極性が大きく向上した」と話した。
トップダウンデザインと政策による改革への応援
成都市科学技術局の関係責任者は「職務科学技術成果所有権帰属混合所有制改革の試行には、トップダウンデザインと政策のサポートが不可欠だ。改革により革新の主体を活性化し、研究成果の実用化への障害を打破する。成都市は政策による応援を止めたことがない」と述べた。
成都市の科学技術および財政などの8機関は「改革実施意見」を策定し、職務科学技術成果の意味、職務科学技術成果の知的財産権分割権利確認方法、権利確認フロー、価格設定フロー、収益分配、内部管理及び機関の職責を明確にした。具体的な操作マニュアルを策定するとともに、「科学技術成果実用化10カ条」や「知的財産権成果入場取引の奨励に関する若干の措置」など一連の政策を打ち出した。産業チェーン、革新チェーン、資金チェーンの効果的な融合を推進し、技術取引市場の建設を加速した。同時に中国内初の混合所有制改革を軸とする「三権」改革連盟を設立し、「結束による突破」を実現した。
成都市は今年再び革新に取り組み、全国に先駆けて技術マネジメント専門技術者の職階評定方法を打ち出した。自然科学研究職階シリーズに技術マネジメント専門を新規設立し、技術マネージャー評価基準を明らかにするとともに、評価・審査委員会を設立した。
約1,000件の研究成果が成都市で技術移転・実用化
一歩を踏み出すことで、全体が活性化していく。職務科学技術成果所有権帰属改革の実施掘り下げに伴い、改革のボーナスが徐々に顕在化している。成都市の大学・研究所・研究院で誕生した多くの研究成果が、実験室から生産ラインに向かっている。市全体で現在、400の職務科学技術成果の分割権利確認を完了し、1,000件近くの研究成果を成都市で技術移転・実用化した。値踏み出資により60数社が創立された。
四川大学の魏于全院士による抗腫瘍薬、遺伝子治療技術など7件の成果の価値は3,6億元(約55.8億円)と評価され、値踏み出資の形式により西蔵承億医薬科技、深圳恒沢生物科技などの3社と協力し、成都市で進出・実用化を実現した。四川大学は7件の成果の値踏み出資により形成した株式の90%を奨励として、成果を上げたチームに与えた。成都中医薬大学の段俊国教授が率いるチームの特許成果、「神経保護作用を持つ薬物組み合わせ・生産方法と用途」の価値は2,063万元(約3.2億円)と評価され、太極集団、西蔵薬業、康弘薬業、貴州百霊薬業など多くの上場企業および民間資本で設立した成都中医薬大学銀海眼科医院股份有限公司を誘致した。
上述した責任者によると、職務科学技術成果所有権帰属改革はより濃厚な革新・起業の雰囲気をもたらした。ハイテク研究成果の技術移転・実用化の効果は顕著で、成都市の大学の科学研究成果を主な対象とする技術取引市場が日増しに活性化し、成約金額が拡大を続けている。成都市科学技術局の統計によると、今年9月末現在の市全体技術契約成約金額は前年同期比54.7%増の1,036億8,200万元にのぼる。うち技術輸出契約成約金額は56.0%増の728億1,500万元、技術導入契約成約金額は48.79%増の308億6,700万元に達した。
※本稿は、科技日報「成都経験:譲科技成果転化更主動」(2019年11月15日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。