新エネ車普及推進の課題解決に挑む広西チワン族自治区
2020年1月31日 劉昊(科技日報記者)
広西チワン族自治区の地元企業が製造した新エネ車(右、画像は取材対応者が提供)
新エネ車が、広西チワン族自治区で新たなトレンドとなりそうだ。
広西チワン族自治区は記者会見を開き、このほど発表された「広西チワン族自治区新エネルギー車普及推進の行動案」(以下「行動案」)の関連状況について説明した。それによると、2020年末までに、同自治区は新エネ車保有台数を行動案実施前と比べて100%増の14,6万台以上にしたい考えだ。また、新エネ車の充電インフラの整備を進め、一層便利に充電ができるようにし、新エネ車の普及推進で中国全土をリードすることを目指していく。
広西チワン族自治区発展・改革委員会の黄汝焜副主任は、「近年、当自治区の各界の取り組みの下、新エネ車普及推進の成果が上がっているものの、社会のニーズを満たすには至っていない。確実に課題解決という任務を果たし、順調に目標を達成するために、『行動案』で行動8項目を提起し、対策を5項目策定した」と説明する。
行動案の策定により産業のモデル転換・高度化が促進
新エネ車は、今後の自動車工業発展のトレンドである。ドイツを代表とする西側の自動車工業先進国は既に、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止する時期を策定し始めており、新エネ車が世界的に新たな工業革命ブームを巻き起こしつつある。
2019年9月4日、広西チワン族自治区政府は、柳州市で同自治区全域の新エネ車普及推進現場経験交流会を開催し、2019年10月から2020年末まで、同自治区全域で新エネ車の普及推進のの計画を打ち出した。
広西エネルギー局の一級調査研究員である韋漢権氏は、「新エネ車の発展は国家戦略に合致しているほか、中国の工業・産業の高度化にもつながる。また、エネルギー不足の緩和や環境汚染の解決という面でも重要な対策で、必要不可欠だ」との見方を示す。
その後、広西チワン族自治区政府は、広西における新エネ車の普及推進に関する各庁を跨いだ合同会議制度を構築し、新エネ車普及推進行動案を策定。課題解決のための指導的思想、基本原則、目標・任務などを提起し、課題解決のための行動8項目の具体的な内容や、目標達成を保障するための施策などを明確にした。
韋氏は、「広西は、新エネ車発展にとって良い条件が揃っており、上汽通用五菱、東風柳汽、広西汽車集団など、地元の自動車メーカーや部品メーカーが400社ある。そして、新エネ車を生産できる資質を備える地元企業が5社、新エネ専用車両を生産できる資質を備える企業が4社ある。乗用車、専用車両、物流車両、公共バスなど全ての種類の自動車を製造できる」と説明する。
ただ、韋氏は「さまざまな要因により、当自治区の各責任当局の重視している点がそれぞれ異なり、資金サポートも十分ではなく、業務の実施がうまく進んでいない」とも指摘。「『行動案』が打ち出されたのは、新エネ車の普及を大々的に推進することで、当自治区の自動車産業のモデル転換・高度化、消費の高度化、そして、当自治区の産業のモデル転換・高度化を促進して、同自治区の自動車産業の質の高い発展を全力で促進するため」と説明する。
「柳州モデル」を推進して普及環境を整備
専用の駐車スペース設置から充電設備の建設、審査・認可から法律執行、モデル機関の設置から環境にやさしい「グリーン団地」の構築、交通機関のグリーンシェアリングから企業サービスまで、新エネ車を普及させるために、「行動案」は課題解決のための行動8項目を挙げている。
また、「行動案」では、新エネ車応用の「広西モデル」を構築することや、各級の関連当局が積極的に「柳州モデル」を推進し、新エネ車普及のために良好な環境を整備することも打ち出されている。
近年、広西チワン族自治区柳州市は、「政府・企業連携、市場主導、一体化推進」という新エネ車普及の成功経験・ノウハウを採用しており、中国自動車工業協会から「柳州モデル」として総括され、2018年2月には当時の国務院の指導者らから高く評価された。その後、「柳州モデル」は中国全土の各新エネ車普及関連の会議で何度も言及され、推奨されてきた。
広西エネルギー局の黄奇海副局長は、「現在、当自治区で新エネ車の普及がうまくいっているのが柳州市だ。柳州の経験は当自治区の経験であり、誇りでもある。『柳州モデル』は、ほかの場所でも採用して推進する価値がある」とする。
柳州市が新エネ車の普及において積み上げてきた成功経験について、韋氏は、「例えば、柳州市は地元の企業である上汽通用五菱をうまく起用し、都市管理当局のニーズに合わせて、『宝駿E100』をベースにしたスマート公用車を打ち出し、公務機関にカスタムメイドのスマート政務・管理サービスを提供すると同時に、各公務の内容に違いが少なくないために、多くの機能を盛り込んだ派生的な車種も生み出してきた。現在、同自治区全域で投入されている新エネルギー公用車は500台以上あるが、それら公用車の用途・使用シーンは、消防パトロール、医療救護、交通警察、公安警察など10以上にわたっており、政府のさまざまな職務当局の業務をサポートしている。そして、新エネ車の普及の面で良いモデルケースとなっている」と説明する。
ただ、黄副局長は「現在、当自治区の新エネ車の普及状況は全体的に不均衡で、カバー率が低く、関連政策・施策も十分に整備されていない。特に、充電インフラの整備が遅れており、新エネ車の普及に一定の影響を与えている」とも指摘。
さらに、「そのため、当自治区は今後、課題解決のための一連の行動を取り、関連政策・施策を整備し、柳州の経験とノウハウをさらに充実化させ、『柳州モデル』をアップグレードさせて、『広西モデル』を作り上げたい」と語った。
※本稿は、科技日報「広西打響新能源汽車推広応用攻堅戦」(2020年1月10日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。