下水油に新用途、第2世代バイオディーゼル燃料生産技術が商用化へ
2020年9月18日 王健高(科技日報記者)、劉 佳(科技日報特派員)
写真提供:視覚中国
このほど、中国科学院青島生物能源・過程研究所(以下、「中科院青島能源所」)から喜ばしいニュースが伝えられた。同研究所と河北常青集団石家荘常佑生物能源有限公司(以下、「常佑生物能源」)が沸騰床改造均一相水素化工程による第2世代バイオディーゼル燃料生産技術を共同開発し、常佑生物能源で年間20万トン規模の第2世代バイオディーゼル燃料生産装置を稼働させることに成功した。これは、中科院青島能源所のZKBH均一相水素化技術が、世界で初めて液体分子触媒を採用して商用第2世代バイオディーゼル燃料の量産に成功した技術となったことを示す。
ZKBH第2世代バイオディーゼル燃料技術の発明者であり、常佑工業化プロジェクト主管責任者である中科院青島能源所研究員の陳松博士は、「現在、全ての装置の各作動指標は安定しており、生産ではバイオディーゼル燃料収率80%以上を達成しており、世界の先進レベルに達し、製品の品質はEUへの輸出基準を満たしている」とうれしそうに話した。
ZKBH均一相水素化技術を独自にイノベーション
従来型エネルギーを新エネルギーで代替し、希少なエネルギーを優位性あるエネルギーで代替し、化石エネルギーを再生可能なエネルギーで代替する― 中国は代替エネルギー開発という緊急の課題に直面している。
しかし世界規模でも、第2世代バイオディーゼル燃料生産技術は難度が高い。現有の主流装置は全て固定床式生産を採用しており、固定床水素化技術は現在産業への応用が最も多く、発展が最も速い水素化技術だ。しかし固定床水素化は原料に対する要求が高く、触媒が活性を失いやすく、特にリンやケイ素の含有量が高い燃料用油は影響を受けて被毒し反応活性が低減しやすいため、生産量が限られていた。一方、バイオディーゼル燃料を生産するための原料成分は比較的複雑で、不純物が多く、酸価が高く、直接固定床を使って水素化をすることは困難だった。陳氏は、「ZKBH均一相水素化技術はスラリー床の優位性を参考にし、さらに沸騰床廃油水素化の長所を利用して、高効率の液体触媒を開発することで、固体触媒が摩耗して活性を失いやすいという問題と、バイオマス燃料の処理においてチョーキングしやすいという問題を解決した。また、液体触媒は中科院青島能源所が独自に研究開発した半セラミック化撥水材固体触媒と完全な協同が可能で、高い収率を実現し、さらに工業装置の長期的稼働という生産安定性を保障した」と述べた。陳氏は、「中国の再生可能エネルギーとバイオ燃料の春がまもなくやってくる」と見ている。
産学官連携が実を結ぶ
陳氏によると、第1世代バイオディーゼル燃料と第2世代バイオディーゼル燃料は、生産原料は同じであるものの、製造技術は方法がまったく異なるという。第1世代バイオディーゼル燃料はエステル交換技術を採用して生産された脂肪酸メチルエステルで、生産工程が単純であるのに対し、第2世代バイオディーゼル燃料は触媒水素化工程を採用しており、得られる製品の化学構造が異なり、クリーンな水素化製造技術で得られるクリーンで高品質なアルカン類第2世代バイオディーゼル燃料だ。第1世代バイオディーゼル燃料、すなわち脂肪酸メチルエステルと比べ、第2世代バイオディーゼル燃料は化学構造上一般のディーゼル燃料とは全く異なるが、ディーゼル燃料と近い粘度と発熱量、またこれに相当する酸化安定性と、より少ない排気量という優位性がある。また、石油系ディーゼル燃料と同様にアルカン類に属し、保管と輸送に影響がなく、エンジンと排気処理に影響せず、品質もより高い。同時に、第2世代バイオディーゼル燃料のCO2排出量は一般のディーゼル燃料より少なく、制限対象および非制限対象の汚染物質排出(Sox、NOxを含む)を削減でき、粒子状物質の排出量も減らすことが可能で、しかもエンジンのスケール付着を大きく減らすことができ、騒音が著しく低下する。
第2世代バイオディーゼル燃料技術成果の研究開発過程について、陳氏は、「この技術成果はチームの知恵と心血を凝縮したものであり、産官学連携の成果だ」と述べた。
2020年初め、常佑生物能源は第2世代バイオディーゼル燃料生産技術を求めて調査研究を行った結果、中科院青島能源所と交流・提携を行うことにした。中科院青島能源所は液体触媒沸騰床水素化と固体触媒水素化脱酸素とのカップリングによる品質向上というZKBH工業化技術改造プランを打ち出し、すぐに常佑生物能源との提携をスタートさせた。一期の目標は20万トンのバイオマス油脂を処理して第2世代バイオディーゼル燃料を生産することとした。
双方のチームは一致協力し、3ヶ月にわたって繰り返し調整と実験を行った結果、生産現場の全ての設備調整と製造技術フローの改造工事を終えた。最初の液体触媒とバイオディーゼル燃料品質向上用固体触媒を生産現場に運び込んだ後、7月30日、装置は正式にサンプル生産を開始し、一回の切り換えで毎時8トンの原材料を投入。最初に投入した原料は国産の下水油を主な成分とするバイオマス原料だった。8月6日に正式な製品生産を開始。生産された第2世代バイオマス燃料は見た目が透明で、密度が0.7903、セタン価は100に近く、硫化窒素はいずれも5未満だった。上海の関連機関で検査した結果、製品はバイオディーゼル燃料のEUへの輸出基準を満たし、製品指標を全てクリアしていた。
※本稿は、科技日報「地溝油有了新用途 這項技術譲它変身二代生物柴油」(2020年9月1日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。