寧夏のジャガイモ産業、科学技術で加速―品種選びからモデル栽培まで
2020年9月10日 王迎霞、張紉芳(科技日報特派員)、馬媛媛(科技日報特派員)
寧夏回族自治区中衛市海原県関荘郷高台村では、乾燥に強いジャガイモの「四位一体」と「シート覆土」による完全機械化栽培技術が幅広く人気を集めている。(撮影・王迎霞)
「豊作の年にはおかずになり、凶作の年には主食になる」。ジャガイモ(馬鈴薯)のことだ。寧夏回族自治区南部の広大な黄土の丘陵地帯で、ジャガイモは最も効率のよい商品作物となっている。
長年にわたり、同じ品種だけを栽培してきたこと、栽培法が時代遅れであったこと、病害虫が多いこと、労働力が不足していることなどの要因により、人々の命を救ってきたこのジャガイモ産業は、期待されたほどの価値を発揮できなかったばかりでなく、さまざまな制約を受けて、村が極度の貧困に陥っていた。
主要産業を主力産業に生まれ変わらせるにはどうしたらいいか。寧夏自治区は科学技術に答えを求めた。
科学技術による貧困者支援を通じて、かつての「命を救う作物」は「富をもたらす作物」に変身し、安定して収穫量を増やすとともに持続可能な発展を遂げる新たな道を作った。
科学技術が加勢 小さな村が「大スター」に
夏の盛りの同自治区中衛市海原県関荘郷高台村は、一面にジャガイモの花が咲き乱れていた。山の斜面に切り開かれた段々畑は、見渡す限り青々とした作物が広がり、その景色は見る人を喜ばせた。
「最初の種子は原原種と呼ばれ、2代目は原種、3代目は種子と呼ばれる。楊さん、今年とれた種芋は絶対に売ってはいけませんよ。これは原種で、来年までとっておけば、また植えることができる。来年収穫する芋はすなわち種子で、生産量はこの3世代の中で最も多くなるから」。
このように話す曽明氏は、寧夏自治区科学技術庁から高台村に派遣された第一書記。貧困者支援チームのメンバーの陳建軍氏と李群氏を連れて、村のジャガイモ原種モデル拠点で村人たちに「授業」をしていた。
同村は同庁が貧困者支援で指定する極度の貧困村で、ジャガイモ栽培の歴史は古いが、これまでずっと低水準の発展しか遂げられず、低迷していた時期もあり、村の経済発展に深刻な影響を与えてきた。
2018年に海原県党委員会の徐海寧書記は全県産業経済視察会で、次のような問いを投げかけた。「科学技術による貧困者支援では、優位性があり特色があるジャガイモ産業の機械化、近代化、科学化された栽培をどのように実現するのか」。
この「課題」をめぐり、同村に駐在する同庁の作業チームは科学技術による貧困者支援の優位性を十分に発揮した。まず新しい品種、「青薯9号」と「冀張薯12号」を選んで導入することにし、同じ品種ばかり何年も栽培していた状況から瞬く間に改善させた。
同チームは昨年、同自治区科学技術進歩2等賞を受賞した「ジャガイモの対乾燥・節水・高効率栽培の重要技術の研究と集積モデルプロジェクト」の主要な成果を産業移転し、自治区全体で最も先進的な乾燥に対抗できるジャガイモ栽培技術を試験的に拡大し、節水であるとともに生産効率は30%上昇し、栽培コストは15%以上節約できた。
貧困者支援の難関攻略戦の勝敗を決する年に、同村は総作付面積の約80%にあたる4千ムー(約267ヘクタール)の面積で新品種を栽培する計画を立て、た。これが関荘郷と海原県にも普及拡大して栽培面積は1万ムー(約667ヘクタール)近くに及び、科学技術による貧困者支援のモデルケースとなった。
実際、こうした事例の「スター効果」が顕在化しつつある。
7月に入り、同村のジャガイモ原種モデル基地は活気にあふれていた。少し前から、海原県が派遣した総勢140人あまりの経済視察団が同村を訪れていた。
技術モデル運営 作付面積が10倍以上に
同村は同自治区が乾燥に対抗できる、質の高い、高効率のジャガイモ栽培技術モデルを推進する場所となっている。
同村のジャガイモが苦境を打開できたのには、2つの「秘訣」があった。1つは種まき、肥料の投入、うね立て、シートで覆うという「四位一体」の技術、もう1つはシートを土で覆う、プロセス全体が機械化された栽培技術だ。
同村はジャガイモ科学的栽培モデル普及産業ベルトを構築した。曽氏がスタッフを引き連れてあちこち見て回り、まるで自分の子どもを眺めるようにジャガイモを熱心に見守っている。
曽氏は、「種まきなど4段階の農作業プロセスで、小型の第20世代ジャガイモ栽培機械を利用して種まきが一気に完了する。これこそまさに『四位一体』だ。しかしここでは問題も生じる。シートがあって、ジャガイモの苗がシートの中に閉じ込められてしまうという問題だ。どうするか」と問いかけつつ、「人間が1本1本苗を植えていたら、機械化とはいえない」と笑った。
科学技術による貧困者支援指導員の陳彦雲氏のサポートを得て、同庁の駐高台村作業チームはシートを土で覆う技術を導入した。種まきから15~20日後、機械を使ってシートに3-5センチメートルの厚さで土をかける。半月ほどたつと、ジャガイモの芽が成長し膜を破って出てくる。除草、土寄せ、水分蒸発の防止なども同時にできるという。
これが自治区の科学技術進歩2等賞を受賞したプロジェクトの主要な技術革新のポイントで、これによりジャガイモ栽培の完全機械化が実現した。
自治区全体でのジャガイモの科学的栽培モデルの普及では、陳彦雲氏の功績を忘れるわけにはいかない。陳氏は寧夏大学生命科学学院の二級研究員だ。
陳氏は科学技術による貧困者支援指導員になると、15年から「青薯9号」と「隴薯3号」などの新品種の普及に努め、作付面積は累計で531万7千ムー(約35万4千ヘクタール)に上り、1ムー(15分の1ヘクタール)あたりの収穫量は平均1,535.2キログラムで、増産率は16.2%にも達した。
「四位一体」と「シート覆土」のほか、陳氏はジャガイモの標準化貯蔵技術の普及にも力を入れ、収穫時期以外の販売力を強化した。16年以降、貯蔵庫20万ヶ所以上を建設し、毎年50万トンを貯蔵してきた。
大まかな統計によると、同村の貧困世帯の科学的栽培・養殖による売上高は16年の1世帯平均約7千元(約10万7千円)から19年は1万2千元(約18万4千円)に増加し、貧困発生率は41%から0.72%に低下した。村全体に貧困から脱却するための着実な基礎が打ち立てられたといえる。
同庁党組織の郭秉晨書記(同庁庁長)は、「ジャガイモ栽培産業は効率の高い栽培を行い、貧困から脱却して豊かになり、農村を振興する基礎的産業だ。今後、私たちは管理能力とサービス水準を引き上げ続け、産業の持続的なモデル転換と高度化を誘導し奨励していく」と述べた。
※本稿は、科技日報「科技譲寧夏馬鈴薯産業実現逆襲」(2020年8月6日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。