第169号
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イノベーションで牽引―中国高速鉄道「八縦八横」7割完成

2020年10月14日 矯 陽(科技日報記者)

 9月27日、浙江・衢州と福建・寧徳を結ぶ衢寧鉄道が開通し、営業運転を開始した。秋の日差しの下、高速鉄道列車「復興号」は一路西へと向かい、これまで鉄道の通っていなかった浙江省の遂昌、松陽、竜泉、慶元と福建省の松渓、政和、屏南、周寧の8県・市を結んだ。2015年末、中国高速鉄道の営業キロは1万9,000キロとなった。「十三五(第13次五カ年計画:2016-2020年)」以来、鉄道建設は合理的かつ秩序のある推進がなされてきた。2020年末には、中国全土の鉄道営業キロは14万5,000キロ、高速鉄道3万8,000キロとなり、うち4万5,000キロの「八縦八横」と呼ばれる高速鉄道のメインフレームの操業開始規模は3万3,000キロ前後に達する見通しだ。

 2016年に発表された国家「中長期鉄道網計画」では、2030年までに「八縦八横」高速鉄道網の構築を完了させる計画となっており、現在、その主要ネットワークの7割が完成している。

近隣の大中都市まで1-3時間で到着

 9月14日0時、四川省簡陽。中国鉄建電気化局集団の作業員が成渝(成都・重慶)高速鉄道の供電用架線網全体のドロッパー交換作業を開始し、営業運転速度を時速300キロから時速350キロまで速めるための改造を終えた。国慶節(建国記念日、10月1日)以降、走行試験がスタートする予定となっている。

 全長308キロの成渝高速鉄道が時速350キロでの営業運転を実現すると、成都と重慶が「一時間生活圏」となり、成渝国家クラス都市圏の世界クラス都市圏への歴史的飛躍を促すことが見込まれている。

「九省通衢(九省に通じる)」の武漢は、滬漢蓉(上海・武漢・成都)高速鉄道、京広(北京・広州)高速鉄道、西武(西安・武漢)高速鉄道、武九(武漢・九江)高速鉄道、武杭(武漢・杭州)高速鉄道、武咸(武漢・咸寧)都市間鉄道、武石(武漢・黄石)都市間鉄道などの高速鉄道網を完成させている。武漢から周辺都市へはほぼ1-3時間で到着することができる。また、中国全土では他にも北京や上海、鄭州など全国および地域の中心都市で、「八縦八横」主要鉄道を骨格とし、異なる速度等級の地域連結線がつながり、都市間鉄道が補う形の高速鉄道網が出来上がっており、近隣の大中都市間を1-3時間で結ぶ交通圏と都市圏内を0.5-2時間で移動できる交通圏が実現している。

 急速に発展する中国高速鉄道は、中国人の移動方法を変えつつある。2020年末には、中国全土の高速鉄道網は100万人以上の人口を有する都市の94.7%をカバーすると見られている。

世界の高速鉄道建設・運営の新たなベンチマークに

 2020年7月1日、中国が独自に設計・建設した、世界初の千メートル級の主スパン長を誇る滬蘇通長江公鉄大橋が完成し、滬蘇通(上海・蘇州・南通)鉄道の営業運転開始と同時に開通した。これは、中国が千メートル級超大型スパン橋梁の建設技術を習得したことを示している。中国国家鉄路集団有限公司(以下、国鉄集団)副チーフエンジニア兼建設部主任、工程監督局局長の王峰氏は、「滬蘇通大橋の設計・建造技術は5つの『世界初』を実現し、中国ひいては世界の鉄道橋梁建設史においてマイルストーン的な意義がある」と述べた。

 これより前の2017年9月21日、高速鉄道列車「復興号」が京滬(北京・上海)高速鉄道でいち早く時速350キロの営業運転を行い、世界の高速鉄道営業運転最高速度を記録し、世界の高速鉄道建設・運営における新たなベンチマークとなった。その後、時速350キロ級17両長編成、時速250キロ級8両編成、時速160キロ級動力集中型など多くの新型高速鉄道列車「復興号」の研究開発に相次いで成功し、営業運転が行われるようになった。

 2016年以来、中国の鉄道は企業を主体とし、科学研究機関と大学が広く参加し、産学研用が緊密に結びつき、協同でイノベーションを達成する鉄道科学技術革新体系を構築し、独自のイノベーションへの道を確固として歩み、コア技術の独自革新と産業化応用の推進に力を注ぎ、復興号など一連の重大科学技術イノベーションの成果を上げ、中国の高速鉄道技術は世界をリードするレベルとなり、複雑な交通網条件下での長距離運行に適した高速鉄道運営管理技術を全面的に開発し、異なる速度等級をカバーする成熟した完全な高速鉄道技術体系を構築してきた。

スマート鉄道技術革新でリードを実現

 2020年9月16日、北京と河北省雄安新区を結ぶ京雄都市間鉄道が走行試験を開始した。

 京雄都市間鉄道は全長106キロ、設計時速350キロで、新時代における中国高速鉄道建設のベンチマークとして、また模範として称えられている。京雄都市間鉄道指揮部指揮長の楊斌氏は、「この高速鉄道は中国全土の鉄道建設において初めて全線、全専門分野、全過程でBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)技術を採用し、バーチャル建設を実現させた、デジタルによって生まれた鉄道だ」と話す。

 これより前の2019年12月30日、世界初のスマート高速鉄道である京張(北京・張家口)高速鉄道が世界で初めて時速350キロの自動運転を実現した。

「十三五」期間、国鉄集団は「スマート京張」や「スマート京雄」などの重点プロジェクトにより、スマート建設、スマート装備、スマート営業運転の技術革新を大いに推進し、スマート鉄道技術体系、データ体系、基準体系を概ね構築した。また、完全なBIM技術基準体系を確立し、BIMをベースにした鉄道工事協同設計体系の構築に成功し、多くの専門分野のBIM一体化設計プラットフォームを研究開発し、実地調査・設計マルチソースデータの融合を実現し、組立式建築設計とモジュール化製造技術、デジタル化鉄道建設技術を研究・確立した。


※本稿は、科技日報「創新引領 中国高鉄"八縦八横"已建七成」(2020年09月30日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。