第170号
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スマートファクトリー構築の上で忘れてはならないプロセス業界

2020年11月17日 劉園園(科技日報記者)

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画像提供:視覚中国

 2020年は新型コロナウイルスの襲来を受けたものの、中国国内のスマートファクトリーは依然として急速に発展を続けている。報道によると、10月27日、自動車メーカー・上汽大衆が総額170億元(約2,700億円)を投じた新エネ車・スマートファクトリーが本格的な操業を始めた。自動車のほか、家電、デジタル電子などの分野のスマートファクトリーも登場し続けている。しかし専門家は現時点で、スマートファクトリーは主にディスクリート業界に集中しており、プロセス業界のそれは依然として少ないと指摘している。

 このほど開催された製造プロセス物理システム・スマート化にスポットを当てた香山科学会議第682回学術シンポジウムの会期中、鉄鋼研究総院の名誉院長を務める中国工程院の殷瑞鈺院士は筆者の取材に対し、「現在、インダストリー4.0が反映している内容のほとんどはディスクリート業界と関係があり、プロセス業界と関係があるものはとても少ない。プロセス業界にはそれなりの法則がある」と述べた。

国民経済の中で大きな影響を持つプロセス業界

 では、ディスクリート業界、プロセス業界とは何を指すのだろう?

 殷院士は、「製造工業は、ディスクリート業界とプロセス業界の2つに分けることができる」と説明する。

 このうちディスクリート業界には、設備・加工・製造業が含まれる。例えば、自動車製造、航空機製造などで、異なる部品を組み立てたり、組み合わせたりして製造する。一方、プロセス業界は、冶金工業、化学工業、建材工業、製薬工業などで、この種の業界は、各製造工程を分けるのではなく、連続して進め、工程の片側は資源やエネルギーと繋がっており、もう片側で製品が出来上がっていく。その製品は直接使うこともできれば、さらに加工することもできる。

 殷院士は、化学工業、冶金、建材などのプロセス製造業の製造プロセスにおける動的運行プロセスの物理的本質を、「物質フローが、エネルギーフローの駆動、働きの下、設定された"プログラム"、例えば、生産、作業の指令などに基づいて、特定の『プロセスネットワーク』に沿って、動的で秩序だって運行することで、製品を生産するだけでなく、多数目的最適化を実現する」と説明する。

 そして殷院士は、「プロセス業界は、化学的変化、物理的変化、輸送、情報交換などと関係し、さらに、大量のエネルギーを使用する。例えば、石油化学工業の製造環境は、300‐400度の高温に、また製鋼、製鉄のそれは1,500‐1,700度の高温になる」としている。

 殷院士は「プロセス業界のほとんどは基礎業界で、国民経済全体に影響を及ぼす重要な役割を担っている。しかも、プロセス業界は物質、エネルギーの入力・出力に及ぶため、生態環境への影響も非常に大きい」と指摘する。

スマート化の実現にはモデル、データの下支えが必要

 中国工程院院士で中国石化集団公司科技委員会顧問の袁晴棠氏は、「先端製造技術と情報技術の深い融合推進、プロセス製造業のスマート化に向けた発展の推進を加速させるために、中国工程院は『2035年に向けたプロセス製造業スマート化目標、特徴、ルート戦略研究』コンサルティング研究プロジェクト』を制定し、典型的なプロセス工業である鉄鋼と石油化学を研究対象に選び、プロセス製造業のスマート化に向けた発展目標とアプローチを研究、提起している」と説明する。

 シンポジウムに参加した専門家は取材に対して、「中国国内の鉄鋼、石油化学などのプロセス業界の自動化水準は高く、スマート化のための良好な基礎がある。しかし、プロセス業界のスマート化は、依然として課題が山積みだ」と指摘した。

 殷院士は、「物理システムをどのようにうまく調整するのか、情報システムをどのように物理システムの中に盛り込むのかなどは、テクノロジーのウェイトが高い課題で、モデル、データ、感知デバイスなどによる下支えが必要だ。鉄鋼業界を例にすると、まず、鉄鋼工場のプロセスネットワーク構造はさらに最適化しなければならない。そして、物質フローやエネルギーフロー、情報フローなどのネットワークをさらにうまく調整し、それら三者を協働させなければならない。それと同時に、モデリングやソフトウェアの能力を向上させ、各種プラットフォーム、ネットワークを集約する必要がある。それらを工場の工程設計、生産運営、管理、意思決定などに反映させるためには、先端技術の下支えが必要だ」との見方を示す。


※本稿は、科技日報「打造智能工廠別忘了流程行業」(2020年10月28日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。