第171号
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常州市武進区:オンラインでダイレクトに大学研究成果を企業に提供

2020年12月25日 過国忠(科技日報記者)常 森(科技日報実習生)

江蘇省常州市武進区の大学・企業連携プロジェクトが5年で197件に

 南京理工大学の産業用ロボットオンラインセルフキャリブレーション技術・装置、西安交通大学の超臨界水酸化技術によるフェノール含有廃水処理、揚州大学の沿海大型水利ターミナルプロジェクト耐浸食性・高効率施工のキーテクノロジー......。江蘇省常州市武進区技術移転センター(以下「武進区技術移転センター」)の大学研究成果プロモーション公益サービスオープンプラットフォーム(以下「オープンプラットフォーム」)上で、それら中国国内の大学が提供する最新技術、科学研究成果500件以上が、企業を対象に無料で発表・展示されている。

 南京理工大学の産業用ロボットオンラインセルフキャリブレーション技術・装置のキャリブレーションはプロセスの全自動化しており、手動操作は必要ない。位置フィードバッククローズドループを通して、精度の高い位置決め制御が可能で、オンラインロボットキャリブレーション機能が有効であるため、実験室(ロボット製造企業)、ロボット生産ライン(ロボット応用企業)、工場などで活用できる。取材を進めると、武進区の企業と大学が、成果実用化の意向を示したり、既に提携したりしているケースがあることが分かった。

 12月2日、武進区技術移転センターの孫偉明・常務副センター長は取材に対して、「ここ5年、当センターは、産業チェーンとイノベーションチェーンの『双方向融合』をテーマに、各種産学研マッチングイベントを281回企画した。招へいした専門家は延べ850人、サービス企業は800社以上で、契約調印に至った各種産学研提携プロジェクトが197件、契約額は計7,840万元(約12.5億円)に達している」と説明した。

オンライン・オフラインインタラクティブプラットフォームを構築

 孫常務副センター長は、「オープンプラットフォームは、産学研連携のスタイルと協力メカニズムをイノベーションすることで、南京理工大学技術移転センターが日常の管理を担当し、区科学技術協会、区科技局が業務主管機関の新型テクノロジーサービス機関、大学の研究成果を武進区で応用、実用化することに従事する公益サービスプラットフォームだ」と説明する。

 武進区技術移転センターは、既に、浙江大学、四川大学、西安交通大学、西北工業大学、江南大学など、21大学の技術移転サブセンターを招致し、大学の豊富な科学技術イノベーション資源の優位性を活用して、大学の研究成果、人材チームを統合し、オンラインとオフラインを結び合わせた「インターネット+技術マネージャー+大学テクノロジー人材資源」の一体化インタラクティブ・プラットフォームを打ち出して、地域の中小企業に優良で便利、かつ高い精度でマッチングできる技術移転・技術サービスを提供している。

 常州市武進区政治協商会議の副主席を務める、科学技術協会の劉雲英会長は、「武進区技術移転センターは、区全域で、産学研連携を展開する重要なプラットフォーム、キャリヤーになっただけでなく、大学と企業を繋ぐ架け橋でもあり、技術移転専門のサービスチームが集まり、企業のモデル転換と高度化、地域経済の質の高い発展を後押ししている」との見方を示す。

 孫常務副センター長は、「当センターは毎週、企業を訪問し、さまざまなニーズを把握し、方向性を絞って大学や専門家チームを選び、プロジェクトを集め、厳選し、大学と企業のマッチングイベントを企画し、研究成果の実用化の『ラストワンマイル』をゴールへと繋いでいる。また、大学と企業が共同で大学院連携拠点、大学生実習訓練拠点などを設置するよう企画することで、大学と企業の人材育成・訓練、知的財産権・テクノロジー情報などの総合サービスを展開し、イノベーションをめぐる政策を一歩踏み込んで宣伝している」と説明する。

研究成果情報を絶えず提供

 今年は新型コロナウイルスの影響で、数ヶ月間、武進市の企業や専門家が出入りできない状況が続いた。武進区技術移転センターは、企業の立場に立った取り組みをして、勤務スタイルを刷新し続け、オープンプラットフォーム上に、オンラインテクノロジー「ダイレクト」サービスを設置し、クラウド上のサービスは"閉店しない"ことで、研究成果情報を絶えず提供し、専門家が自宅にいながらいつも通り提携できる企業を探すことができるように取り組んだ。

 揚州大学は武進区技術移転センターにサブセンターを設置して以降、オンラインとオフラインで活発に活動し、産学研連携の技術開発に成功しただけでなく、研究成果の実用化も順調に実現したうえ、江蘇省外でも利用されている。

 揚州大学機械工学院の繆宏教授と江蘇常発農業装備股份有限公司(以下「常発農業」)は江蘇省研究成果実用化特定資金プロジェクト・自動運転機能搭載のスマートトラクター研究開発・産業化を共同で実施した。双方はプロジェクトをめぐる難題解決に共同で取り組み、さまざまな動作状態に適応する動力システム・運転モードを既に完成させ、さまざまな運転モードの切り替えコントロールを実現し、電子制御、ドラフト・位置調整高度化システムの研究開発に成功した。そして、過酷な環境・作業モード強結合の自動適応を実現した。また、さまざまな地形、地域の電波の自動運転システムに的を絞って、適応性開発を行い、自動運転システムのアップデートを実現し、スマートコントロールシステムを最適化した。同プロジェクトの特許出願数は9件、うち、発明特許が6件となっている。また、ソフトウェアの著作権2件も取得した。

 常発農業の関係責任者は、「このスマートトラクターは、江蘇省農業機械試験・鑑定ステーションの検査をクリアして以降、産業化が進み、黒竜江省や吉林省、新疆ウイグル自治区、甘粛省、河北省、河南省、広西チワン族自治区などで応用されている。現時点で、販売台数は631台で、売上高は1.3億元(約20.8億円)に迫っている」と説明する。

 武進区科技局の李婷局長は、「武進区技術移転センターは、区政府が支援する非営利産学研サービス機関で、今後は大学と企業連携の形式を増やし、さまざまな角度から、サービスコンテンツの拡大に着手し、大学と企業が共同体を構築するよう積極的に推進し、省・部級の重点実験室設備・器具・資源のシェアを促進し、産学研連携のレベル、効率をさらに向上させる計画だ。また、同センターは、地方で重点的に発展が促進されている新興産業に焦点を当てて、中小規模のマッチングイベントや指導イベントを企画・展開し、さらに多くの新技術、新成果が区内で移転、実用化されるよう促進し、テクノロジーが質の高い発展を下支えする役割を強化したい」と語る。


※本稿は、科技日報「線上"直通車"送高校成果進企業」(2020年12月7日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。