第171号
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北京のAI専門職、職称申請が可能に

2020年12月07日 華 凌(科技日報記者)

「論文のみによる評価」から「複数成果による評価」へ

 11月6日、北京市人力資源・社会保障局は人工知能(AI)専門職の職称(公的に定められた職務のランクおよび資格の名称)を新たに増設するとの文書を出し、職種別の評価基準を正式に発表した。第1回のAI専門職称評価は2021年初めに始まる予定となっている。

 AIは未来をリードする戦略的技術であり、中国の新たな産業変革の核心的駆動力でもある。近年、AI技術の広範な開発・応用にともない、全国の科学技術イノベーションの中心である北京ではAI分野の人材に対するニーズが大幅に高まっている。

 同日、北京市人力資源・社会保障局が発表した「北京市エンジニアリング系(AI)専門技術資格評価試行規則」によると、職称評価の過程において「代表作」による評価審査を採用し、人材評価の方法が「論文のみによる評価」から「複数の成果による評価」へと変わり、人材が本当の意味で「やったことを評価」してもらえるようになった。

誰が申請できるか:北京地区のAIエンジニアリング人材をカバー

 AIとは、コンピューターに人の思考プロセスと知的行為を代行させることを研究する学問であり、コンピューター科学やサイバネティックス、オートメーション化、生体工学、心理学、論理学、医学、言語学など多くの学問に関わる。その研究成果は教育芸術や医療診断、金融貿易、工業製造、新小売(ニューリテール)、物流輸送、農業科学技術、自動運転技術などの分野に広く応用され、首都の「新インフラ建設、新シーン、新消費、新開放、新サービス」産業発展における重要な構成要素となっている。

 AIエンジニアとは、AIアルゴリズム技術の研究開発とシステム設計・応用に従事するエンジニアを指す。彼らは概して比較的高い学歴や専門技術能力を持つが、新興で複数の学問にまたがる分野であるため、適切な職称等級の昇級ルートや規範化された業界資格評価基準がなく、技術交流協力や人材のキャリアアップに影響が及んでいた。

 今回、AI専門職称を設けてエンジニアリング系職種に組み込み、正高・副高・中級・初級の4つの等級を設置したことで、北京地区の各等級AIエンジニアのキャリアアップのニーズを満たし、AI産業の発展と全国の科学技術イノベーションセンターの建設にとって力強い人材サポートが提供されることになる。

何を評価するか:2つの職種カテゴリーの業績条件をそれぞれ設定

 AI専門職称の評価は4等級全て評議審査方式で行われ、北京市の職称制度改革深化の要求に基づき、申請者をAI研究とAI応用の2つの職種に分類し、職称申請に必要な基本条件のほか「やったことを評価」する方式で、上記2つの職種の業績条件をそれぞれ設定する。

「正高級」職称に申請する場合を例にすると、AI研究に従事する申請者は、高い研究能力を有していることが求められる。具体的には「省・部級以上のAI分野研究プロジェクトや課題を主管した▽または国や省・直轄市または業界のAI分野発展計画や重大戦略決定など関連政策・基準・規範を策定した▽または発表した研究成果がAI分野の発展を促進し、著しい経済・社会効果をもたらした」となっている。

 一方、AI応用に従事する申請者は、高い生産・技術管理実践能力を備えていなければならない。具体的には「技術革新や新技術の導入・普及などの面で重大な飛躍的進歩を実現した▽または高難度で複雑なAI分野の新製品や新設備、新製造技術などを研究開発し、すでに生産が開始された▽または所属先のAI工程プロジェクトの計画と実施が完了し、プロジェクト管理、科学研究開発、技術普及・応用などで著しい成果を上げ、顕著な経済・社会効果をもたらした」となっている。

 そのほか、北京市は顕著な業績をあげた人材に対して特例申請者条件も設けている。申請者が特例申請の条件を満たしてさえいれば、学歴やキャリア、現在属している等級に関わらず、直接「副高級」職称を申請できる。

 AI専門職称の評価作業は「論文のみ評価対象とする」方法による制約から脱し、代表作評議審査制度を全面的に実施する。申請者は発明特許や技術報告、研究報告、設計文書、技術基準、専門論文、専門著書・編著などから、最も自分の能力レベルを示せる代表的な成果を自分で選んで職称評議審査に参加することが可能になる。

どう申請するか:職称申請の全過程をオンラインにて実施

 今回のAI専門職称評価作業では社会的評価を実施し、「個人による申請、業界による統一評価、事業者による優秀者選抜雇用、政府による指導・監督管理」の方法により毎年1回実施する。そのうち「正高級」の評議審査は北京市人事査定弁公室が、「副高級」以下の評議審査は北京情報産業査定サービスセンターがそれぞれ実施する。

 毎年1月、北京市人力資源・社会保障局は全市の年度職称評価作業スケジュールを発表し、申請者は「北京市エンジニアリング系(AI)専門技術資格評価基本基準条件」で申請する等級の要求を確認し、年度評価作業スケジュールを参照して、北京市人力資源・社会保障局のサイトから申請を行う。評議審査機関のオンライン一次審査、所属先の推薦公示、評議審査機関のオンライン二次審査・代金支払い、口頭試問、検証・公示などの流れを経て、申請者は北京市AI専門職称証書を取得し、雇用先は必要とするポストに応じて優秀な人材を選抜し、専門技術職に採用することができる。


※本稿は、科技日報「北京人工智能専業 可以評職称了」(2020年11月11日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。