玉渓ハイテク産業開発区:雲南・水の街に築かれるイノベーションの先端地域
2021年03月15日 趙漢斌(科技日報記者)
企業が新製法と新技術を駆使して、製品を改良し新しい製品を開発し、高いブランド価値を創造し、モデル転換によって向上を促進し、バージョンアップによって上昇を促進するよう誘導することによって、玉渓高新区は競争の中で絶えず発展し強大になることができた。(李世華 玉渓市科学技術局局長)
雲南省玉渓市にある玉渓高新区は優位性をもつ企業を集積し、「国家たいまつ計画玉渓高新区バイオ医薬品特色産業拠点」の建設に力を入れている。写真は高渓高新区ワクチン産業パークにある企業のパッケージライン。(筆者撮影)
1月13日、科学技術部(省)たいまつセンターが「2020年度国家たいまつ計画特色産業拠点の再審査結果の公表に関する通知」を発表し、「国家たいまつ計画玉渓ハイテク産業開発区(高新区)バイオ医薬品特色産業拠点」の建設状況について再審査を行い、雲南省の玉渓国家ハイテク産業開発区が引き続きこの名称を使用することに同意した。
玉渓高新区はバイオ医薬品産業を含む多くの分野で目を見張る成果を上げた。中国で2番目の23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチンと初めての13価肺炎球菌結合型ワクチンは、玉渓高新区ワクチン産業パークで誕生した。中国最大のLED用サファイア結晶の形成や加工、サファイア基板の研究開発生産拠点は、雲南省玉渓市の紅塔工業パークにある。中国で最も先進的なスマートエアソースヒートポンプ乾燥機とその制御技術の研究開発拠点も玉渓高新区にある......
このほか、玉渓市政府、中南大学、雲南省科学技術院など複数の組織の協力枠組合意がこのほど調印されたのにともない、年間売上高100億元(約1,600億円)を超え世界トップレベルの技術を擁する鉄・ニッケル・リチウム系のリチウム電池材料プロジェクトも玉渓高新区で実施されることになった。
かつて「雲霞の里」として世界に知られていた雲南省の水郷・玉渓が、今ではイノベーションを中核として、次々に飛躍を達成し変貌を遂げている。
優位性ある産業を上位に押し上げるイノベーション
玉渓高新区ワクチン産業パークに足を踏み入れると、雲南沃森生物技術股份有限公司の11万平方メートルに及ぶ近代化されたバイオ医薬品製造現場のクリーンで明るい様子が目に入る。ここでは現在、各種のワクチンを年間1億5千万回分以上生産している。
沃森生物の関係責任者は、「沃森生物の製品の品質登録基準は欧州連合(EU)の基準を全面的に達成しており、一部の指標はEU基準より高い。生産技術と製法、生産設備と工場施設は欧米の多国籍企業と同等のレベルにある」と述べた。
同責任者は、「私たちは15年間にわたり取り組んできた。2020年、当社はついに多国籍企業の独占状態を打ち破り、中国の子どもたちに国産の13価肺炎球菌結合型ワクチンを接種することができた。研究開発とイノベーションを中核の駆動力とし、『全面的国際化、インダストリー4.0、輸入代替』を戦略目標として確立した沃森生物は、これまでに7種類のワクチン製品を中国国内で生産・販売していると同時に、ワクチンの原液を米国に輸出し、製品はエジプト政府の免疫プランに組み込まれた。
2020年12月21日、中国初の新型コロナウイルスのmRNAワクチン生産現場が玉渓高新区で基礎を打ち立てた。プロジェクト投資額は2億8千万元(約44.8億円)に上り、予定では8ヶ月以内に完成して生産を開始し、第1期計画では年産能力が1億2千万回分に達する。
玉渓高新区は医療・健康分野の発展チャンスをつかみ、企業の主体性を際立たせ、要素面の保障を向上させ、政策による誘導を強化し、竜泉エリアに雲南省先端医療機器産業パークを建設する計画だ。このプロジェクトでは都市部の医療・ヘルスケア産業構造をアップグレードさせ、優れた企業をより多く誘致して入居させ、研究開発、生産、展示販売、オフィス、物流・倉庫、生活などの機能が一体化した多様なハイテク産業パークを構築することを目指す。
現在、玉渓ハイテクパークにはバイオ医薬品産業の企業20数社が集まり、バイオ医薬品が主導し、健康食品が補完し、医療機器がバックアップする産業発展構造がほぼ形成されている。玉渓高新区管理委員会は総合健康の産学研協力も積極的に推進し、高新区の外にあるテクノロジーイノベーションを十分に統合し、昆明理工大学、雲南大学、雲南省生態農業研究所、華南理工大学などの大学・研究機関と幅広く協力を展開し、優位性ある産業の発展のポテンシャルをさらに明らかにした。
パーク内企業を競争の中で絶えず強大にするイノベーション
中国の設備製造業はミドル・ハイクラスへ突き進む歩みが加速しており、デジタル工作機械産業に新たなチャンスをもたらした。目下、玉渓高新区研和工業パークにある雲南太標精工鋳造有限公司と雲南太標デジタル工作機械有限公司も、資源を急速に統合し、産業配置を調整し、10億元を投資してデジタル工作機械用の基礎的な鋳物部品のサプライチェーン全体の能力を引き上げるプロジェクトを実施し、工場の改修・リニューアル工事が終わりに近づいている。
雲南太標精工鋳造有限公司と雲南太標数控機床有限公司の査雲偉社長は、「このプロジェクトは『クラウド+ネット+工場』の次世代スマート工場アーキテクチャに基づき、工業化と情報化の深い融合を実施し、自動造型機、3Dプリンター、産業用ロボット、フレキシブル生産などのスマート設備を総合的に応用し、モノのインターネット(IoT)の構築を通じて業務の集積を実現し、ヒトと設備、システムをつなぐデジタルルートを統合し、ビッグデータの高効率の協働を実現する。プロジェクトが完成すると、年産16万トンのデジタル工作機械の鋳物部品と関連の小型部品の鋳造・加工能力を達成して、売上高は28億元(約448億円)を達成し、新たに1,500人の雇用を生み出すことができる」と述べた。
一方、雲南藍晶科技股份有限公司は、単結晶の成長の重要生産設備と結晶の成長技術を独自に開発した。雲南維和薬業公司はこのほど研究開発を経て新たな製造プロセスルートと設備の集積プランを形成し、高い品質の「三七」シリーズ製品を開発した。雲南克雷斯製薬股份有限公司は、著しい治療効果が期待される、国が認可した薬品を開発し、発展に向けた活力が十分にある。玉渓建福集団工作機械有限責任公司は改革に大いに力を入れ、デジタル制御のボール盤を開発し、生産能力は従来の3倍以上に拡大した。雲南前列電纜有限公司の年産3千キロメートルのレアアース高速鉄道用アルミニウム合金ケーブル生産プロジェクトは、「アルミニウムによる銅の代替」技術の難関を突破した......
このほか、玉渓市科学技術局の李世華局長は取材に対し、「雲南玉渓玉昆鋼鉄集団有限公司の金属精錬固体廃棄物総合利用プロジェクトでは、世界最先端のメルツ炉技術を採用し、金属精錬用石灰の質を高めた。活発集団の日産5千トンの新型乾式法セメント生産ラインプロジェクトは次世代の先端製法・設備、次世代システムの省エネ・汚染物質排出削減技術の装備・設備を利用して、資源の総合利用の水準を引き上げた」と説明した。
李氏はまた、「企業が新製法と新技術を駆使して、製品を改良し新しい製品を開発し、高いブランド価値を創造し、モデル転換によってアップグレードを促進することによって、玉渓高新区は競争の中で絶えず発展し強大になることができた」と述べた。
ビジネス環境を絶えず最適化するイノベーション
こちらでは工場の建設がスタートしたばかり、あちらでは製造ラインの上を各種の酸素ボンベが水のように流れ、積み上げられ箱に入れられ、標高の高い観光スポットや大手スーパーマーケットチェーンに運ばれていく。同時に、医療衛生機関にも臨床用の酸素を提供し、家庭などでの療法として酸素を使用する場所へも酸素療法サービスを提供する。
このような状況の玉渓西美西節能減排服務有限公司の陳銘瑞子会長は取材に、「当社の母体はもともとここにはなかったが、玉渓市政府が素晴らしい誘致政策を打ち出したので、それに応じてやって来た。これまでに3万5千平方メートルの第一期工業標準の工場、6千平方メートルのオフィス用建物とテストセンターが完成している。当社は先進的な膜分離方式の酸素発生技術を採用し、すでに玉渓に年産2億立方メートルの高純度酸素製造拠点を完成させた」と述べた。
西美西のプロジェクトはハイテク研究開発・生産センター建設プロジェクトとして、雲南省の技術の空白を埋め、中国の医療用酸素供給と酸素を利用したヘルスケア事業の川上から川下に至る健康産業構造の調整を推進することになる。
玉渓高新区管理委員会の姚翔会長は、「パークのイノベーションの思想や理念は、企業誘致と資本導入の逆境を跳ね返し、バイオ医薬品と総合健康、設備製造と新エネルギー・新材料、デジタル経済のインターネットと電子情報などの産業をめぐり、企業の誘致と選定を行った。2020年1-10月、企業誘致プロジェクト約11件が新たに調印され、新規着工プロジェクトは17件、完工した1億元以上の規模のプロジェクトは7件に上った。すでに玉渓に進出した昆明長長氫科技有限公司の『高バイパス比ターボファンエンジン』ドローン、北方嘉科印務公司のパッケージ印刷などのプロジェクトが調印・実施され、京東(玉渓)新経済産業パークが順調にオープンし、雲南聯通玉渓データセンターと玉渓市敏華達科技有限公司によるチップ部品の表面実装(SMT)プロジェクトもすでに工事が終了した」と述べた。
玉渓高新区は、国、省、市、パークが打ち出した企業誘致・資本導入政策も実施し、テクノロジーのウェイトが高く、産業チェーンが長く、市場の見通しが明るいプロジェクトについては、「プロジェクトごとに検討」し、それぞれにふさわしい支援奨励措置を採用する。同時に、「散・乱・汚企業(技術力が低く、バラバラに分布し、汚染度が高い企業)のガバナンスを強化し、環境への違法行為でたびたび監督を受けたり摘発されたりする者は厳格に管理し処分を重くする。遊休地を整理し、土地ストックを活用し、遊休地、稼働していない工場、ゾンビ企業の整理整頓に力を入れる。パークの安全監督管理を統一的に計画し、紅塔区の緊急管理との協調協力を強化し、安全な生産のための防衛ラインを堅固に構築する。
玉渓高新区管理委員会は「1対1」の企業サービス作業チームを発足させ、重点プロジェクトの各行政審査の段階において、企業に業務のコンサルティングと指導を提供する。ルートと資源を統合し、立体的で体系的なサービスシステムを構築し、企業に全方位的にサービスを提供する。企業が従業員の宿泊、電気・水道使用などの問題を解決するよう迅速にサポートし、企業の仮設住宅建設や現場のゴミ処理などをサポートし、「審査項目が少なく、作業効率が高く、サービスの質が高く、人々の満足感が強い」という一流のビジネス環境を着実に構築する。
2020年、玉渓高新区は前年同期比6.5%増の域内総生産額530億元(約8,480億円)を達成した。一定規模以上の工業企業(年売上高2,000万元以上の企業)の総生産額は同4%増の700億元(1兆1,200億円)で、一定規模以上の工業企業の付加価値額は5%増の435億元だった。
※本稿は、科技日報「雲南玉渓高新区: 在滇中水城築起創新高地」(2021年1月21日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。