武漢東湖ハイテクパーク:光谷科学技術イノベーション大回廊の「輝く宝石」
2021年05月10日 劉志偉(科技日報記者)
東湖ハイテクパークの未来科技城(画像提供:取材先)
「効率的なペロブスカイトを使った太陽電池の研究は、湖北光谷実験室グループの4大任務の1つだ」。3月4日午前、手のひらに乗せた親指ほどの大きさのペロブスカイト電池を見せながら話す華中科技大学の韓宏偉教授の言葉から大いなる希望を感じることができた。
湖北省武漢市は、「七大湖北実験室」の建設を計画しており、うち5ヶ所は、武漢光谷(オプティカルバレー)と呼ばれる武漢東湖新技術開発区(以下「東湖ハイテクパーク」)に設置される計画だ。
武漢市党委員会常務委員を務める東湖ハイテクパーク党工作委員会の汪祥旺書記は、「20年前に『中国光谷』が発足した時と同様の大きなチャンスであるので、これを逃すことがないよう、しっかりと掴まなければならない」と話す。
一連のイノベーション戦略を制定し、光谷の発展のロードマップを描き出す
東湖ハイテクパークは2月20日に「第14次五カ年計画」期間中の光谷の計画および2035年までの長期目標を発表した。科学技術イノベーション、産業発展、産業と都市の融合発展の3つの発展任務をめぐり、経済、イノベーション、改革、生態、民生、党組織建設、都市管理などの視点から、光谷の今後5年のイノベーション発展のロードマップを制定した。このうち、イノベーションによる牽引が、光谷の質の高い発展の最重点課題である。
中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議では、「イノベーションが現代化建設の全局面における中心的地位を堅持し、テクノロジー・自立・自強を国家発展の戦略的下支えとする方針を堅持する」ことが強調された。また、中央経済政策会議でも、科学技術イノベーションの重要性が再び強調され、国家戦略において、テクノロジーの力を強化することが、今年の8つの重点任務の最上位に置かれた。
2020年7月、中国国務院は30年ぶりに、国家ハイテクパークの質の高い発展を促進するための特定政策を打ち出し、国家ハイテクパークがイノベーション主導で発展するモデルエリアと質の高い発展の先行エリアの構築をサポートするとした。中国科技部(省)は、「基礎研究10年行動」を実施して、国の意志を体現し、国のニーズにサービスを提供し、国家レベルを代表する「テクノロジー精鋭部隊」を構築するとした。
春節の連休明け初日となった2021年2月18日、湖北省党委員会と省政府は、ハイレベル科学技術イノベーション大会を開催し、「省全体のイノベーションの展開を強化し、東湖科学城(科学都市)を中核とした光谷科学技術イノベーション大回廊の建設を加速させ、科学技術イノベーションの波及力を強化する」と明確に打ち出した。
省党委員会と省政府は、高い基準で計画を策定し、東湖ハイテクパークを建設し、武漢東湖総合的国家科学センターの構築を目指し、世界的な影響力を持つ科学技術イノベーションの発信地を作り上げると、何度も強調している。
武漢市党委員会と市政府は、イノベーション主導の発展戦略を「8大戦略」の最上位に掲げ続け、国家科学技術イノベーションセンターの建設に全力を尽くしており、東湖科学城の建設を加速し、光谷科学技術イノベーション大回廊のハイレベルなサポートゾーンを構築するよう要求している。
4,000億元の大台を目指し、GDPの倍増を実現へ
汪書記は、「科学技術イノベーションの面で、湖北省と言えば武漢、武漢と言えば光谷を置いて他にない。光谷はサポートインフラが強固で、ファースト・ムーバーズ・アドバンテージが明らかで、戦略設計も集中している」と説明する。
2000年春、半導体電子デバイスや光パッシブデバイス、光ファイバーセンサー技術の研究に長年力を注いできた華中科技大学の黄徳修教授が、武漢市政府に初めて進言するとともに、武漢市科学技術委員会に「武漢東湖新技術開発区に『中国光谷』を建設することに関する意見」を提出した。
同年3月、許其貞氏ら全国政協委員13人が、全国政治協商会議第9期第3回会議で、有名な「1331号提案」を打ち出し、武漢に「中国光谷」を建設することを提案した。そして同年5月には、楊叔子氏や熊有倫氏、趙梓森氏、周済氏ら、武漢市に在籍する院士26人が、連名で署名し、党中央と国務院に対して、武漢に国家級光電子情報産業拠点を建設することを認可するよう要請した。
2001年、東湖ハイテクパークは、国家光電子産業拠点の認可を正式に受け、こうして「武漢·中国光谷」が誕生した。
「武漢·中国光谷」は、多くの人々の期待通り、独自イノベーションを通して、光電子情報などの産業において、一連のブレイクスルーを実現し、2009年12月には北京中関村に続く、中国で2ヶ所目の国家独自イノベーションモデルエリアとなった。
20年の努力を経て、東湖ハイテクパークは既に、国家級ハイテクパークの先頭集団に仲間入りしている。2019年、パーク全体の国内総生産(GDP)は、武漢市各行政区(機能区)において、トップとなり、初めて名実ともに「旗振り役」となった。
2020年、東湖ハイテクパークは、新型コロナウイルス、水害、そしてポストコロナの回復という闘いの全てに勝利し、世界的な流れをよそに5.1%のプラス成長を実現し、GDPは2,000億元(約3.38兆円)の大台に突入した。そして、市の先頭を走り、市全体の6%しか占めていない面積で、12.8%に迫る経済寄与率を達成した。
「第14次五カ年計画」の1年目となる今年のスタートラインに立ち、光谷のGDPは今後5年で倍増し、4,000億元の大台突破を目指す。その他、「第14次五カ年計画」期間中、東湖ハイテクパークの研究開発費の割合は10%以上に達し、発明特許取得量は倍増し、ハイテク企業の数は1万社を超える見込みだ。
汪書記は、「『第14次五カ年計画』期間中、光谷は、産業基礎の高度化、産業チェーンの現代化をめぐり、さらに多くの実力ある大企業、強い企業、ハイテク企業を育成する。また、光電子、半導体、液晶パネル、情報端末、ネッ トワーク技術、バイオ医薬品、医療器械などの重点領域にスポットを当て、光電子情報、ヘルスケアの2大支柱産業を大きく、強くすることに力を注ぎ続け、デジタル化、ネットワーク化、スマート化の発展の流れについていき、実体経済がデジタル化へと舵を切るよう促進し、デジタル経済と新消費が踏み込んで融合するよう推進し、先手を打って人工知能や航空宇宙情報、量子テクノロジー、脳科学などの未来産業の基盤を固め、先端、ハイクオリティ、効率的な現代産業で質の高い発展を促進するよう取り組む」としている。
ハイレベルの企画・展開で「世界の光谷」建設へ
2月22日、湖北省政府は、「光谷科学技術イノベーション大回廊発展戦略計画(2021--35年)」(以下「計画」)を発表した。
光谷科学技術イノベーション大回廊は、湖北省南東部に位置する「リボン」のようなものだ。そこには、100校近くの大学、中国科学院と中国工程院の院士73人、武漢東湖、黄石大冶湖、黄岡、咸寧など国家級ハイテクパーク4ヶ所、葛店と黄石の国家級経済開発区が集まり、「宝石」のように散りばめられており、「イノベーションの源―技術開発―研究成果の実用化―新興産業」のオールチェーン・イノベーション体系が形成されつつある。
「計画」によると、今後は、「統一計画、エリアスポット、転位分布、協力連携」というアプローチに基づいて、東湖科学城を中心とし、光谷科学技術イノベーション大回廊をイノベーション発展の連携軸とし、光電子信息産業帯、総合健康産業帯、スマート産業帯のイノベーション産業帯3本を構築する。
汪書記は、「東湖科学城がメインのエンジンで、省・市は重大な使命をそこに託している。『1年でブランディングし、3年でイメージを作り上げ、5年で大規模化し、10年でベンチマークになる』というアプローチに基づいて、ハイレベルの企画を行い、ハイレベルの計画を策定し、ハイレベルの基準で建設を行い続ける」と強調する。
東湖ハイテクパークでは今年、「光谷科学アイランド」の建設が本格的に始まり、光谷、珞珈、江城、東湖、九峰山など、5つの実験室が発足して運営が始まる計画だ。そして、パルス強磁場実験装置、精密重力測量装置という2つのビッグサイエンス装置を最適化、バージョンアップし、5つのビッグサイエンス装置の研究開発の準備を整え、最先端の学際的研究プラットフォームを15以上構築する計画だ。その他、中国内外のトップレベルの科学者や研究チームを集結させ、東湖科学城の基本となる枠組み体系を作る計画だ。
そして、2025年をめどに、ビッグサイエンス装置を4つ完成させ、ビッグサイエンス装置4つの建設計画を策定し、最先端の学際的研究プラットフォームを約30構築し、世界的に影響力のある科学者を集結させ、ハイレベルのイノベーションプラットフォームを構築し、影響力のあるオリジナルの科学技術研究成果を誕生させ、先進的なテクノロジー企業や牽引型の産業クラスターを育成し、東湖科学城をほぼ完成させ、オリジナルイノベーション能力の研究能力向上を促進したい考えだ。
さらに、2035年をめどに、武漢光谷は、「科学的特徴や科学技術イノベーションの特色が際立ち、イノベーションの活力にあふれ、生態・人・文化が優れる」世界一流の科学城を作り上げ、武漢が国家科学技術イノベーションセンターや東湖総合的国家科学センターを構築する中核的下支えを提供し、光谷科学技術イノベーション大回廊の「輝く宝石」となり、国家戦略のテクノロジーの力の中でも、中国中部における展開の「絶対的主力」となり、「世界の光谷」へと成長させたい考えだ。
※本稿は、科技日報「武漢東湖高新区: 志做光谷科技創新大走廊上"最美風景"」(2021年3月6日付11面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。