1兆元規模の産業クラスターに照準―新エネルギー自動車産業の発展
2021年11月09日 竜躍梅(科技日報記者)、方斌(科技日報通信員)
生産、応用、イノベーションの「三位一体」体制
広東省肇慶ハイテク産業開発区にある小鵬汽車の工場にて、新エネルギー自動車の完成の瞬間(撮影:王振宇)
前年同期比105%増
現在、肇慶ハイテク産業開発区における新エネルギー自動車産業クラスターには一定規模以上の企業35社が属している。今年1月から7月の総生産額は131億元で前年同期比105%増となり、新エネルギー自動車産業の力強い発展傾向を示した―。
9月22日、広東省肇慶ハイテク産業開発区にある小鵬汽車(Xpeng)のコネクテッドカー産業パークでは、新エネルギー自動車が次々に完成し、全国各地に向けて出荷されていた。
今や、世界規模の科学技術革命と産業改革が急速に進行しており、新エネルギー自動車産業にとっては未だかつてない発展のチャンスが到来し、このチャンスを前に英知が試されている。近年、同産業開発区ではこれを機に小鵬汽車、寧徳時代(CATL)、理士電源(LEOCH)等の世界有数の新エネルギー産業のリーディングカンパニーを誘致し、すでに新エネルギー自動車の完成車、重要部品、コネクテッドカー関連、自動車の軽量化、充電設備、アフターマーケット、エネルギー貯蔵等の分野の全面的な成長に向けた新たな構図がおおむね出来上がっている。
現在、肇慶ハイテク産業開発区における新エネルギー自動車産業クラスターには一定規模以上の企業35社が属している。今年1月から7月の総生産額は131億元(約2,250億円)で前年同期比105%増となり、新エネルギー自動車産業の力強い発展傾向を示した。
発展に向けた先天的なアドバンテージ
8月18日、肇慶ハイテク産業開発区で小鵬汽車のスマート・新エネルギー自動車第2期プロジェクトの契約および着工セレモニーが実施された。当該プロジェクトで生産が開始されれば、同産業開発区の小鵬汽車コネクテッドカー科学技術産業パークにおける完成車の設計生産能力は、年産10万台から20万台に引き上げられる。
それでは、何故、小鵬汽車は同産業開発区を選んだのか。肇慶ハイテク産業開発区にはどのようなアドバンテージがあるのだろうか。
小鵬汽車の担当者によれば、肇慶市は粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア)において最も潜在成長力と受け入れ能力のある都市のひとつとして、地理的な交通の利便性があり、悠久の歴史文化と良好な生態環境に恵まれ、広々とした土地空間があり、友好的なビジネス環境と安い要素費用に恵まれる等、多くの面でアドバンテージがあることから、同産業開発区は「広州西,湾区価値新窪地」(広州の西に位置する、ベイエリアの新たな投資価値のある低価格地域)として称賛されている。同担当者によれば、「肇慶市は沿海と内陸の交通の要衝にあり、広州市の中心市街地や白雲空港からの距離は50キロメートルで、複数の高速道路や都市間軌道交通があり、広茂鉄路と水上輸送路が全域に通じている。当社のR&Dセンターと生産拠点は車を使えばわずか1時間で行き来できるため、開発チームと製造チームとの間で十分な意思疎通を図る上で非常に有利であり、大量の時間コストが節約され、製品化に向けた進捗を効果的に確保できた」。
同産業開発区では、新エネルギー分野の多くの企業が同市と同産業開発区の新エネルギー産業の将来を期待していることを、筆者は目の当たりにした。
広東瑞慶時代新能源科技有限公司(以下、瑞慶時代)の人材部のマネジャーを務める鄧江峰氏も「肇慶ハイテク産業開発区は粤港澳大湾区に位置し、地理上・交通上の利便性と恵まれたビジネス環境等のアドバンテージがあるため、新エネルギー自動車や自動車部品等の1兆元規模の産業クラスターに関しては、誘致すればすぐ応じるだろう」と語る。
また、鄧氏は「同産業開発区の新エネルギー産業はすでにそれなりの規模を擁しており、産業発展の持続可能性は高く、潜在成長力も強い。当社の長期発展計画と合致する」とも言う。
同産業開発区は恵まれた強みを頼りに、新エネルギー自動車産業の発展において「他に先んじた一歩」を踏み出している。
現実味のあるトップダウン設計
肇慶ハイテク産業開発区の新エネルギー自動車産業においては、規模の拡大と強化が実現可能だ。同産業開発区の先天的なアドバンテージに加え、同市と同産業開発区による現実味のあるトップダウン設計や強力な計画、積極的な推進が後ろ盾にある。
今年の年初に、同市は「肇慶市新エネルギー自動車・自動車部品産業発展行動計画(2021-2025年)」(以下、「計画」)を公布した。「計画」では、2025年までに同市の新エネルギー自動車および自動車部品産業で総生産額2,000億元を実現することを提起している。また、同市の新エネルギー自動車部品企業には完成車との同時開発能力があり、新エネルギー自動車の重要部品の現地供給率は40%を超えることを示している。
同市における産業発展の牽引役と重要な発展の核として、同産業開発区は鋭い眼光と現実味のある措置によって、新エネルギー自動車分野の優良企業を積極的に誘致している。
同産業開発区の担当者によれば、同産業開発区においてコネクテッドカー・新エネルギー自動車イノベーション型産業クラスターの確立に全力を尽くすために、同市はスマートカー産業発展業務指導チームを組織し、同産業開発区では新エネルギー自動車産業サービスセンターを設立した。また、同産業開発区では「肇慶ハイテク産業開発区産業基地管理暫定施行弁法」、「新エネルギー自動車産業クラスターの発展の支援に関する肇慶ハイテク産業開発区の実施意見」等の関連の産業支援政策を相次いで公布し、「西江人材計画」や「鯤鵬計画」、新エネルギー自動車産業人材誘致・育成プロジェクトを実施することとしている。
さらに、同産業開発区では新エネルギー自動車発展特別資金を設立し、新エネルギー自動車の全産業チェーンに関係するプロジェクトやリーディングカンパニーの支援に利用することとしている。
また、同産業開発区では広東省自動車部品産業計量試験センター、智華(広東)コネクテッドカー研究院、ハルビン工科大学海特複合材料技術研究院、広東省電気自動車エンジニアリング技術研究センター、広東省特種車両エンジニアリング技術研究センター等の省級の優れたイノベーションプラットフォームを誘致し、一連の国家重点科学研究プロジェクトを担当し、コネクテッドカーと新エネルギー自動車の科学研究と産業基板の面で高い競争力を備えるようになった。同産業開発区における2020年の新エネルギー自動車産業のR&D経費投資は6億8,500万元(約118億円)に達し、主要営業収入の3.3%を占めた。
恵まれたビジネス環境
肇慶ハイテク産業開発区のビジネス環境については、鄧氏は非常に満足している。
プロジェクト契約の実施前に、同産業開発区は専門作業チームを立ち上げ、プロジェクト実施を加速させるための専門のサービスを提供し、プロジェクトの推進過程で遭遇する困難や問題の解決に協力した」と鄧氏は語った。同産業開発区は500台以上の機械設備を投入して24時間体制でプロジェクト用地の整地を進め、3カ月の間に1,000ムーの荒れ地を直接重機で乗り入れて施工を行えるまでに整地し、プロジェクト建設を急速に進めるための条件を整えた。
また、同産業開発区は瑞慶時代プロジェクトに対し、「事前介入、指導・事前審査の同時進行、即日一次審査、当日審査完了」等の重大な企業投資プロジェクトの審査認可サービス制度を先行的に試行し、プロジェクトの関連資料が整っている状況においては、1時間以内に営業許可証を受領し、1営業日内に土地権利書の手続を完了させ、2営業日内に「先行試験、後日検証」施工通知書を取得し、「土地取得直後の着工」を実現させた。
瑞慶時代プロジェクトは、寧徳時代と同産業開発区が2021年2月に契約を結び、成立させたリチウムイオン電池の生産プロジェクトであり、当初の投資計画は120億元(約2,060億円)で、設計生産能力は25億ワットアワーである。
重点プロジェクトの建設を確保するために、同産業開発区は区の主要指導者がチームリーダーを務める瑞慶時代プロジェクト専門作業班を設立し、「プロジェクト管理人」になって企業のマッチングを行い、プロジェクト建設の進行状況をリアルタイムで把握し、建設過程における企業のさまざまな難題を解決し、企業が迅速に操業開始をできるよう支援している。
同産業開発区の良質なサービスにより、瑞慶時代プロジェクトの現在の進捗は非常に順調で、年内に第一期の主要工場建屋および宿舎楼の屋上部分を完成させ、来年3月には設備設置を完了させ、6月に試験操業を行う見込みであり、2022年には生産高150億元(約2,580億円)を実現し、2023年には規定の水準に達し、計画生産量に達する予測である。
今年さらに、同産業開発区は「肇慶ハイテク産業開発区における産業プロジェクトのマッチング・フォローアップ・連携首席サービス官制度(試行)」を公布し、全区で81名の首席サービス官が正式に「資格証明書を持って勤務に就いた」。同産業開発区の首席サービス官は産業プロジェクトのマッチング・フォローアップ・連携を行い、企業の発展動向を適時に把握し、サービス対象がプロジェクトの実施や着工・竣工、生産経営において遭遇する困難や問題に対し、リアルタイムで解決するべく協力している。
産業の活気ある未来
肇慶市合普動力股分有限公司は7年間の努力を経て、肇慶ハイテク産業開発区で広東省エンジニアリング技術研究開発センターと広東省企業技術センターを設立し、累計1億5,000万元を超える投資で技術開発を行い、電気自動車のモーター、コントローラ、減速装置等の重要技術を掌握した。その技術によって難関を突破し、高い価格性能比を実現したため、同公司は新エネルギー自動車の電気モーター製品の分野で製品のアップデート・世代交代に成功し、小鵬汽車の初のモデルG3の電気モーターのサプライヤーになり、フィアットや比亜迪(BYD)、東風柳州汽車、吉利汽車、江鈴汽車等の電気自動車の協力パートナーにもなることができた。
同産業開発区のコネクテッドカー・新エネルギー自動車イノベーション型産業クラスターは、すでに広東省政府による戦略的基幹産業クラスター(自動車)の重点地域配置に組み入れられているという情報も得ている。産業パークに入居する自動車産業の企業は現時点で50社以上あり、完成車メーカーは5社で、完成車と電池、電気モーター、電線、タイヤ、シャシー、センターコンソール、センサー、照明等の部品を網羅する産業エコシステムがおおむねできあがっている。
同産業開発区の担当者によれば、同産業開発区では今後、粤港澳大湾区における新エネルギー分野の「グリーン製造」モデル区、「グリーン応用」モデル区、「グリーンイノベーション」モデル区の構築に力を入れ、新エネルギー産業における生産、応用、イノベーションの「三位一体」による発展の構図を着実に形成する。
「同産業開発区のコネクテッドカー・新エネルギー自動車イノベーション型産業クラスターの急速な発展は、産業チェーンの川上・川下企業を整理統合し、産業チェーンの付帯能力を高め、サプライチェーンの効率とリスク対応能力を向上し、経営コストを下げるのに有利であり、企業に良好な発展の場を提供する」と瑞慶時代の関係者は語る。
※本稿は、科技日報「瞄准千億級産業集群 這裏"三位一体"発展新能源汽車産業」(2021年9月27日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。