第186号
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請負制における手法の明確化、研究者に対するインセンティブを拡大

2022年03月14日 操秀英(科技日報記者)

―― 国家自然科学基金委員会の担当者による「国家自然科学基金資金助成プロジェクト資金管理弁法」の解説

 科学研究経費の管理は科学技術管理改革において重要な内容であり、研究者のモチベーションを引き出し、科学技術イノベーションを促す上で重要な意義を持つ。わが国の基礎研究における最も重要な資金助成のルートとして、近年では自然科学基金が力を発揮し続け、改革が絶えず深化し続け、プロジェクト資金の管理と使用が拡充されてきている。このほど、自然科学基金におけるプロジェクト資金の管理に関して、再び新方針が公布された。

「中央財政における科学研究経費管理の改革・改善に関する国務院弁公庁の若干の意見」の文書の精神を実現し、国家自然科学基金におけるプロジェクト資金の管理と使用を改善するため、財政部と国家自然科学基金委員会は2021年9月に「国家自然科学基金資金助成プロジェクト資金管理弁法」(以下、「弁法」)を改正した。

「新たに改正された資金管理弁法では、財政予算の管理理念並びに請負制・予算制プロジェクトの持つそれぞれの特徴に応じて、枠組みに関する構造調整を行った」と、国家自然科学基金委員会の担当者は語る。

請負制プロジェクト資金管理の具体的な弁法を明示

「予算管理方式の違いに基づき、自然科学基金プロジェクトの資金管理を請負制と予算制に区分する」と上記の担当者は言い、旧弁法における定額補助による資金助成方式とコスト補償による資金助成方式の分類は廃止されたと説明する。

 請負制プロジェクトの申請者は、プロジェクト予算を作成する必要がない。プロジェクトの担当者は、プロジェクト資金の使用を自主的に決定し、資金管理弁法の定める支出範囲に従って計上すれば良く、調整手続を行う必要はない。委託機関は、プロジェクト経費の請負制管理規定を制定し、国家自然科学基金委員会に届け出て記録に残さなければならない。

 また、「旧弁法では、直接費用の予算調整権に多くの制限があった」と同担当者は言う。「弁法」では、予算制プロジェクトについては設備費の予算調整権の全てを委託機関に委譲し、プロジェクト担当者が科学研究活動の実際のニーズに応じて申請を行い、委託機関に報告して審査を仰ぐことになっており、国家自然科学基金委員会は今後、その予算増についての審査を行わない。労務費、業務費の調整権も全て、委託機関からプロジェクト担当者に委譲された。

経費支給の進度を加速、余剰資金の管理を改善

 経費の支給は、研究者の関心を集める重要なテーマであり続けている。「国庫集中支払制度の規定に従い、当委員会は科学研究プロジェクトのタイプごとの特徴、研究の進度、資金ニーズ等に基づき、経費支給計画を合理的に制定し、かつ、資金助成プロジェクト計画書の締結後30日以内に計画に従って委託機関に経費を支給し、科学研究活動のニーズを適切に保障する」と同担当者は説明する。

 また、基礎研究の持つ連続性という特徴を考慮し、「弁法」においては、旧弁法の余剰資金の繰越と回収に関する規定を修正した。新弁法では、国家自然科学基金委員会がプロジェクトの終了を認めたプロジェクトについては、余剰資金を残して委託機関の使用に帰すると定めた。委託機関は、余剰資金を基礎研究の直接支出に用いるよう統一的に計画し、旧プロジェクトチームの科学研究上のニーズを優先的に考慮するとともに、余剰資金の管理を強化し、余剰資金活用の仕組みを整備し、資金使用の進度を加速させなければならない。国家自然科学基金委員会がプロジェクトの終了を認めないプロジェクトについては、委託機関は通知書の下達後30日以内に、元のルートを通じて余剰資金を国家自然科学基金委員会に返還しなければならない。

労務費支出の内容に住宅積立金を追加

「弁法」においては、予算制プロジェクトに関しては、間接費用は一般的にプロジェクトの直接費用から設備購入費を差し引いた金額の一定の割合を超えない範囲で算定し、かつ、総額規制を行うと規定している。そのうち、500万元及びそれ以下の部分については従前の20%から30%に引き上げ、500万元から1000万元の部分については従前の13%から25%に引き上げ、1000万元を超える部分については従前の10%から20%に引き上げることとしている。

「数学等の純粋理論の基礎研究に関連する予算制プロジェクトについては、間接費用の割合をさらに引き上げ、60%、50%及び40%とする。また、インセンティブ支出の割合制限を廃止したため、委託機関は間接費用の全てをインセンティブ支出に用い、イノベーション実績の優れたチームや個人向けに傾斜させることもできる」と同担当者は説明する。

 また、「弁法」においては、労務費は主にプロジェクトの実施プロセスにおいてプロジェクト研究に関与した大学院生やポストドクター、訪問学者並びにプロジェクトで招聘した研究者、研究補助員等の労務性の費用、並びに諮問のために臨時に招聘した専門家への費用の支払い等に用いると規定している。新弁法においては労務費の支出範囲が拡大され、労務費の支出内容に住宅積立金が追加された。

科学研究財務補佐制度を実施、科学研究設備の調達プロセスを簡略化

「弁法」においては、委託機関はサービス方式を革新し、研究者を事務作業から解放し、科学研究に専心できるよう規定した。「弁法」では、委託機関は科学研究財務補佐制度を全面的に実施し、各プロジェクトに比較的固定された科学研究財務補佐を配置することを保証し、研究者の予算作成や経費精算等の面に対して専門的なサービスを提供することを定めた。科学研究財務補佐に必要とされる人件費コスト(社会保険補助、住宅積立金を含む)については、委託機関が状況に応じ、科学研究プロジェクト経費等のルートを通じて統一的に計画し、解決することができる。

「弁法」においては、委託機関は財務精算の管理方式を改善し、情報化手段を充分に利用し、科学研究の実際のニーズに応じた内部精算制度を構築すべきことが求められている。

 また、「弁法」では、委託機関は内部管理規定を整備して最適化し、科学研究機器設備の調達プロセスを簡略化すべきことを規定している。科学研究において急ぎ必要となった設備及び消耗品の調達については特例としての特別手続や、臨機応変な随時手続による調達制度を採用し、入札・落札の手続を行わなくても良いことが定められた。

科学研究インセンティブの管理制度を整備、科学研究経費の監督検査を強化

「弁法」ではインセンティブ志向をさらに強化し、国家自然科学基金委員会はプロジェクト資金のインセンティブ管理制度を構築し、プロジェクト資金の管理と使用効率についてインセンティブ評価を実施することを定めた。インセンティブの分類評価を強化し、差別化されたインセンティブ評価指標体系を整備し、インセンティブ評価結果の活用を強化し、インセンティブ評価結果をプロジェクトの調整や追加支援の重要な根拠とすることとした。また、委託機関は成果の管理を適切に強化し、優秀な人材やチームに科学研究資源を傾斜させ、科学研究経費の使用効率を高めるよう指導することを定めている。

「弁法」では、委託機関の法人責任をさらに強調し、内部管理弁法を定め、プロジェクト予算の調整や間接費用の統一使用、労務費の管理、余剰資金の使用等の管理権限を実行することを求めている。内部統制と監督制約制度を整備し、資金使用を動的に管理してリアルタイムで警告を行い、資金の合理的かつ適正な使用を確保することや、支援・サービス条件の制定を強化し、研究者に対するサービス水準を引き上げ、常態化された自己審査・改善制度を構築し、プロジェクト資金の安全を保証することも定められている。


※本稿は、科技日報「包干制做法明確 科研人員激励力度加大」(2021年12月6日付2面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。