第186号
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雲南省が育てた1千億元級のバイオ医薬産業 専門的サポートを提供

2022年03月07日 趙漢斌(科技日報記者)

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画像提供:視覚中国

 特色が鮮明で、たくさんの「星」が輝いている玉溪ハイテクパークバイオ医薬イノベーション型産業クラスターは、省全域をカバーする質の高いバイオ医薬産業の専門型パークを形成し、雲南省が1千億元(1元は約17.8円)級のバイオ医薬戦略的新興産業を重点的に育成できるよう、しっかりとバックアップしている。

雲南省科技庁党組書記、庁長 王学勤

 最近開催された中国国家「第13次五カ年計画(2016‐20年)」期間中のテクノロジーイノベーション成果展で、沃森生物(ワルバックス)が軍事科学院軍事医学研究院、艾博生物と共同で研究開発した中国初のmRNA型の新型コロナウイルスワクチンが注目を集めた。これは中国で初めて第3相臨床試験に入ったmRNA型の新型コロナウイルスワクチンだ。雲南省の玉溪ハイテク産業開発区(以下「玉溪ハイテクパーク」)にある、このワクチンを生産するモジュール化された工場はすでに10月までに年間2億回分のワクチンを生産する環境を整えた。

 玉溪ハイテクパークには、現在、ハイレベルのバイオ医薬企業が数多く集まっており、これら企業はそこで成長、発展し、優秀な成果を次々に挙げている。例えば、ワルバックスが独自に研究開発した中国初の13価肺炎球菌結合型ワクチンが既に認可を受けて発売されているほか、賽霊薬業の「恒古骨傷愈合剤」は2020年雲南省科学技術進歩一等賞を受賞し、国家医療保険リストにも組み込まれた。玉溪ハイテクパークは中国全土におけるバイオ製品と植物エキスの有名ブラント構築モデルエリア、雲南省バイオ産業モデル拠点、新型工業化産業モデル拠点で、バイオ医薬産業イノベーション型クラスターの構築に取り組んでいる。今年8月、科学技術部トーチセンターは、玉溪ハイテクパークバイオ医薬イノベーション型産業クラスターを含む産業クラスター43ヶ所を2021年度イノベーション型産業クラスター試行(育成)事業に登録した。

優位性を活用して特色ある産業チェーン構築に力

 玉溪ハイテクパーク管理委員会の姚翔会長は、「長期にわたり、当パークは雲南省のバイオ資源の優位性を十分に活用し、優位に立つ企業をバックに、産業チェーンの延伸を主な方向性とし、バイオ製薬、現代中医薬、化学薬などの関連製品の発展に重点を置いてきた。バイオ医薬は現代産業体系において、最も成長が著しく、最も発展がアクティブな分野の一つだ」と説明する。

 玉溪ハイテクパークは現在、先端ワクチン、モノクローナル抗体、組換えタンパク質などの製品の発展に重点を置き、中成薬(錠剤、経口液剤または乾燥懸濁液などのすぐに使える形にした漢方薬)生産・開発を主導に、現代中医薬顆粒調合系薬物企業を呼び込み、中成薬、中医薬せんじ薬、中医薬健康食品の発展に力を入れている。また、産業ニーズに合わせて、化学製剤企業を呼び込み、現有の企業に対しても技術の研究開発を強化し、新薬の研究開発に積極的に取り組むように奨励している。玉溪ハイテクパークのバイオ医薬産業は順調に発展しており、「玉溪バイオ医薬産業パーク」も構築されている。

 玉溪には現在、バイオ医薬企業が33社ある。うち、一定規模以上の企業(年売上高2000万元以上の企業)は19社ある。薬品承認番号を取得した製品が254品種あり、うち、中成薬が150種類入っている。また、中国全土で1社しか生産していない製品が16品種ある。医薬品企業の集積地である玉溪ハイテクパークでは、ワクチン、モノクローナル抗体を代表とするバイオ技術で作られる薬、民族薬(少数民族の薬)、特色薬を代表とする中成薬の2つの特徴的なブランドが形成されつつある。

 雲南省科学技術庁党組の書記を務める王学勤庁長は、「特色が鮮明で、多くの『星』が輝いている玉溪ハイテクパークバイオ医薬イノベーション型産業クラスターは、省全域をカバーする質の高いバイオ医薬産業の専門型パークを形成し、雲南省が1千億元級のバイオ医薬戦略的新興産業を重点的に育成できるよう、しっかりとバックアップしている」と語る。

イノベーションを奨励し中医薬・民族薬産業の拡大を促進

 維和薬業や鴻翔中薬、万緑生物、賽霊薬業、林縁香料といった業界大手も玉溪ハイテクパークに集まっている。雲南省の豊富な中医薬、民族薬資源を活用して、バイオ医薬品企業が技術開発を展開し、技術革新が企業の発展に原動力を注入し続けている。

 新製品の研究開発や生産、薬材栽培、販売が一体となった維和薬業は、近代的なハイテク企業だ。玉溪市科学技術局の梁玉浩局長によると、「同社の研究開発センターは、雲南省企業技術センター、国家中医薬現代化工学・技術研究センター西南サブセンター、雲南省植物エキス工学研究センターなどに認定されてきた。植物エキス工学・技術、質量基準・安全性検査技術、バイオ工学技術、フィンガープリント技術といった優位性を活用し、維和薬業の有名で高価な薬材・三七の研究、開発及び大規模生産は既に、中国でトップ水準に達している。」という。

 賽霊薬業は中国工程院の張興棟院士と連携して天然薬物ディープ開発院士ワークステーションを設置した。同企業はハイレベルイノベーションプラットホームを構築することで、ハイレベルイノベーション人材を呼び込み、産・学・研が連携するテクノロジーイノベーションサービス体系の発展と骨傷愈合剤のディープ開発を推進し、骨の健康関連の産業チェーン全体の延伸を促進している。

 鴻翔中薬は、自動化生産設備、中医薬調合顆粒抽出・濃縮・生産ラインを導入し、609種類の中医薬調合顆粒、300種類以上の中医薬せんじ薬、100種類以上の中医薬粉剤の生産能力を備えている。

 技術的サポートを「骨」、イノベーション駆動を「魂」としている玉溪中医薬・民族薬産業は安定した発展を遂げている。

 玉溪ハイテクパークは現在、国家工学技術センター1ヶ所、省・部級以上の重点実験室2ヶ所、省級以上の企業技術センター7ヶ所、国家級企業技術センター1ヶ所、市級企業技術センター11ヶ所を有している。

 また、天然物抽出・加工が玉溪ハイテクパークバイオ医薬産業の目玉となっている。バイオ医薬産業のモデル転換と高度化の過程で、バイオ抽出産業が大きく発展し、優位性を誇るタバコを活用し、廃棄するタバコの葉からソラネソールを抽出し、コエンザイムQ10が入った健康食品を生産している。天然物を抽出して食用フレイグランス・香料、天然色素といった食品添加物を製造している。ローズマリー、露水草、三七総皂苷といったバイオ抽出物、医薬中間体の加工業の発展に力を入れている。アロエ産業、シロバナムシヨケギクバイオ農薬産業を急速に発展させ、天然エキス産業チェーンが形成されつつあり、バイオ医薬産業の分野が拡大している。

綿密な対策を講じて長期にわたる健全な発展の基礎を築く

 玉溪ハイテクパークには、バイオ医薬産業をめぐる吉報が続々と届いている。

「第13次五カ年計画」期間中、玉溪九州生物科技公司は6000万元を投じてウマ免疫グロブリン抗体プロジェクトを順調に実施した。2品種の薬物の臨床試験の承認文書のほか、特許ライセス22件、登録商標2件を取得した。また、「重要新薬創製」テクノロジー重要特定プロジェクトや雲南省のバイオ医薬分野の重要テクノロジー特定プロジェクトを担った。

 玉溪嘉和生物技術有限公司が2億元を投じた治療性モノクローナル抗体薬物産業化プロジェクトでは、製品3つの臨床試験、産業化が行われている。製品3つはいずれも世界で最も売れている薬トップ10に入っている。その一つは中国初の末梢性T細胞リンパ腫の治療に用いられるPD-1モノクローナル抗体で、発売から3年以内に生産額が30億元に達すると見込まれている。

 玉溪沃森が3000万元を投じた新型ワクチン標準工場プロジェクトと2億600万元を投じた国際制剤センタープロジェクトは順調に竣工し、同社の今後の急速な発展のために強固な基礎が築かれた。

 姚会長は、「こうしたバイオ医薬重点プロジェクトを急ピッチで推進することができたのは、雲南省と玉溪市のバイオ医薬産業の質の高い発展を加速させるという決意と一連の関連政策のおかげだ。当パークも近年、医薬産業発展の面で、一連の対策を講じている」と説明する。

 玉溪ハイテクパークは、計画をしっかりと立て、バイオ医薬産業用地を統一してレイアウトし、年度新規建設用地をバイオ医薬産業プロジェクトに優先的に配分してサポートし、魅力的なバイオ医薬産業クラスターを構築し、パークのキャパシティーを向上させ、入居する企業に整備された関連インフラストラクチャーを提供する。また、融資ルートを拡大・刷新し、産業の発展における資金面のボトルネックを打破する。また、起業サポート、科学研究経費、職階評価・審査、査証(ビザ)、戸籍、住居といった面の対策を強化し、一歩踏み込んだ人材発展の体制、メカニズム改革をサポートし、産業の人材確保を強化する。

 玉溪市党委員会の王力書記は、「今後も、当市の『バイオ医薬産業質の高い発展の加速に関する実施意見』を徹底し、中核となるリーディングカンパニー、成長型企業、中小企業をさらに育成し、品質体制を整備して、質の向上を促進し、質の高いブランドを育成し、当市のバイオ医薬品の市場における影響力、競争力をさらに高めたい」と意気込みを語った。


※本稿は、科技日報「雲南培育千億級生物医薬産業 這个園区提供了"専業化"支撐」(2021年11月25日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。