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【20-025】《新型コロナウイルス》中日友好病院スタッフ有志ら診療ガイドラインを日本語訳

JST北京事務所 2020年4月23日

 北京の中日友好病院のスタッフらが呼びかけたボランティアチームが、新型コロナウイルス感染症に関する中国政府のまとめた診療ガイドラインを日本語訳した。チームは、孟華川氏、楊明月氏を中心とするもので、同病院のスタッフのほか、日本語を学習し、日本を応援してくれる様々な職業の中国の方たち、そして、中国で学習・活動する日本の医学関係者らの協力を得て作成された。

新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン(試行第7版)
【日文版】
日本語翻訳:楊明月、劉承慧、聶志敏、鄧婉、趙冬、陳暁瑩、馮傑、孟華川
日本語監訳:吉川淳子

新型コロナウイルス肺炎診療方案(試行第6版)
【日文版】
日本語翻訳:楊明月、劉承慧、計麗屏、聶志敏、鄧婉、趙冬、孟華川
日本語監訳:木村優美、福田雅美、秋山陽子

 このガイドラインは、以前、「診療マニュアル」として御紹介したもの[1]。日本でも新型コロナウイルスの感染者が増加する中、4月2日段階で76,000人を超える治癒退院の実績[2]を有する中国の診療経験が参考になるところも多いのではないかと思う。

 中日友好病院は、日本政府の無償資金援助を活用して日中両国政府の協力により設立された、北京にある中国でもトップクラスの大規模総合病院である。1984年に開院し、北京オリンピックでの指定病院にもなった。365日無給診療のさきがけとなったことや中国伝統医学と西洋医学の融合の拠点としても知られている。また、多くの医療分野で「国家臨床重点専門教室建設プロジェクト」に採択されるなど、多数の国家級・省級のプロジェクトを担い、表彰されたことも数多い。

 国際協力にも熱心であり、設立後、早い段階に日中間の悪性脳腫瘍の放射線化学療法に関する日中共同研究を進めた。また、同病院は北京外国人協会から「外国人診療国立病院満足度ナンバーワン病院」との評価を得たことがあり、日本、アメリカ、フランス、韓国などの大学、科学研究機構、医療機構と協力関係を結んでいる[3]。中国へのODA終了で最後となる海外青年協力隊員が活躍した病院でもある[4]。ODAを通じた⽇中協⼒の軌跡を振り返るフォーラム、展示やニュースレターにおいても⽇中友好の象徴的事業として取り上げられた[3]

 「国家衛生応急チーム」の基幹病院でもあり、今回の新型コロナウイルス感染症対策でも、国家呼吸臨床研究センターとしての特徴を活かして、武漢に支援の医療スタッフを派遣、華中科技大学同済病院で重症患者の救護のための治療に当たった[5]。また、抗ウイルス薬Remdesivir(中国語名:瑞徳西韋)の臨床試験に取り組んだことは、以前紹介している[6]

 今回の翻訳のことは、北京の日本大使館をはじめとする日本関係機関のネットワークである広報・文化十一者会合を通じて国際交流基金北京センターから御紹介いただいた。同センター周囲の日本語に堪能な有識者の間でも高く評価されているようである。

 既にこのガイドラインは、日本医師会にも提供されているという。現在、日本、そして世界が厳しい状況であるが、同病院をはじめとする中国の医療スタッフの苦労の結晶であるこのガイドラインをぜひ参考にしていただきたいと思う。

[1]2020年3月6日 北京便り「新型コロナウイルスに関する診療マニュアル試行第7版について
2020年2月27日 北京便り 「新型コロナウイルスによる肺炎の診療マニュアル試行第6版等について

[2]4月2日24時段階の中国(31省市区)の治療実績は、累積確定診断者81,620人、うち治癒退院76,571人(93.8%)、累計死亡者3,322人(4.0%)。当該時点で治療を受けている確定診断者数1,727人(うち重症379人)、疑似病例は135人、医学观察中の無症状感染者1,027人(うち海外からの入国者221人)。累計追跡密接接触者710,985人、当該時点で医学観察中の者19,533人。
截至4月2日24时新型冠状病毒肺炎疫情最新情况

[3]中日友好病院については、以下を参考にした。
中日友好病院のご案内
中日友好病院
JICA中国事務所ニュースレター2019年度第2号 "ODAを通じた日中協力の軌跡"

[4]中国最後の協力隊☆岩崎春香☆ 看護師 北京市 中日友好病院
日本人看護師「香香」、武漢で闘う同僚に「無事に戻ってきて」

[5]命の「リレー」――武漢を支援する中日友好病院の看護師たち

[6] 2020年2月13日 北京便り「新型コロナウイルス感染症治療薬開発に関する中国の動き