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【21-050】中国の中央財政科学技術計画について(国家科学技術重大特定プロジェクト)その2

JST北京事務所 2021年09月10日

その1 よりつづき)

第4章 年間計画

・ 公平・公正の原則を順守し、指名または公募によりプロジェクト(課題)実施機関を選定する。(第23条)

・ プロジェクト実施部門は、関連部門とともに、プロジェクト実施計画、ステージゲート実施計画に基づき年次ガイドラインを作成するために専門家グループと研究基金専門管理機関を編成する。(第24条)

・ プロジェクト実施部門は、三部門によるコンプライアンス審査の後、年次ガイドラインを国家科学技術管理情報システム上で公開する。
秘密情報や機密情報を含むプロジェクトの年次ガイドラインは、機密管理関連規定に従い、プロジェクト実施部門により公開される。(第25条)

・ 研究基金専門管理機関は、プロジェクト(課題)の申請を受理する。指名または公募は原則として、ガイドラインの発行日から50日以上で、研究者がプロジェクト(課題)の申請するための十分な期間を確保できるようにする。(第26条)

・ 研究基金専門管理機関は、オンライン又はオフライン会議でプロジェクト(課題)および概算予算のレビューを実行する。レビュー者は、国家科学技術管理専門家データベースから選任され、厳格な専門家回避制度(補足:利害関係者を除く意)を実施する必要がある。
秘密保持または他の法令の規定を除き、レビュー専門家リストは一般に公開され、専門家の自己規律を強化し、ピアレビューおよび社会的監督を受け入れる必要がある。
プロジェクト(課題)申請資料は、レビューの有効性、品質および効率を保証するために、事前に専門家によりチェックされる必要がある。(第27条)

・ レビュー後、研究基金専門管理機関は、年間計画案(予算計画を含む)を作成し、プロジェクト実施部門に報告してレビューを要請する。(第28条)

・ プロジェクト実施部門は、年間計画を三部門に提出し、総合的なバランスを取る。
三部門は、プロジェクト確立手順の標準化、研究目標とガイドラインとの整合性およびタイムリーなフィードバックに重点を置く。
研究基金専門管理機関は、調整後の年間計画を公開し、広報状況と処理意見をプロジェクト実施部門によるレビューを受けた後、三部門に報告する。(第29条)

・ プロジェクト実施部門は、三部門による調整および財政部による予算承認に基づき、研究基金専門管理機関に対してプロジェクトを承認(予算を含む)する。(第30条)

第5章 組織化とプロセス管理

・ 研究基金専門管理機関は、プロジェクト実施部門によるプロジェクト承認を受け、プロジェクト(課題)実施機関と「重大特定プロジェクト(課題)業務契約書」を締結し、地方関係部門が支援の条件を示し資金提供される場合、当該地方関連部門または関係機関がプロジェクト(課題)業務契約書を締結する必要がある。
国家機密を含むプロジェクト(課題)の場合、研究基金専門機関は、プロジェクト(課題)実施機関と秘密保持契約を締結する必要がある。(第31条)

・ 研究基金専門管理機関は、「重大特定プロジェクト(課題)業務契約書」に従い、関連する支援条件の実装を確認・監督し、日常の管理に責任を負い、プロジェクト(課題)の文書管理ファイルを整備する。(第32条)

・ 年次報告制度を実施する。研究基金専門管理機関は、年次執行状況報告書を作成し、プロジェクト実施部門によるレビューの後、毎年12月末までに三部門に提出。科学技術部がとりまとめ国務院に報告する。(第33条)

・ 調整または取消が必要な一般プロジェクト(課題)については、研究基金専門管理機関から書面にて意見を提出の上、プロジェクト実施部門および三部門に併せて報告。(第34条)

第6章 評価と監督

・ 三部門は、重大特定プロジェクトの全体的な進捗管理と評価を担当する。三部門は計画に従いチームを編成するか、第三者の独立評価機関に委託して、重大特定プロジェクトの実施に関する各ステージゲートの達成度と年次の監督を評価し、関連プロジェクト(課題)の抽出調査を強化し、説明責任のためのチェックを実施する。
プロジェクト実施部門とともに、研究基金専門管理機関は、デューデリジェンス等の状況を監督し、評価意見を提出する。
ステージゲート評価結果は、実施目標、技術ルート、予算の概算、スケジュールおよび実施方法等の調整のための重要な基礎となる。三部門はステージゲート評価と調整結果を国務院に報告。(第35条)

・ プロジェクト実施部門は、重大特定プロジェクトの業務の監督評価のため、資格ある第三者の独立評価機関を編成または委託する。(第36条)

・ 重大特定プロジェクトガイドライン、レビュー、プロジェクトの設立、監督評価等の関連情報は、関連規定に従い公表され、社会的監督を受け入れるものとする。(第37条)

・ 科学研究の信用メカニズムを確立する。関連規定に従い、プロジェクト(課題)の管理プロセスにおける各種の科学研究信用情報を客観的、規範的に記録し、プロジェクト(課題)申請者の申告過程における信用状況を含め、研究機関とプロジェクト(課題)責任者のプロジェクト(課題)実施過程における信用状況を負担し、専門家がプロジェクト(課題)の評価、検査、検収に参加する過程における信用状況は、信用格付けによって分類管理を行う。
重大な信用喪失行為記録制度を確立し、深刻な信用喪失行為に関する責任主体に対しては、重大特定プロジェクト(課題)への申請またはプロジェクト(課題)管理に参加する資格を段階的もしくは恒久的に取り消すこととする。(第38条)

・ 責任追及のメカニズムを確立する。重大特定プロジェクトの実施過程で、義務の放棄、不正行為、詐欺、傍受、横領、流用等の行為に関する規制に従い責任を負い、犯罪を構成する場合は、法に従い刑事責任を追及する。(第39条)

第7章 まとめと承認

・ 研究基金専門管理機関は、プロジェクト(課題)のまとめと検収(業務検収および財務検収)を行う。検収結果はプロジェクト実施部門に報告され、三部門にも報告される。
プロジェクト(課題)検収は、業務満了後6カ月以内に完了する必要があり、原則として延長期間は1年を超えない。
国家科学技術報告制度に従い、各プロジェクト(課題)は、承認時に完全かつ統一された様式の技術報告書を研究基金専門管理機関に提出し、併せて科学技術部にも送られる。
プロジェクト(課題)検収およびその他の関連条件は、重大特定プロジェクト管理情報システムに含まれ、文書管理ファイルに記録される。
毎年12月末までに、プロジェクト(課題)年次実施報告書を提出し、定期的に重大特定プロジェクトの実施状況を合同会議およびプロジェクト実施部門に報告し、検収資料を作成する。(第40条)

・ 各プロジェクトは、各5年計画の最終年度のステージゲート評価を実施する。プロジェクト実施部門は、ステージゲート評価報告書を三部門に提出する専門組織を編成する。
三部門は、ステージゲート評価報告と監督状況の概要をまとめ、国務院に報告する。(第41条)

・ プロジェクト実施部門は、重大特定プロジェクトの業務目標に基づき、プロジェクト(課題)を検収し、実施状況報告書を作成の上、三部門に全体検収を申請する。
原則として、重大特定プロジェクトの執行期限近くか、執行期限到来後6カ月以内に検収申請を提出しなければならない。プロジェクトが順調に実施され、業務目標達成が前倒しされた場合、事前に検収申請が可能。
三部門は検収申請を受理した後、各プロジェクトの実施方案に基づいて、全体検収業務を展開し、目標指標の完成度、組織化と管理状況、資金使用状況と効果、実施効果と影響等の方面から総合的に評価し、検収報告書と全体検収書を作成し、各プロジェクトの全体検収書と実施状況を総合的に評価する。全体検収書および実施状況報告書は、党中央、国務院に報告される。(第42条)

第8章 資金管理

・ 重大特定プロジェクトの資金源には、中央財政資金、地方財政資金、研究機関の自己資金およびその他の資金が含まれる。(第43条)

・ 各種の資金を調整された方法で使用し、使用効率を向上させる。中央財政資金は、財政予算管理および重大特定プロジェクト資金管理弁法の関連規定に従い管理される。資金は使途が特定され、区分経理され、業績に焦点を当てる必要がある。(第44条)

・ 重大特定プロジェクトへの資金の使用は、関連する監査規定従い厳密に監査され、資金使用が規範化され、効果的であることを保証するものとする。(第45条)

第9章 知的財産および資産管理

・ 各プロジェクトは、知的財産権の保護管理の長期的なメカニズムを確立し、知的財産権の明確な目標を制定し、知的財産業務に係る専門機関と人員を指定し、国内外の関連分野における知的財産権の動態を追跡、分析報告を行い、科学政策の決定の参考とする。
各プロジェクトは知的財産管理および評価制度を確立するものとする。必要に応じて、知的財産権管理機関に業務を委託することができる。(第46条)

・ プロジェクト実施部門の指導の下、専門機関(補足:研究基金専門管理機関または知的財産権管理機関)は重大特定プロジェクトの成果と知的財産権の管理に責任を負う。(第47条)

・ 重大特定プロジェクトで取得された知的財産権の帰属および使用は、「中華人民共和国科学技術進歩法」、「中華人民共和国科学技術成果移転促進法」、「国家知的財産権戦略要領」等に従い執行されるものとする。
重大特定プロジェクトによって生み出された知的財産権を引き受けるため、他の国内機関に有償または無償により実施権を付与する義務がある。(第48条)

・ 専門機関(補足:研究基金専門管理機関又は知的財産権管理機関)は、知的財産権の所有権、実施権およびライセンス権付与について、プロジェクト(課題)責任者と事前に合意し、成果の移転と応用を促進し、重大特定プロジェクトの全体目標を保証するものとする。(第49条)

・ 各プロジェクトは科学技術の成果の移転と産業化促進するための措置を講ずる必要がある。国家機密を含む成果は、国家秘密保持法および規制により管理される。(第50条)

・ 重大特定プロジェクト(課題)実施中に生み出された無形資産は、プロジェクト(課題)実施機関によって管理および使用されなければならない。成果移転および無形資産の使用による経済的利益は、「中華人民共和国科学技術成果移転促進法」および関連規定に従い実施されるものとする。(第51条)

・ 中央財政資金の使用により形成された固定資産は、国家関連規定に基づき執行される。(第52条)

第10章 情報、文書管理および秘密保持管理

・ 科学技術部は、統一された重大特定プロジェクト管理プラットフォームを確立し、それを国家科学技術管理情報システムに組み込む必要がある。各重大特定プロジェクトサブ管理プラットフォームは、管理プラットフォームと接続して円滑な情報フローを保証するために確立される。(第53条)

・ 情報の内容は、重大特定プロジェクトの実施計画、ステージゲート実施計画、年度計画、プロジェクト(課題)、資金予算、監督および評価、科学的・技術的報告、検収ならびに成果等の関連情報が含まれる。(第54条)

・ 各プロジェクト(課題)業務契約書関連情報、プロジェクト(課題)実施状況に関する情報、プロジェクトの検収および成果情報は、毎年12月末までに年次執行状況報告書とともに科学技術部に提出され、国家発展改革委員会、財政部にも併せて送られる。(第55条)

・ 各プロジェクトは、国家および三部門関連文書管理規定に従い、重大特定プロジェクト文書管理制度を改善し、関連文書の分類、保存、文書管理ならびに転送を適切に行い、重大特定プロジェクトの文書管理業務を貫徹するプログラムの制定、検証、実施、評価検収の全プロセスにより、文書管理が完全に実施・保証される。(第56条)

・ 重大特定プロジェクトの組織・実施にあたり、国家秘密保持法および規制を厳守し、機密業務の責任体系における明確なレベル別の責任を確立し、重大特定プロジェクトにおける秘密保持業務が確実に実施されなければならない。(第57条)

・ 各プロジェクト実施期間中の秘密保持の管理は、プロジェクト実施部門の責任とする。プロジェクト実施部門の指導の下、研究基金専門管理機関は重大特定プロジェクトの管理、監督、検査、教育およびトレーニング、宣伝を真摯に実施する。(第58条)

・ 情報セキュリティ業務の強化に関する関連規定と要求を厳守し、重大特定プロジェクトに関連する秘密関連の情報および文書等は、機密性に関する国内法と規定に厳密に従い管理されなければならない。(第59条)

第11章 国際協力

・ 国際的資源を最大限に活用するために、平等・相互利益の国際協力活動を積極的に実施する必要がある。(第60条)

・ プロジェクト実施部門の指導の下、研究基金専門管理機関は、主要な国際協力業務に責任を負う。(第61条)

・ プロジェクト(課題)実施機関は、研究基金専門管理機関の承認の下、国際協力活動を実施し、プロジェクト実施部門が承認する。(第62条)

・ 国際協力活動の実施に際して、外交および秘密保持に関する関連規定を順守するものとする。(第63条)

第12章 附則

・ 各プロジェクトは本規程に基づき、重大特定プロジェクトの特徴を結びつけ、相応の実施管理細則を制定し、三部門に報告される。(第64条)

・ 本規程は三部門が解釈に責任を負い、発布日から施行される。「国家科学技術重大特定プロジェクト管理暫定規程」(国科発計[2008]453号)は同時に廃止する。

(二)「国家科学技術重大特定プロジェクト(民生)資金管理弁法(財科教[2017]74号)」

 本弁法は、重大特定プロジェクトに参画する民生関係(軍人以外)を対象としたプロジェクト資金の管理方法を規定したものであるが、規定の大半は、重大特定プロジェクトのスキームを規定した「(一)「国家科学技術重大特定プロジェクト(民生)管理規程(国科発専[2017]145号)」」と重複している。また資金管理方法についても、「国家重点研究開発計画」と概ね同様であるが、重大特定プロジェクトの特性に基づいた規定もあり、それらのポイントは以下のとおりである。

・ 重大特定プロジェクト資金の配分時期について、前補助と後補助があり、個別のプロジェクト(課題)の特性により、プロジェクト実施部門が年次ガイドラインおよび年度計画中で明示する。(第4条)

・ 後補助を採用したプロジェクト(課題)であっても、事前に当該プロジェクトにおける中央財政資金総額の30%を上限として採択年度の予算に計上した上で、スタートアップ資金として前払いすることが可能。(第32条)

・ 直接経費の主な費目について、「基本建設費」を明示している。(「国家重点研究開発計画資金管理弁法」には記載がない。)

【基本建設費】

プロジェクト(課題)実施中に発生した建物建設や工事を伴う電気設備の導入等の基本建設支出を指す。基本建設財務制度に従って執行されなくてはならない。(第18条)

以上