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【22-002】《注目分野》中国工程院によるグローバル工学フロント2021について

JST北京事務所 2022年01月14日

1.概要

 中国には、自然科学分野の最高研究機関である中国科学院の他、工学・技術科学分野における最高研究機関である中国工程院が存在する。

 中国科学院とクラリベイト・アナリティクス社が毎年共同で中国発の注目分野の分析としてリサーチフロント[1]を発表しているのと同様に、中国工程院とクラリベイト・アナリティクス社が毎年共同で中国発の工学における注目分野の分析として「グローバル工程(工学)フロント」を発表している。

 工学(エンジニアリング)の研究と開発の最前線の傾向である「工学フロント」を示し、重点的に取り組むべき工学フロントを分析することにより、産業技術のイノベーションおよび政府の政策立案を推進することを目的としている。

 毎回12月に北京で発表されるが、今回も2021年12月14日に北京でグローバル工学フロント2021の発表が行われた[2]

2.9分野93領域の工学リサーチフロント

 2021年においては9分野、93領域の「工学リサーチフロント」と「工学開発フロント」が選定された。(そのうち特に注目される各分野3領域程度を「キーフロント」として重点的に解読)

(※)括弧内はキーフロント数
連番 9分野 工学リサーチ
フロント
工学開発
フロント
1 機械、運輸工学
Mechanical and Vehicle Engineering
10 (3) 10 (3)
2 情報、電子工学
Information and Electronic Engineering
10 (3) 10 (3)
3 化学、冶金、材料工学
Chemical, Metallurgical, and Materials Engineering
11 (3) 11 (3)
4 エネルギー、鉱業工学
Energy and Mining Engineering
12 (4) 12 (4)
5 土木、水利、建築工学
Civil, Hydraulic, and Architectural Engineering
10 (3) 10 (3)
6 環境、繊維工学
Environmental and Light Textile Engineering
10 (3) 10 (3)
7 農業
Agriculture
10 (3) 10 (3)
8 医薬、衛生
Medicine and Health
10 (3) 10 (3)
9 管理工学
Engineering Management
10 (3) 10 (3)
93 (28) 93 (28)

3.グローバル工学フロント選定

「工学リサーチフロント」および「工学開発フロント」は、以下の流れで選定される。

【選定手順】

image

緑:データ分析
紫:専門家による判断
枠内:専門家とデータ間の横断的相互作用

【データ抽出】

image

3.1 工学リサーチフロントの選定方法

(1)第一段階:基礎となる初期データセットの抽出

 

①クラリベイト社のWeb of Scienceデータを基に、被引用頻度上位10%(高影響力論文)を抽出。

  ・コアコレクションSCIジャーナル論文(ジャーナル数12,215)

  ・会議論文(会議数44,513)

  ・その他Nature等総合学術期刊誌72誌

  ・期間:2015年~2020年に収録された論文。論文引用期間は2021年1月まで

②さらに専門家からも提案

  ・図書情報専門家は各分野の専門家により提案された研究フロントを検索式に変換し、①と合わせて初期データセットを作成

(2)第二段階:データの分析・検証、研究ホットスポットの選別

 

①リスト化された初期データセットに対して共引用クラスタリング分析を実施。

  ・平均出版年が2019年~2020年のクラスタリングテーマ(共通テーマ)について、コア論文数(被引用回数上位10%論文)、総被引用回数、一貫して引用されている論文の割合より選別し、25の類似しない共通テーマを得た。

  ・平均出版年が2019年以前のクラスタリングテーマについては、コア論文数、被引用回数、平均出版年、一貫して引用されている論文の割合により分類し、35の類似しない共通テーマを得た。

②分析・ホットスポット選別

  ・テーマの重なりやクラスタリングされないテーマ、テーマの補完等の調整。

  ・775領域の候補となる研究ホットスポットを選別。

(3)第三段階:工学リサーチフロントの選定

 

①分野別工学リサーチフロントの選定

  ・アンケート調査や専門家による複数回の議論により、各分野で10領域程度を選別し、最終的に9分野計93領域を選定。

②キー工学リサーチフロントの選定

  ・各分野の発展性、将来性、注目度に基づき、工学リサーチフロントからそれぞれ3領域のキーリサーチフロントを選定。

  ・権威ある専門家に依頼し、国家・機関の配置および連携状況、発展の傾向、研究開発の重点等の角度から詳細な解説を報告書に追記。

【データソース】

連番 分野 ジャーナル数 会議数 高影響力論文数
(引用頻度上位10%)
1 機械、運輸工学 521 2,779 73,481
2 情報、電子工学 987 18,590 204,705
3 化学、冶金、材料工学 1,188 4,068 274,485
4 エネルギー、鉱業工学 616 2,338 115,816
5 土木、水利、建築工学 576 1,154 63,930
6 環境、繊維工学 1,345 1,288 207,518
7 農業 1,484 1,093 204,873
8 医薬衛生 4,685 11,583 476,629
9 管理工学 813 1,260 50,986
12,215 44,153 1,672,423

【共引用クラスタリング分析結果】

連番 分野 共通
テーマ数
コア
論文数
ホット
スポット数
1 機械、運輸工学 8,158 33,822 114
2 情報、電子工学 20,495 88,795 67
3 化学、冶金、材料工学 28,481 117,286 66
4 エネルギー、鉱業工学 12,763 54,261 91
5 土木、水利、建築工学 7,223 31,099 102
6 環境、繊維工学 22,872 94,186 94
7 農業 22,006 89,460 92
8 医薬衛生 49,923 211,212 67
9 管理工学 5,147 21,001 82
177,068 741,122 775

3.2 工学開発フロントの選定方法

 工学開発フロントは、特許等開発段階にあるものの中での最前線と思われるエリアを集めたものであり、以下の方法で選定された。

(1)第一段階:基礎となる初期データセットの作成

 

①特許データ検索範囲と検索戦略案の検討

  ・クラリベイト社が、同社の特許検索データベースDerwent Innovationに基づき、Derwent世界特許インデックス(DWPI)マニュアルコード、《国際特許分類表(IPC分類)》、《アメリカ特許局分類体系(UC)》等の特許分類番号と特定の技術キーワードを採用し、9分野を構成する53領域の基本的な特許データ検索範囲と検索戦略を検討する。

②検索式の確定

  ・上記特許データ検索範囲と検索戦略を各分野の専門家が調整した後、図書情報専門家により特許検索式が作成される。

  ・クラリベイト社により、検索式を統合・確定し、「DWPIおよびDerwent Patents Citation index(DPCI)特許集合」で検索の上、該当領域の特許文献を取得。

  ・期間:2015年~2020年に検索された特許。特許引用期間は2021年1月まで

  ・さらに特許文献に焦点を当てるため、検索で得られた百万超の特許文献を「年間平均被引用回数」と「技術がカバーする広さ」を指標として、総合的な評価の上、各領域の上位10,000のパテントファミリーを抽出。

③さらに専門家からも提案

  ・専門家が直接工学開発フロントの候補を推薦。

(2)第二段階:

 

①9分野53領域における特許マップ作製

  ・9分野53領域で被引用回数上位10,000の高い影響力を持つ特許について、DWPIタイトルとDWPI抄録を使用して特許テキストの意味類似度を分析し共通テーマを分類し、53領域の技術開発の分布状況が直感的に分かるThemeScapeと称する特許マップを作製。ThemeScapeは、クラスター特許全体の技術情報をキーワード形式で表している。

(3)第三段階:

 

①特許テーマの発掘

  ・各領域の専門家は、図書情報専門家の補助の下で、特許マップが抽出した技術開発フロントから類似のフロントを集計し、各分野別の工学開発フロントの候補を選び出す。

  ・同時に、新興(エマージング)フロントの漏れを防ぐため、各分野の専門家は特許マップの中で以下のような作業を通じて特に低頻度で関連性が比較的低い技術的空白の解読を行う。

  ・各分野の専門家による報道や各国の戦略配置等の総合的な分析、高い影響力を持つ特許の研究判断

  ・図書情報専門家による「ピーク」や「ブルーオーシャン」等の解読

  ・さらに、アンケート調査や専門家による複数回の議論により、各分野で10領域程度を選別し、最終的に9分野計93領域を選定。

②キー工学リサーチフロントの選定

  ・各分野の発展性、将来性、注目度に基づき、工学開発フロントからそれぞれ3領域のキーリサーチフロントを選定。

  ・権威ある専門家に依頼し、国家・機関の配置および連携状況、発展の傾向、研究開発の重点等の角度から詳細な解説を報告書に追記。

4.グローバル工学フロント選定

 工学リサーチフロントと工学開発フロントの分類についてより詳しく理解するため、一覧表にまとめた。

参考資料
工学リサーチフロントと工学開発フロント(9分野)の分類一覧表(PDFファイル)


1. 2021年12月20日 北京だより「《注目分野》リサーチフロント2021について

2. 《全球工程前沿2021》报告发布会 2021年12月14日