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【23-013】《全人代》2023年政府活動報告の科学技術イノベーションに関する発言

JST北京事務所 2023年03月08日

1.概要

 2023年3月5日から開催された中国の全国人民代表大会(国会に相当)において、李克強国務院総理から2023年政府活動報告がなされた。主に科学技術イノベーションに関する発言の概要を速報する。

2.昨年(2022年)および過去5年間の活動の回顧

(1)科学技術イノベーションの成果とイノベーションが発展を支える能力の増強

・ 新型挙国体制をうち立て、国家実験室を設置し、全国の重点実験室の再編を段階的に推進した。

・ 一部の基幹核心技術の開発が新たな進展を見せ、有人宇宙飛行、月・火星探査、深海・地球深部探査、スーパーコンピュータ、衛星測位、量子情報、原子力発電、大型旅客機製造、人工知能等分野においけるイノベーションの成果が生み出された。

・ 社会全体の研究開発費の対GDP比が2.1%から2.5%強に上昇した。

・ 経済成長に対する科学技術進歩の寄与率が60%以上に達した。

(編者註)

1)有人宇宙飛行
2022年11月:有人飛行船「神舟15号」ドッキングに成功。初めて3モジュール・3隻構造を形成

2)火星探査:
2022年5月:火星探査車「祝融号」が火星の水の活動兆候を発見

3)スーパーコンピュータ
2022年6月:スパコン「TOP500」が発表 中国からが最多

(2)経済構造の一層の最適化

・ ハイテク製造業、設備製造業の付加価値額がそれぞれ年平均10.6%、7.9%伸びた。

・ デジタル経済の成長により新産業・新業態・新モデルの付加価値額がGDPの17%以上を占めた。

(3)インフラ整備

・ 高速鉄道の営業距離が25,000kmから42,000kmに、高速道路の営業距離が136,000kmから177,000kmに延伸。

・ 空港の受入能力を4億人分増加。

・ 発電設備容量を40%以上増強。

・ 地区級都市でギガビット級光ファイバーを整備し、すべての行政村でブロードバンドが普及。

(4)改革開放の持続的推進

・ 「行政簡素化と権限委譲、サービスの最適化」の改革を一層進め、ビジネス環境が明らかに改善された。

・ 市場参入規制を緩和するため市場参入ネガティブリスト制度(行政許認可事項のリスト化)を実施し、最新版リストでは規制項目数を64%削減した。

・ 廃止または委譲された許認可事項は1,000以上。

・ 国の許認可が必要な投資分野を9割以上削減。

・ 工業製品生産許可証を60種類から10種類に削減。

・ 建設工事プロジェクトの全工程審査期間を120業務日以内に短縮。

・ デジタル政府の建設により90%以上の行政サービスをオンライン化し、戸籍証明書や社会保険の切り替え等200以上の行政サービスがどこでも受けられるようになった。

(5)生態環境の改善

・ 生態環境が明らかに改善され、「美しい中国」建設における重要な一歩を踏み出した。

・ GDP1単位当たりのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量がそれぞれ8.1%、14.1%低下した。

・ 地区級以上の都市のPM2.5平均濃度が27.5%低下し、重度大気汚染の日数が50%以上減少した。

・ 優良な地表水の割合が67.9%から87.9%に改善した。

(6)産業構造の最適化・高度化

・ 一連の科学技術イノベーション重要プロジェクトを実施し、基幹核心技術開発を強化した。

・ 高等教育機関、科学技術研究機関の機能の発揮をはかり、新型研究開発機関の発展を支援した。

・ 国際科学技術イノベーションセンターと地域科学技術イノベーションセンターの整備を推進し、統合型国家科学センターを配置して整備した。

・ 基礎研究と応用基礎研究を支援し、全国の基礎研究費が5年間で倍増した。

・ 科学研究のプロジェクト管理・経費管理制度を改革し、科学研究機関と研究者により大きな自主権を与え、広範な研究者を煩雑な事務作業から解放した。

・ 知的財産権の保護を強化し、知的創造意欲を引き出した。

・ 科学技術関連の国際交流・協力を促進した。

・ 市場化メカニズムによって企業のイノベーションを奨励するため企業の研究開発費加算控除比率を不断に引き上げ、製造業企業と研究開発型中小企業の研究開発費加算控除比率をそれぞれ50%、75%から100%に引き上げ、さらにその他の加算控除比率75%の企業を対象に一時的に100%に引き上げた。

・ イノベーション促進のための企業の基礎研究、設備企業の基礎研究、設備取得に対する優遇税制の年間実施規模が1兆元を超えた。

・ イノベーション促進金融政策ツールを創設し、ベンチャー投資などの発展を誘導した投資などの発展を誘導した。

・ 企業の研究開発費が2桁の伸び率を保持した。

・ 企業の早急な設備更新・技術改良を奨励するために、固定資産加速償却という優遇税制を製造業全体に適用させた。

・ インターネットの通信速度の引き上げと料金の引き下げを継続して推し進め、「インターネット+」を発展させ、製造業のデジタル化・スマート化を強力に推進した。

・ モバイル回線数が14億5,000万回線に増加した。

・ 認証などの生産者向けサービス業を発展させ、品質管理と品質インフラ(NQI)の整備を強化し、中国製造の品質と競争力が向上した。

(7)グリーン・低炭素化

・ 超低排出の石炭火力発電ユニットは1,050ギガワット以上に増加した。

・ 再生可能エネルギー発電設備容量は650ギガワットから1,200ギガワット以上に増加した。

・ クリーンエネルギー消費の割合が20.8%から25%以上に拡大した。

・ 気候変動に関する国際協力に積極的に参加し、グローバル気候ガバナンスの推進に中国が貢献した。

(8)貧困脱却、民生の改善

・ 優秀な人材を医療支援団、教育支援団、科学技術特派員として貧困地区に派遣し、当該地区の加速度的発展と人々の安定した収入増を促進した。

・ 公的教育費の対GDP比が毎年4%以上を保ち、学生1人当たりの公的教育費が大幅に増加した。

・ 義務教育修了率を93.8%から95.5%に引き上げた。

・ 高等教育の粗就学率が45.7%から59.6%に向上し、中・西部地区出身者および農村出身者を対象とする入試枠が年々拡大した。

・ 経済的困難を抱える大学生を対象に貸与型政府奨学金の限度額を大幅に引き上げた。

・ 「強基計画」と基礎学科卓越人材育成計画を実施し、288の基礎学科優秀学生育成拠点を整備の上、世界一流大学・学科づくりを継続的に推進し、発展の人材基盤を強化し続けた。

(9)その他の言及

・ 財政健全性を損なう「ばらまき」は行わず、経済が困難の中でも安定的に成長するよう促した。

・ 積極的な財政政策を進める中でも財政赤字を合理的に設定し、過去5年間の財政赤字のGDP比を3%以内に抑え、政府債務残高の対GDP比を50%前後に抑えた。

・ 財政移転を拡大し、中央一般公共予算支出に占める地方への移転支出の割合を70%前後に引き上げた。

3.2023年の政府活動についての提案

(1)全体(主要目標等)

・ 安定を保ちつつ発展を進める基調を堅持する。

・ GDPの伸び率は5%前後とする。

・ 財政赤字の対GDP比は3%とする。

・ 輸出入の量的安定と質的向上をはかり、国際収支を均衡に導く。

・ GDP1単位当たりのエネルギー消費量と主要汚染物質の排出量を引き続き減少させ、化石燃料の消費を重点的に抑制し、生態環境を着実に改善する。

・ 科学技術政策は自立自強に焦点を当てる。

(2)現代化産業体系構築の加速

・ 新型挙国体制を整え、基幹核心技術開発において政府主導を徹底し、技術革新において企業が主体となるよう位置づけを明確にする。

・ 国内の重要エネルギー資源・鉱産資源の探査・開発による賦存量・生産量増加を強化する

・ 在来産業・中小企業のデジタル化を加速し、ハイエンド化・スマート化・グリーン化に注力する。

・ 先端技術の研究開発と応用・普及を加速する。

・ 現代的物流体系の機能向上をはかる。

・ デジタル経済の促進と監理体制を整備した上でのプラットフォームエコノミーの発展を支援する。

(3)外資の誘致・利用

・ 市場参入規制を緩和し、現代サービス業を更に開放する。

・ 外資企業の内国民待遇を徹底する。

・ 環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)等の高水準な経済連携協定への加入交渉を積極的に推進する。

・ 貿易の経済を支える役割を持続的に発揮させる。

・ 外資企業をしっかりと支援し、指定重要外資プロジェクトの着実な実施を促す。

(4)発展パターンのグリーン化推進

・ クリーンで高効率な石炭利用と関連技術の研究開発を進め、新型エネルギー体系の整備を急ぐ。

・ 循環型経済を発展させるため、資源の節約・集約利用を推進し、重点分野の省エネ・低炭素化を一層推進する。