定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その18)
2022年01月20日 辻野 照久(元宇宙航空研究開発機構国際部参事)
今回は、定点観測シリーズの第18回目として、2021年10月1日から12月31日までの3か月の中国の宇宙開発動向をお伝えする。2021年の中国の年間打上げ回数は55回、軌道投入に成功した衛星数は109機といずれも過去最多であった。
2021年第4四半期の世界のロケット打上げ状況
本期間のロケット打上げ回数は、中国が19回(うち1回は打上げ失敗)、米国が11回、ロシアが9回、欧州が4回、日本が3回、ニュージーランド(NZ)が2回、イランが1回(打上げ失敗)、韓国が1回(打上げ失敗)で、全世界で50回であった。表1に2021年の世界各国のロケット打上げ回数を示す。全世界の年間打上げ回数(失敗を除く)は135回となり、過去最多であった1984年の129回の記録を37年ぶりに更新した。また中国の52回(失敗を除く)は1992年のロシアの54回に次ぐもので、1国の年間打上げ回数が50回以上になるのは29年ぶり。なお、最多記録は旧ソ連が達成した1982年の年間101回である。
*1 米国の[ ]内はスペースX社の打上げ回数(内訳) | ||||||||||
期間 | 中国 | 米国*1 | ロシア | 欧州 | 日本 | NZ | インド | イラン | 韓国 | 世界計 |
1月-3月 | 8(★1) | 11[9] | 5 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 27(★1) |
4月-6月 | 11 | 16[11] | 5 | 1 | 0 | 1(★1) | 0 | 2(★2) | 0 | 36(★3) |
7月-9月 | 17(★1) | 7[3] (★2) | 5 | 2 | 0 | 1 | 1(★1) | 0 | 0 | 33(★4) |
10月-12月 | 19(★1) | 11[8] | 9 | 4 | 3 | 2 | 0 | 1(★1) | 1(★1) | 50(★3) |
計 | 55(★3) | 45[31](★2) | 24 | 7 | 3 | 6(★1) | 2(★1) | 3(★3) | 1(★1) | 146(★11) |
中国と米スペースX社のロケット・衛星打上げ状況
この期間に中国は19回の打上げ(うち1回は打上げ失敗)を行い、自国衛星39機を打ち上げた。ミッションの内訳は、有人宇宙船が1機、地球観測衛星が14機、通信放送衛星が5機、宇宙科学衛星が1機、技術試験衛星が18機である。打上げに失敗した衛星は民間企業の2機であった。
表2に中国の打上げに使われたロケットや軌道投入された衛星などの一覧表、表3に2021年のロケット種別毎の打上げ回数と衛星数を示す。
衛星名 | 国際標識番号 |
打上げ年月日 |
打上げロケット |
射場 | 衛星保有者 | ミッション | 軌道 | |
Xihe (Taiyang Tance Kexue Jishu Shiyan Weixing) |
羲和 (太陽探測科学技術試験衛星) |
2021-091 | 2021/10/14 | 長征2D | 太原 | CAS | 宇宙科学 | SSO |
Hede 2E | 和徳 | 2021-091 | 和徳宇航 | AIS | ||||
Hede 2F | 2021-091 | AIS | ||||||
Shangye qixiang tance xingzuo shiyan weixing | 商業気象探測星座試験衛星 | 2021-091 | 不明 | 技術試験 | ||||
Tianshu 1 | 天枢 | 2021-091 | 火眼位置数智科技服務有限公司 | 技術試験 | ||||
Huayao (Jiaotong Shiyan weiing) |
華曜 (交通試験衛星) |
2021-091 | 華東師範大学第二附属中学 | 技術試験 | ||||
Guidao Daqi Midu Tance Shiyan Weixing |
軌道大気密度探測試験衛星 | 2021-091 | 不明 | 技術試験 | ||||
Tianyuan 1 | 田園 | 2021-091 | 南京理工大学 | 技術試験 | ||||
Jinzijing 2 | 金紫荊 | 2021-091 | 零重空間技術 | 地球観測 | ||||
SSS 1 | 大学生 小型衛星 |
2021-091 | 北京航空航天大学 | 技術試験 | ||||
SSS 2A | 2021-091 | 上海交通大学 | 技術試験 | |||||
Shenzhou 13 | 神舟 | 2021-092A | 2021/10/15 | 長征2F/G | 酒泉 | CMSEO | 有人宇宙船 | LEO |
Shijian 21 | 実践 | 2021-094A | 2021/10/24 | 長征3B/G2 | 西昌 | CAST | 技術試験 | GEO? |
Subsatellite | 2021-094C | |||||||
Jilin 1 Gaofen 02F | 吉林 高分 | 2021-097A | 2021/10/27 | 快舟1A | 酒泉 | 長光衛星技術公司 | 地球観測 | LEO |
Yaogan32-02-01 | 遥感 | 2021-099A | 2021/11/3 | 長征2C | 酒泉 | PLA | 地球観測 (SIGINT) |
LEO |
Yaogan32-02-02 | 2021-099B | |||||||
Guangmu | 広目 | 2021-100A | 2021/11/5 | 長征6 | 太原 | CAS | 地球観測 | SSO |
Yaogan35-01-01 | 遥感 | 2021-101A | 2021/11/6 | 長征2D | 西昌 | PLA | 地球観測 (SIGINT) |
LEO |
Yaogan35-01-02 | 2021-101B | |||||||
Yaogan35-01-03 | 2021-101C | |||||||
Gaofen 11-03 | 高分 | 2021-107A | 2021/11/20 | 長征4B | 太原 | 不明 | 地球観測 | SSO |
Gaofen 3-02 | 高分 | 2021-109A | 2021/11/22 | 長征4B | 太原 | 不明 | 地球観測 | SSO |
Shiyan 11 | 試験 | 2021-112A | 2021/11/24 | 快舟1A | 酒泉 | CAST | 技術試験 | LEO |
Zhongxing 1D | 中星 | 2021-114A | 2021/11/26 | 長征3B | 西昌 | PLA | 通信放送 | GEO |
Jinzijing 1-03 | 金紫荊 | 2021-117 | 2021/12/7 | 穀神星1 (CERES 1) |
酒泉 | 零重空間技術 | 地球観測 | LEO |
Jinzijing 5 | 2021-117 | |||||||
Tianjin 1 | 天津大学 | 2021-117 | 天津大学 | 技術試験 | ||||
Lize 1 | 麗澤 | 2021-117 | 中関村睿宸衛星創新応用研究院 他 | 技術試験 | ||||
Baoyun | 宝醞 | 2021-117 | 長沙天儀研究院 | 技術試験 | ||||
Shijian 6-05A | 実践 | 2021-122A | 2021/12/10 | 長征4B | 酒泉 | CAST | 技術試験 | LEO |
Shijian 6-05B | 2021-122B | |||||||
Tianlian 2B | 天鏈 | 2021-124A | 2021/12/13 | 長征3B | 西昌 | CAST | 通信放送 | GEO |
GeeSAT 1A | 2021-F10 | 2021/12/15 | 快舟1A | 酒泉 | GeeSpace | 技術試験 | LEO | |
GeeSAT 1B | ||||||||
Shiyan 12-01 | 試験 | 2021-129A | 2021/12/23 | 長征7A | 文昌 | CAST | 技術試験 | LEO |
Shiyan 12-02 | 2021-129B | |||||||
Ziyuan 1 02E | 資源 | 2021-131A | 2021/12/26 | 長征4C | 太原 | CEODE | 地球観測 | SSO |
Xiwang 3 | 希望 | 2021-131B | CAMSAT | 通信放送 | ||||
Tianhui 4 | 天絵 | 2021-134A | 2021/12/29 | 長征2D | 酒泉 | PLA | 地球観測 | LEO |
Tongxin Jishu Shiyan 9 |
通信技術試験 | 2021-135A | 2021/12/29 | 長征3B | 西昌 | CAST | 技術試験 | GEO |
ロケット種別 | 長征2 | 長征3 | 長征4 | 長征5 | 長征6 | 長征7 | 快舟 | 双曲線 | 穀神星1 | 外国 ロケット |
計 |
打上げ回数 | 13 | 12 | 14 | 1 | 4 | 4 | 4(★1) | 2(★2) | 1 | N/A | 55(★3) |
衛星数 | 43 | 13 | 23 | 1 | 15 | 5 | 5(★2) | 2(★2) | 5 | 1 | 113(★4) |
本期間に米国ではスペースX社の打上げが8回あり、ISSへの4名の搭乗員輸送と物資輸送(9機の超小型衛星を含む)、NASAの小惑星衝突ミッションDART、X線天文衛星IXPE、トルコの通信衛星、3回の打上げで計153機のStarlink衛星及び2機のBlackSky衛星で合計169機の衛星打上げに成功した。
宇宙政策
(1)2021年版宇宙白書
5年ごとに発行される中国の宇宙白書は、前回2016年版が同年12月に発表された。2021年版は現時点でまだ発表されていないが、2021年に過去最多の年間55回の打上げを行うなど5年間の宇宙活動で顕著な実績を残しており、今後も中国宇宙ステーション拡張や月探査の第4期計画(有人月基地の研究を含む)などで大きな進展が見込まれ、近々にそれらの計画が発表されるであろう。
(2)第14次5カ年計画におけるCASCの総合発展規画
中国航天科技集団公司(CASC)は10月15日に第14次5カ年計画におけるCASCの総合発展規画を発表した[1]。高品質の開発、イノベーション、実行メカニズムの改善、人材育成などを通じて宇宙強国の基盤を確立することを主眼としている。
宇宙ミッション1 地球観測分野
第4四半期に打ち上げられた中国の地球観測衛星は、計14機である。
(1)中央政府の地球観測衛星
①高分(Gaofen:GF)シリーズ
11月20日に「高分11-03」、11月22日に「高分3-02」をいずれも長征4Bロケットにより打ち上げた[2]。「高分11」シリーズは光学観測衛星で機能の詳細は不明だが解像度は中国で最高水準とみられる。2016年と2018年に次いで3機目が打ち上げられた。「高分3」シリーズはCバンドのレーダ衛星で、2016年の初号機以来5年ぶりに2機目が打ち上げられた。
②遥感(Yaogan:YG)シリーズ
人民解放軍(PLA)は11月3日に長征2Cロケットにより2機1組の「遥感32-02」を、また11月6日に長征2Dロケットにより3機1組の「遥感35」で計5機を打ち上げた[3]。いずれもSIGINT(電波信号受信)衛星とみられる。「遥感32」シリーズは2018年に最初の01組が打ち上げられたが、UCSの衛星データベース[4]によれば2機中1機が運用衛星リストから外されている。このため代替機が急遽打ち上げられたとみられる。「遥感35」は今回が初の打上げで、遥感シリーズの最新型である。35Aと35Bの2機は中国空間技術研究院(CAST)の子会社である東方紅衛星公司(DFH)が製造した光学信号受信衛星、35Cは上海航天技術研究院(SAST)が製造した電波信号受信衛星(すなわち受動レーダ衛星)とみられている。
③「天絵(Tianhui:TH)」シリーズ
12月29日、PLAは立体地図作成衛星「天絵4」を長征2Dロケットにより打ち上げた。天絵シリーズは立体地図作成や測量など地理関連部門における応用に焦点を当てた陸域観測衛星であり、民生用にも利用されるが、衛星の運用はPLAが行っている。
これまでに光学観測の「天絵1」とレーダ観測の「天絵2」が4機ずつ打ち上げられており、「天絵3」はまだ打ち上げられていない。新しい機種となる「天絵4」はCASTが開発した[5]。
(2)中国科学院の地球観測衛星
①12月26日、中国科学院対地観測・デジタル地球科学センター(CEODE)は「資源(Ziyuan)1-02E」を長征4Cロケットにより打ち上げた[6]。
②11月5日、中国科学院は広範囲の地球観測を行う「広目(Guangmu)1号」(別名「SDGSAT 1 (Sustainable Development Science Satellite 1)」)を長征6ロケットにより打ち上げた[7]。
(3)地方政府関連の地球観測衛星
①吉林(Jilin:JL)
吉林省の長光衛星技術公司は快舟1Aロケットにより「吉林1高分02E」衛星を打ち上げた[8]。打上げに成功した吉林衛星は累計で30機となり、うち28機が運用中。
(4)民間企業の地球観測衛星
①金紫荊(Jinzijing)
本期間に零重空間技術公司の小型地球観測衛星「金紫荊」(別名Golden Bauhinia)が3機打ち上げられた。うち1機は宇宙科学衛星「羲和(Yihe)」と同時に打ち上げられた「金紫荊2号」[9]で、他の2機は穀神星1型ロケット(CERES-1)により打ち上げられた「金紫荊1-03号」[10]と「金紫荊5号」[11]である。
宇宙ミッション2 通信放送分野
本期間に打ち上げられた中国の通信放送衛星は計5機である。
(1)軍事通信衛星
11月26日、PLAは静止通信衛星「中星(Zhongxing:ZX)1D」(別名「烽火(Fenghuo:FH)2D」)を打ち上げた。「烽火」は軍における音声、ファックス、データ、画像、総合業務などの通信を行う衛星で、東方紅4型衛星バスを用いた最新型の3機目である[12]。なお、「ZX 1B(またはFH 2B)」は打ち上げられていない。
(2)データ中継衛星
12月13日、有人宇宙活動を支援するデータ中継衛星「天鏈(Tianlian)2B」が長征3Bロケットにより打ち上げられた[13]。
(3)アマチュア無線衛星
12月26日、中国アマチュア無線協会(CAMSAT)はアマチュア無線衛星「希望(Xiwang)3号」(別名「CAS(China amateur Radio Satellite)-9」)を6ユニットのキューブサットで製作し、打ち上げに成功した[14]。2021年末現在運用中のアマチュア無線衛星は7機である。
(4)自動船舶識別(AIS)
10月14日、和徳宇航公司はAIS衛星「和徳(Hede)2E」と「同2F」を2機同時に、宇宙科学衛星「羲和」と相乗りで打ち上げた[15]。これまでに打ち上げた5機と合わせて、7機で「天行者(Tianxingzhe)」衛星群を構成している。
宇宙ミッション3 航行測位分野
2021年には航行測位衛星の打上げは行われなかった。2022年以降、北斗2型の静止衛星などが順次北斗3型に更新されていくとみられる。
今回初打上げで技術試験衛星に分類した「天枢」は、北斗導航システムの測位補強を目的としており、今後衛星数が増えて実用化段階に入れば航行測位衛星に分類される可能性がある。
11月5日、北斗導航系統弁公室(CSNO)は、アフリカにおける以下の10分野での北斗応用のシナリオを発表した[16]。
①道路運輸車両、②鉄道事業、③精密農業、④国際捜索救助、⑤国土測量、⑥デジタル施工、⑦スマートマイニング(智慧鉱区)、⑧公共安全、⑨野生動物保護、⑩正確な時間と空間のスマートシティ
例えば道路輸送では、北斗端末を搭載することで事故による死傷者数が顕著に減らせるとしている。
宇宙ミッション4 有人宇宙活動分野
(1)中国宇宙ステーション(CSS)「天宮(Tiangong:TG)」
12月末時点では「天和(Tianhe:TH)」、「神舟(Shenzhou:SZ)13号」、「天舟(Tianzhou:TZ)2号」及び「天舟3号」の4つの要素からなる複合飛行体として運用されている。2022年には宇宙実験モジュール「問天(Wentian:WT)」(5月頃)及び「夢天(Mengtian:MT)」(8月頃)が打ち上げられ、天和に接続される予定。
(2)有人宇宙船「神舟」
10月15日(中国時間10月16日)、神舟13号が中国として最長となる6か月間の宇宙飛行を目指して打ち上げられた[17]。搭乗員は3回目の飛行となる翟志剛(Die Zhigang)、2回目の飛行となる女性の王亜平(Wang Yaping)及び初飛行の葉光富(Ye Guangfu)の3名である。11月7日、翟と王の2人は6時間にわたる船外活動を実施した[18]。
宇宙飛行士の累積宇宙滞在日数は12月末現在で672日となり、2022年1月5日には686日のカナダを抜いて世界第7位、2月23日には831日のフランスを抜いて世界第6位となる見込み。
(3)物資補給船「天舟」
天舟2号は一旦天和から分離したが、再度ドッキングを行い、元に戻った。2022年4月には「天舟4号」が打ち上げられる予定[19]。
宇宙ミッション5 宇宙科学分野
(1)欧州との火星探査協力
12月3日、欧州宇宙機関(ESA)の火星周回機「Mars Express」(2003年6月2日打上げ)は中国の火星探査機「天問(Tianwen)」が放出した火星ローバ「祝融(Zhurong)」との通信中継に成功した[20]。
(2)月探査機「嫦娥」
12月27日、国家航天局(CNSA)の呉艶華(Wu Yanhua)副局長は、今後の月探査機の計画について発表した。今後月探査の第4期計画として打上げが予定されている「嫦娥(Chang'e)6号」・「嫦娥7号」・「嫦娥8号」の中で、「嫦娥7号」を先に打ち上げると表明した[21]。
(3)火星探査機「天問1号」
10月20日前後、太陽を挟んで地球と火星がほぼ一直線に並んだ状態で「天問1号」は太陽の強力な電磁波により通信が阻害される現象(「日凌」といい、地球近傍の衛星の場合でも衛星の背後に太陽が入った場合に起こる)に遭遇したが、この期間を乗り切る(中国語で「度過」)ことに成功した[22]。
地球と火星の間に太陽が入った時のイメージ。火星からの電波は太陽や電磁波に遮られて正常に地球との通信ができなくなる。
(4)太陽観測
10月14日、中国科学院は太陽探測科学技術試験を行う宇宙科学衛星「羲和(Xihe)」(別名「CHASE (Chinese Hα Solar Explorer)」)を長征2Dロケットにより打ち上げた[23]。
宇宙ミッション6 技術試験分野
本期間に打ち上げられた技術試験衛星は、計18機であった。
(1)中央政府の衛星
CASTは各種の技術試験衛星を計8機打ち上げた。
①「通信技術試験(Tongxin Jishu Shiyan:TJS)」衛星シリーズ
12月29日に長征3Bロケットにより「通信技術試験9号」が打ち上げられた。これまでに打ち上げられた各種のTJS衛星のうち、「TJS 1」及び「TJS 4」に次ぐ3機目の静止SIGINT衛星とみられている[24]。2021年における長征ロケット系列による最後の打上げで、長征ロケットの累計打上げ数は405機となった。
②「実践(Shijian:SJ)」衛星シリーズ
10月24日に長征3Bロケットにより打ち上げられた「実践21号」は、実践シリーズの最新機で、デブリ低減技術の技術試験を目的としていると推測されている。ほぼ静止軌道に近いが、完全に静止ではなく、近地点と遠地点の高度に差があり、楕円軌道でドリフトしているようである。また副衛星(Subsatellite)を同時に打ち上げているが、目的や技術仕様などの詳細は不明。
12月10日に長征4Bロケットにより2機1組の「実践6号」の5組目が打ち上げられた[25]。
③「試験(Shiyan:SY)」衛星シリーズ
11月24日に快舟1Aロケットにより「試験11号」が[26]、12月23日に長征7Aロケットにより2機1組の「試験12号」[27]が打ち上げられた。いずれも試験の目的や搭載機器などの詳細は不明。
(2)民間や大学の衛星
①宇宙科学衛星「羲和(Yihe)」と同時に打ち上げられた7機の小型衛星
・「商業気象探測星座試験衛星(Shangye qixiang tance xingzuo shiyan weixing)」[28]はGPS掩蔽を利用した気象観測の試験を行う衛星である。運用者や製造者等の詳細は不明。
・上海市宝山区に本拠地を置く火眼位置数智科技服務有限公司(Huoyan Digital Intelligence Technologies Service Co Ltd)は北斗導航衛星の補強を目的とする「天枢(Tianshu)1号」を打ち上げた[29]。
・華東師範大学第二附属中学の生徒は上海航天技術研究院(SAST)の技術者の助力を得て「華曜(Huayao)」(別名「交通試験衛星」)を打ち上げた[30]。
・「軌道大気密度探測試験衛星(Guidao Daqi Midu Tance Shiyan Weixing)」は深圳航天東方紅衛星公司[31]が製造した。運用機関などの詳細は不明である。
・南京理工大学は6ユニットで質量10kgのキューブサット「田園(Tianyuan)1号」を打ち上げた[32]。
・大学生小型衛星(Student Small Satellite:SSS)
北京航空航天大学と上海交通大学はそれぞれ「SSS 1号」[33]と「SSS 2A号」[34]を打ち上げた。
②穀神星(CERES)ロケットにより12月7日に打ち上げられた3機の小型衛星
・天津大学は「天津(Tiajin)1号」を打ち上げた[35]。
・中関村睿宸衛星創新応用研究院、北京英視睿達科技公司及び聯合天儀研究院は共同で「麗澤(Lize)1号」を打ち上げた[36]。
・長沙天儀研究院は12ユニットで質量20kgのキューブサット「宝醞(Baoyun)」を打ち上げた[37]。
宇宙ミッション7 宇宙輸送分野
中国の年間打上げ回数は55回で、過去最多であった2020年の39回を大幅に上回った。1国の打上げ回数が50回以上となったのは1992年のロシア以来29年ぶり。
本期間における打上げ失敗は快舟1Aで、GeeSpace社[38]のGeeSAT衛星2機の軌道投入ができなかった。
参考資料: 2021年末における遥感衛星の打上げ状況
遥感衛星の新シリーズとして「遥感35」が今回初めて打ち上げられ、打上げに成功した遥感衛星は累計91機となった。このうち6機が運用を終了しており、2021年末現在の運用数は85機である。この他に「遥感33」が唯一の打上げ失敗であり[39]、代替機として「遥感33R」が打ち上げられている。2016年以降に打ち上げられた30番台の衛星はSIGINTやELINT衛星が大部分を占めており、民生用の光学衛星やレーダ衛星と同機能のものは全く見られなくなった。2021年末における遥感衛星の打上げ状況を下表に示す。
表 遥感衛星の打上げ状況(2021年末まで)
以上
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8. 2021年10月28日、光明日報、吉林一号高分02F卫星发射成功
9. 2021年12月9日、Gunter's Space Page、Jinzijing 2 (Golden Bauhinia 2)
10. 2021年12月9日、Gunter's Space Page、Jinzijing 1-01, 1-02, 1-03 (Golden Bauhinia 1-01, 1-02, 1-03)
11. 2021年12月9日、Gunter's Space Page、Jinzijing 5 (Golden Bauhinia 5)
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24. 2021年12月30日、海外網、我国发射通信技术试验卫星九号
2021年12月29日、Gunter's Space Page、TJS 1, 4, 9 (Qianshao-3 1, 2, 3 ?)
25. 2021年12月10日、新京報、实践六号05组卫星成功发射
26. 2021年11月25日、北京日報、我国成功发射试验十一号卫星
27. 2021年12月23日、新華報、我国成功发射试验十二号卫星01星02星
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33. 2021年11月19日、捜狐網、微纳星空助力北航, APSCO首颗国际重大合作小卫星APSCO-SSS-1成功升空
34. 2021年10月15日、中国日報網、仰望星空,梦想成真,上海交通大学APSCO-SSS-2A卫星成功发射!
35. 2021年12月8日、環京津網、"天津大学一号"卫星成功发射
36. 2021年12月15日、潇湘晨報、"丽泽一号"卫星发射成功进入预定轨道
37. 2021年12月7日、鳳凰網、一箭五星!"宝酝号"卫星成功发射!----探索浩瀚宇宙,讲述中国酿酒哲学!
38. GEELY、What is Geespace?
39. 2018年5月23日、快科技、长征四号丙火箭发射遥感33号卫星失利:残骸坠落
定点観測シリーズバックナンバー:
2016年10月12日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その1)」
2017年04月21日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その2)」
2017年10月26日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その3)」
2018年04月13日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その4)」
2018年10月18日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その5)」
2019年01月10日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その6)」
2019年04月15日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その7)」
2019年07月17日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その8)」
2019年10月16日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その9)」
2020年01月21日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その10)」
2020年04月28日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その11)」
2020年07月13日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その12)」
2020年10月15日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その13)」
2021年01月19日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その14)」
2021年04月22日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その15)」
2021年07月12日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その16)」
2021年10月25日 「 定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その17)」