【21-14】コロナ対応で中国1位の評価 アジア・太平洋地域が上位占める
2021年05月17日 小岩井忠道(科学記者)
今年初めから5月上旬までの新型コロナウイルス感染対応を評価した国・地域別ランキングを、ニッセイ基礎研究所の高山武士准主任研究員が12日公表した。高山氏は2月にもコロナ禍対応を評価したランキングを発表している。2月の評価では9位だった中国が1位に浮上したほか、10位までにアジア・太平洋の7カ国・地域が入った。
(高山武士高山ニッセイ基礎研究所准主任研究員提供)
(編集者注:高山氏は今回2020年末時点の評価ランキングも併せて公表しており、表の順位の右欄、上昇、下降の矢印付きた数字は、2020年末時点の順位との差)
致死率大幅改善で浮上
中国は、昨年7月に行われた最初の評価では、5位だった。ところが前回2月の評価では、感染者数に対する死者数を表す「致死率」だけが極端に悪く最低ランクの1点(10点満点)だったのが響き、順位を9位に落としていた。今回のランキングは、これまでと評価手法が異なり、今年1月1日から5月9日までという直近4月余りに限って各国・地域の新型コロナウイルス感染対応を比較しているのが特徴。上位だけでも順位に相当の変化があり、「致死率」を大きく下げ「10点」という最高の評価を得た中国が総合評価1位に浮上した。
2位(かっこ内は2月発表の順位、以下も同じ)は、ニュージーランド(2)、3位はノルウェー(6)。4位以下10位までは、シンガポール(3)、オーストラリア(11)、フィンランド(17)、ベトナム(15)、アイルランド(30)、香港(10)、韓国(13)の順となっている。ノルウェー、フィンランド、アイルランドを除き、7カ国・地域をアジア・太平洋地域で占めているのが目立つ。
2月の評価に比べると、欧米主要国は米国が29位から14位、カナダが32位から17位にそれぞれ上昇したものの、英国34位(2月時点は46位)、フランス36位(同45位)、ドイツ37位(同26位)、イタリア39位(同43位)と低位に並んでいる。南米や欧州の国が下位に集中している図式は変わらず、ハンガリーやチェコといった東欧の国がさらに順位を落としているのが目を引く。
評価の対象となったのは50カ国・地域で、「人口1万人当たりの感染者数」、「感染拡大率(累積感染者に対する新規感染者比率)」、「致死率(感染者に対する死者比率)」の三つの指標で新型コロナウイルスによる直接の被害(「コロナ被害」)を評価している。さらに「経済被害」を、国内総生産(GDP)の変化で評価している。コロナ禍前に公表された国際機関などの見通しと、主に今年4月に公開された国際通貨基金(IMF)の見通しを用いてコロナ禍によって失われたとみなされるGDPを算出し、「経済被害」とみなす。これら四つの指標で総合評価しているが、「コロナ被害」の指標が3あるのに対し、「経済被害」は1しかないため、「コロナ被害」が高めに評価されるという特徴を持つ。
変異株、ワクチンが今後の評価左右
こうした評価手法の特徴を明らかにしたうえで高山氏は、今後の評価に大きな影響を与えるのは変異株の流行やワクチン接種の進展とみている。今回、アジア・太平洋の国・地域がランキングの上位を占めたことに関連し、「アジア・太平洋地域以外のワクチン接種が進んだ国の一部では、直近では感染者数の減少が見られるものの、年初時点では感染者が多かった国も多い。その結果、順位が落ちてしまっている。今後ワクチン接種が進む国で感染者が減っていけば、順位が上がってくる可能性も十分に考えられる」との見方を示した。
さらに、ノルウェー、フィンランド、アイルランドといった欧州の一部の国がランキング上位に名を連ねたことを今回の評価結果の注目点として挙げ、「今後、ワクチン普及や変異株の状況によって変化があるかもしれない」と、アジア・太平洋地域優位の状況が変わりうる可能性を併せて指摘した。
14位から29位に大きく順位を落とした日本については、なかなか感染拡大は収束せず「コロナ被害」が相対的に大きくなっていることを理由に挙げている。また最初の評価以来、1位を維持していた台湾が12位に大きく順位を落とした理由については、感染拡大率が高まったためとしている。変異株の流行に関しては、欧州などを中心に昨年末から今年かけて封じ込め政策の強化を余儀なくされた国が多く、「GDP損失」を拡大させる要因になったとしている。
関連サイト
ニッセイ研究所リポート「コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?-50か国ランキング(2021年5月更新版)」
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