2020年10月12日-10月16日
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北京大研究チーム「感染したばかりの新型コロナ感染者の呼気に大量のウイルス」

2020年10月12日

 米国感染症学会の機関誌である「Clinical Infectious Diseases」(IF:9.055)はこのほどオンラインで、北京大学環境科学・工程学院、北京市朝陽中国疾病予防管理センターなどのチームが共同でまとめた研究結果「Coronavirus Disease 2019 Patients in Earlier Stages Exhaled Millions of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Per Hour」を掲載した。研究連絡著者は、北京大学環境科学・工程学院の要茂盛教授で、筆頭著者は北京市朝陽中国疾病予防管理センターの馬建新副主任医師。

 研究チームは新型コロナウイルス感染者60人近く(輸入症例と北京の現地症例)、健康な人及び新型コロナウイルスではない呼吸器系感染症感染者15人を対象にして、北京大学が発明した呼気採取法を活用し、それら被験者の呼気凝縮液を採取した。

 研究チームは、RT-PCRで検査した結果、感染したばかりの新型コロナウイルス感染者の呼気には大量の新型コロナウイルスが含まれており、1時間当たりの排出量は数百万個に達することを発見した。また、新型コロナウイルス感染者の呼気の新型コロナウイルスの陽性率は26.9%(総サンプル量n=52)だった。一方、新型コロナウイルス感染者がいる環境の関連物の表面の陽性率は5.4%(総サンプル量n=242)にとどまった。

 このほか、研究チームは医療環境や隔離施設に用いられているホテルの環境空気に対しても、新型コロナウイルスの検査を行ったところ、トイレの空気など、一部のサンプルから新型コロナウイルスが検出された。濃度は1立方メートル当たり6000個だった。だが、病院で換気などの措置を講じたため、空気中の新型コロナウイルス濃度は低くなり、RT-PCR検出限界を下回った。

 北京大学の公式サイトによると、同大学のチームは以前同じ方法で、インフルエンザ患者の呼気に含まれるウイルスを採取し検査した。今回の研究により、人の呼気自体が、新型コロナウイルスが排出、伝播する非常に重要なルートであることが証明された。また呼気に含まれる大部分の微小粒子状物質は、PM2.5(2.5マイクロメートル以下の物質)より小さかった。それにより、新型コロナウイルスがエアロゾルにより拡散することが明らかになり、今後の空気感染予防や新型コロナウイルス対策に重要な科学的根拠が提供されることになる。

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