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【24-15】評価さらに高まるアジア地域 革新的企業・機関ランキング

小岩井忠道(科学記者) 2024年03月13日

 国際学術・特許情報調査・コンサルティング企業「クラリベイト」は3月6日、技術研究とイノベーションで世界をリードする組織として評価・順位付けした100の企業・機関を「Top 100グローバル・イノベーター2024ランキング」として公表した。同社は13年前から毎年「Top 100グローバル・イノベーター」を公表しているが、100の企業・機関を1位から100位まで順位付けしたのは今回が初めて。1位は韓国のサムスン電子で、2位キヤノン、3位本田技研工業、4位トヨタ自動車、5位セイコーエプソン、6位LG化学、7位華為技術(ファーウェイ)、8位富士フイルム、9位ファナックと、上位9位までを韓国、日本、中国のアジア企業が占めた。

100位内にアジアの62企業・機関

「クラリベイト」は、信念と一貫性を持ってイノベーションに投資し、その活動が分野や業界を超えて、未来の方向性を形づくっている企業・機関を「グローバル・イノベーター」としている。順位をつけず単に上位100企業・機関を選んでいた昨年までは日本と米国の企業が大半を占めており、今回も大きな変化は見られない。日本は昨年と同じ38社と、3年連続で最も多くの企業が選ばれた。このほか台湾が11企業・機関(昨年と同数)、韓国が8企業(昨年から3増)、中国本土が5企業(同1増)と、アジア勢が100位内に62企業・機関と過半数を占めているのが目を引く。前年に比べ4増であることから「アジアがグローバルイノベーションエコシステムにおけるリーダーシップを拡大し続けている」と、「クラリベイト」はみている。

 日本に次いで多いのは前年同様、米国の17企業(前年より2減)だったが、米国を除くアジア地域以外の国はドイツが7企業、フランスが6企業・機関、スイスが4企業、オランダが3企業、スウェーデンが1企業にとどまった。

図 今年のランクインイノベーターの特徴

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(クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2024ランキング」から)

 近年、世界大学ランキングで躍進が目立つオーストラリアの企業・機関の名は見られない。ただし「クラリベイト」は、上位1000まで広げると、今後、中国本土や台湾、日本、韓国だけでなく、太平洋地域のイノベーターも継続的な成長が予測される、との見通しも示している。

表 Top 100グローバル・イノベーター2024ランキング

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(クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2024ランキング」から。
上記アイコンは左から「13年連続受賞」「2020~2023年のInnovator to Watch」「再選出」「初選出」。)

組織の力量さらに厳密に評価

 イノベーションには、創造性、ひらめきの素、独創性が含まれており、これらが組み合わさって人類の継続的な進歩につながっている。特許登録されているすべてのアイデアの優位性を評価することが、技術研究とイノベーションで世界をリードする組織かどうかを見極める有効な方法だ。こうした考えに立ち「クラリベイト」は、2000年以降に500件以上の特許を出願し、かつ直近5年間で100以上の特許を登録したという二つの条件を満たす約3500企業・機関の中から「Top 100グローバル・イノベーター」を選出した。技術や研究、またアイデア創出の競争が熾烈化するにつれ、より詳細かつ明確な検討が必要になったとして、今回初めてランク付けを導入し、評価法も一部変えている。特許が他者のアイデアに与えた影響力、特許が生み出した経済的資産、特許取得に投じた資金、特許の希少性という四つを指標とし、さらに厳密な評価を行った。

 今回選ばれた上位100企業・機関のうち、1位のサムスン電子、3位の本田技研工業、4位のトヨタ自動車をはじめとする18社は、2012年の初回以来13年連続で選出された。一方、台湾のエレクトロニクス企業、中強光電(80位)と、日本の精密機器メーカー、ディスコ(100位)が初めて選出された。分野別でみると、産業システムが前年から4増の12企業となったのが目を引く。このほか、半導体が2増えて13企業、ソフトウェア・メディア・フィンテックが1増えて3企業となった。一方、化学・素材は3減って8企業、産業コングロマリットも2減って6企業となっている。

関連サイト

クラリベイト・アナリティクス・ジャパン「日本企業は世界トップの38社選出 クラリベイト、Top100グローバル・イノベーター 2024を発表

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