中国の「双循環」戦略と産業・技術政策―アジアへの影響と対応 Index
米中摩擦の激化や新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、中国の発展戦略は調整を余儀なくされてきた。その対応としてまず提起されたのが、国内循環と国際循環の関係を再定義しようとする「双循環」戦略(2020年)である。折から策定中であった「第14次5カ年計画と2035年までの長期目標要綱」(2021年~)は、同戦略の考え方を踏まえた長期目標を提示している。
両者を関連づけて分析することで、中国の科学技術政策の今後の方向性を確認できるのではないか、本プロジェクトの最初の発想はこの点にあった。「双循環」は大きな方向性を示す発展戦略であるが、第14次5カ年計画ではより具体的な科学技術の発展目標、経済社会の発展目標が示されている。そこで、第1の問題意識は、前者を意識しつつ後者を整理・分析し、科学技術政策、産業政策の現状を確認することである。
第2の問題意識は、政策を論じる前提として、目まぐるしく変化する中国の産業・技術の現状やデジタル技術の社会への影響の実態を確認しておくことである。
また、「双循環」という以上、影響は対外関係にも及ぶはずであり、その予測が必要である。第3の問題意識はこの点に置いた。さらには、今後の展望にかかわることとして、中国が科学技術分野における米国との摩擦にどのように対応しようとしているのか、国際社会のなかでどのような特許戦略、行政対応を取ろうとしているのかを分析することも重要である。これを第4の問題意識とした。
本プロジェクトでは、上記の問題意識のもとに各分野の専門家の参加をあおぎ、意見交換を繰り返してきた。その過程で修正すべきと思われる論点も出てきた。各専門家は、意見交換を踏まえ、その知見を活かしながら最終報告を執筆中である。本コラムでは、こうした成果の一部を随時公表していくこととしたい。読者各位のご支持とご叱正をお願い申し上げる次第である。
アジア・太平洋総合研究センター・特任フェロー 大西康雄
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