「抗生物質を代表とする抗菌剤の乱用は、中国医療界における深刻な問題と化している。中国は世界で最も抗生物質の乱用が深刻な国と言える。」衛生部薬政司の姚建紅副司長は、抗生物質は中国人の健康に危害をもたらしていると指摘した。
「史上最も厳格」とされる「抗菌剤臨床管理弁法」という規定が14日に打ち出されたのに伴い、衛生部は抗菌剤の臨床使用の改善に向け、全国的な特別行動をスタートした。光明日報が19日に伝えた。
▽中国の1人あたり抗生物質使用量、米国の10倍
衛生部・薬物の適切使用に関する専門家委員会の肖永紅教授が2007年に行った調査結果によると、中国では毎年、抗生物質の原料約21万トンが生産されており、輸出分約3万トンを除くと、18万トンが国内で使用されている(医療用・農業用含む)。1人当たりの年平均消費量は約138グラムで、米国人の10倍となっている。消費量が多い薬品の上位10種には、セフラジンやセフトリアキソンナトリウムなどの抗生物質が半分以上を占めている。
最もよく使われる抗生物質は、点滴に入っているペニシリンだ。衛生部の調査データによると、中国では1人あたり年平均8本の点滴を打つことがわかった。この数字は世界平均の2.5-3.3本を大きく上回り、中国はすでに「点滴大国」となっている。このほか、アモキシシリン、セファロスポリン系のセフロキシム・セフチゾキシムなどの内服薬もよく使われている。
また、小児科における抗生物質乱用も深刻だ。北京児童医院の楊永弘教授によれば、北京児童医院の1日あたり患者数は約1万人で、うち約3分の1の子供が点滴を打ち、点滴薬には抗生物質が含まれているという。2009年に北京、上海、広州、武漢、重慶の病院の5カ所の病院の小児科で調査を行ったところ、抗生物質の使用量は国外の小児科の2-8倍に達していた。
▽抗生物質を使う必要がないケースが8割
上海交通大学医学院付属瑞金医院の朱正綱院長によると、抗生物質を代表とする抗菌剤は現在、最も幅広く使用されている薬物であり、漁業・牧畜業においても魚や動物の発病率を抑えるため、抗菌薬が飼料添加物として使用されているが、その結果として、薬剤耐性が強い菌株が出現し、細菌の薬剤耐性が急速に高まり、薬剤性の病気が増え、最終的には抗生物質が全く効かない「スーパー細菌」が誕生し、薬で対応できない事態に陥る可能性もあるという。
朱院長は、「臨床医の中には自分の専門の知識と技能にばかりに目をむけ、全面的で系統だった抗菌剤の知識と適切な薬剤使用知識に欠けている人が多い。このため、病因の検査を重視せず、過去の経験に頼る薬剤使用が習慣化している。また一部の医者は、抗菌剤による治療効果の特徴を重視せず、勝手に薬剤の使用法を決めており、一部の医者は各抗菌剤の不適切な使用によりもたらされる可能性のある(またはすでにもたらされた)危害に対する認識に欠ける。さらには、予防的抗菌薬投与の範囲と時間を拡大し、手術の前後に長時間にわたり大量の抗菌薬を投与する医者までいる」と語る。
衛生部の調査によると、中国の入院患者のうち、抗生物質を使用するケースは70%にのぼり、欧米の2倍に達する。うち、外科ではほとんど全ての人が抗生物質を使っており、その割合は97%に達する。外科の手術の前に予防的に抗生物質を投与するケースは95%に上る。しかし、本当に抗生物質を使用する必要がある病人は20%未満だという。
衛生部の馬暁偉副部長は、「衛生部はかつて、抗菌薬の臨床使用に関し、専門家による科学的論証を行った。その中で、抗菌剤の使用を大幅に減少させたにもかかわらず、病院での感染・発病率は上がらなかった」と語る。
専門家は、術後の患者の感染を防ぐ上で重要なのは予防であり、医者の手の衛生、環境の衛生、患者の栄養状態、無菌操作制度の実施が重要だと指摘する。