中国月探査プロジェクト1期衛星システム総指揮兼総設計師の葉培建氏(中国科学院院士)はこのほど、「中国は火星探査機の独自打ち上げを急がなければならない。残された時間は少ない」と語った。葉氏のこの言葉には根拠がある。地球と火星はいずれも太陽の周りを公転しているため、2つの天体が最も近づく時期を選んで打ち上げれば、軌道修正でのエネルギー消耗を最小限に抑えることができる。しかしこの機会は26カ月に1度しか訪れないのだ。人民日報が伝えた。
▽深宇宙探査の目的は資源
「地球上の問題もまだ解決できていないのに、なぜ宇宙を研究する必要があるのか?」----
葉氏はたびたびこのような質問をされるという。これについて葉氏は「(深宇宙探査の)最も重要な目的は資源だ。宇宙には、高度資源(高度が高い)、環境資源、物質資源、情報資源という4つの資源がある。これらの資源は人類の生活と密接に関わる。また、宇宙環境には高純度化、微重力といった地球環境には無い特徴がある。これは医薬品、冶金、精製等の産業に役立つ」と説明した。葉氏はまた、「深宇宙の探査能力は国の政治、経済、科学技術の総合的実力、国家能力を示す象徴である』とも言える。深宇宙の探査は、宇宙の形成および太陽系、地球生命の進化などの研究にとっても重要な意義がある。このほか深宇宙の探査は経済的利益を生み、国民生活に恩恵を与える」と語った。
▽月探査プロジェクトで技術が向上
葉氏によると、中国は月探査プロジェクトを通じて多くの深宇宙探査技術を掌握し、一連のインフラを新たに建造した。月探査プロジェクト2期の実施期間中、中国は2つの大型地上観測制御ステーションを建設した。さらに技術開発を通じて中国の深宇宙観測制御通信能力は大幅に向上し、地球から4億キロ離れた火星にも到達できる、遠距離観測制御通信能力を備えた。
葉氏は「今年下半期には月探査衛星『嫦娥3号』が打ち上げられ、初めて月面着陸を試みる。搭載される月面車は月面で3-6カ月に渡り作業し、関連データの測定と地上への伝送を行う。2020年ごろまでには月の土壌の採取とサンプル持ち帰りを実現できる見通しだ」と語る。
▽火星探査が直面する4つの難題
火星は地球以外で最も人類の居住に適した内惑星と見られており、科学技術大国がこぞって探査を行っている。
葉氏は、「世界各国の深宇宙探査には2つの特徴がある。1つは月探査を実施した国がすぐに火星探査に着手している点。中国より少し遅れて月探査を実施したインドもすでに火星探査を開始している。2つ目は、今世紀に入ってから現在に至るまで、火星探査の回数は月探査を上回っており、世界的に火星への注目が集まっている点。ただし、中国は総合的に考慮した結果、現時点では明確な火星探査計画を打ち出していない」と語る。
葉氏によると、火星探査技術は複雑で、4億キロ離れた火星までの遠距離通信問題など、以下の3方面の難題を解決しなければならないという。
第一に、距離が遠いため通信に時差が生じ、信号の行き来に46分かかる。また飛行時間が長く、地球から火星まで片道で10カ月が必要となる。このほか、太陽、地球、探査機が一直線上に並ぶ時期、通信が太陽放射による影響を受けるが、火星探査機が火星に到着するまでに、この影響を受ける時期が2カ月に及ぶ。
このため、火星探査機は火星に向かう途中、および深宇宙探査任務を実施する間、「自主管理」「自主ナビゲーション」の能力が必要となる。
第二に、距離が遠いため、軌道測定の精度が下がる。新たな技術を駆使し、火星に近い点における探査機制御の精度を保証しなければならない。
第三に、火星探査機の開発にあたっては、火星の表面温度や大気などの環境を知る必要があるが、人類の火星に対する理解は限られている。
葉氏は、「国際協力を通じて深宇宙探査資源を十分に利用することができるが、深宇宙探査を独自に実施すれば国の科学技術力を示すことができる。我々はできるだけ早く独自の火星周回探査を実施する必要がある」と語る。
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