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6.2 社会基盤分野の現状および動向

(1) 交通・運輸

 中国は急激な経済成長の裏で輸送インフラ不足に悩まされてきた。中国政府は近年、インフラの大幅な改善をめざしてすべての輸送モードに積極的に投資を行ってきており、その成果は着実に現れてきているが、依然として多くの課題が残されている。

中国交通運輸部計画局の李興華・副局長は2008年11月25日、2009年には交通インフラ整備に約1兆元規模の投資を見込んでいることを明らかにした。主に道路や沿海の港湾、内陸河川の港湾や航路などの施設の建設に充てられる。

同副局長によると、高速道路への投資が最も多く、4000億~5000億元が投入される見通しになっている。また、農村道路の建設には2000億元、沿岸の港湾建設には700億元、河川港湾や航路建設には200億元が投入される予定という。ちなみに、2008年には、道路と水路のインフラ整備に約8000億元が投入された。

 なお国家発展改革委員会は、2008年分として新規に追加された政府資金1000億元のうち280億元が交通インフラ建設に充てられたことを明らかにしている。内訳は、鉄道150億元、高速道路50億元、農村道路50億元、中西部の支線空港と西部の幹線空港30億元となっている。

1)鉄道輸送

 中国鉄道部によると、2007年末時点で中国の鉄道の営業距離は7万8000kmに達した。内訳は、国営6万3600km、合資9500km、地方4800kmである。また、路線密度81.2km/万km2、複線化率34.7%(営業距離2万7100km)、電化率32.7%(営業距離2万5500km)となっている。

 鉄道の高速化も着々と進んでおり、スピード別に見た営業距離は、時速250km以上:1019km、時速200km以上:6227km、時速160km以上:1万6000km、時速120km以上:2万4000kmに達する。

 2007年末時点で機関車数は1万8300両に達し、このうちディーゼル機関車と電気機関車が全体の99.4%を占めた。主要幹線ではすべてディーゼル機関車と電気機関車が牽引している。この中には、高出力の電気機関車550両が含まれている。

 2007年の年間貨物輸送量は31億4000万トン(預け分を含む)で、トン・キロベースでは2兆3797億トン・km(同)を記録した。旅客輸送量は13億6000万人、人・キロベースでは7216億3100万人・kmに達した。

 2007年4月18日に時速200kmを超える「和諧号」が営業運転を開始して以来、同年末までに旅客輸送量は6121万人、人・キロベースでは129億人・kmを記録した。「和諧号」は、CRH(China Railway High-speed)と呼ばれる高速車両を利用する列車の愛称である。

 鉄道部によると、中国で鉄道が最も混雑するのは春節前後の約40日間で、2009年は1月11日以降の最初の21日間だけで9361万人が鉄道を利用した。1日あたりでは446万人が鉄道を利用した計算になり、前年同期に比べて15.4%の伸びを示した。

 また、鉄道部によると、35日目にあたる2月14日には全国で592万9000人が鉄道を利用した。これは、前年のピーク時より116万5000人多く、春節時期の鉄道利用者数としては過去最高を記録した。

 中国政府は、こうした状況を踏まえ、公共交通機関の柱として鉄道輸送力の強化に積極的に取り組んでいる。鉄道部が2008年11月27日に公布した「中長期鉄道網規画」(2008年調整版)では、2020年までの鉄道営業距離達成目標を、2004年に公布した「中長期鉄道網規画」で定められていた10万kmを12万kmに上方修正した。これによって、2020年までに新規に建設される鉄道の営業距離は4万1000kmになった。このほか、電化率は従来計画の50%から60%に、また石炭の輸送能力も23億トンまで引き上げられた。

 鉄道部の陸東福・副部長は、「中長期鉄道網規画」の公布以来、鉄道建設に8090億元が投入されたとしたうえで、このうち地方政府と企業の負担額が1400億元であったことを明らかにした。また、同副部長は新しい目標を達成するためには2020年までに総額で5兆元の投資が必要になるとの見通しを示した。

 なお、鉄道建設は中国政府の打ち出した内需刺激策の1つとして位置付けられており、2009年の鉄道部門における固定資産総投資額は7007億元に達するとみられている。新規のレール敷設距離は5148km、新規開通路線は5849km、複線レール敷設距離は3462km、複線開通路線は4662km、新規電化開通路線は5606kmに達する見通しとなっている。

 中国の鉄道建設計画ではスピードアップも大きなテーマとなっている。中国では現在、日本やフランス、ドイツ、カナダから導入した技術を用いた時速200~300km級の高速列車が運行しているが、さらにスピードアップした時速350km以上で走行可能な高速鉄道技術の構築に着手している。科学技術部と鉄道部が2008年2月26日に合意したもので、これまでの成果を踏まえ、独自の研究開発を強化し、北京と上海を結ぶ路線に導入する計画という。

 道路交通の混雑緩和をめざす地下鉄建設も着々と進められている。北京では、4号線、6号線第1期、8号線第2期、9号線、10号線第2期、亦壮線、大興線の7路線の地下鉄建設が行われているほか、2009年には15号線第1期、昌平線、房山線、西郊線、7号線、14号線の建設がスタートすることになっている。こうした地下鉄建設にかかる費用は総額で2000億元と見込まれており、2015年には完成の予定になっている。

2)自動車と道路輸送

 交通運輸部が2008年4月18日に公表した「2007年道路・水路交通業界発展統計公告」によると、2007年末時点の中国の道路総延長は358万3700kmに達した。内訳は、国道13万7100km、省道25万5200km、県道51万4400km、郷道99万8400km、専用道路5万7100km、農村道路162万1500kmとなっており、農村道路が全体の45%を占めている。

 高速道路の総延長は2007年末時点では5万3900kmであったが、交通運輸部の李盛霖・部長が2009年1月15日に明らかにしたところによると、2008年末時点では6万kmに達し、米国(10万km)に次いで2位となった。

 2007年の道路運送量は163億9400万トン、トン・キロベースでは1兆1354億6900万トン・kmに達した。旅客輸送量は延べ205億700万人で、人・キロベースでは1兆1506億7700万人・kmを記録した。2007年末の営業用自動車数は849万2200台で、このうち旅客用自動車が164万7300台、貨物用自動車が684万4900台となっている。なお、中国の自動車保有台数は2007年末時点で4358万台(「2008中国統計年鑑」)に達している。

 国務院が2007年10月に公布した「総合交通網中長期発展規画」では、2020年の総合交通網(航空、海上、都市内道路、農村道路を除く)の規模を338万kmとしたうえで、農村道路を除いた道路網規模を300万km以上(2級以上の道路65万km、高速道路10万kmを含む)とする目標を掲げている。

 また同規画では、中国の交通運輸体系の効率が低い現状を踏まえ、一体化交通運輸体系を構築する方針が打ち出されている。具体的には、旅客の乗り換えがスムーズに行えるようにするほか、貨物運搬の接続効率の改善などをめざす。

 中国では、交通部門でのエネルギー消費が大きく、汚染も深刻になっていることから、既存自動車の省エネや排出抑制技術を導入するとともに、ガスを燃料とした自動車やハイブリッド自動車の研究開発も進められることになっている。

 交通事故の減少も大きなテーマの1つとしてあげられており、事故の事前予防や科学的な管理、輸送システムの安全性と信頼性の向上、救急能力の向上に対する中核技術などの研究が行われる。

 大都市の交通渋滞の解決も急務になっており、軌道交通を中心とした一体的な都市交通システムと都市部におけるインテリジェント交通システムに関する中核技術の研究を行うほか、交通需要管理を強化し、乗用車の利用を誘導または制限することによって渋滞を緩和することも検討されている。

 中国自動車工業協会によると、2008年の中国の自動車製造台数は前年比5.2%増の934万5100台、販売台数は同6.7%増の938万500台となったが、伸び率は前年に比べてそれぞれ16.8ポイント、15.1ポイントという大幅な落ち込みをみせた。

 こうしたなかで、温家宝首相が2009年2月14日に招集した国務院常務会議では、自動車産業と鉄鋼産業の調整・振興に関する規画が審議され、原則的に承認された。それによると、自動車消費市場を育成するための措置として、2009年1月20日~12月31日までに限り、排気量1600cc以下の乗用車の自動車購入税が5%に引き下げられることになった。

 また、企業による技術革新・技術改良、新エネルギー車と部品開発を支援するための措置として中央政府が今後3年にわたって100億元の特別資金を計上する。さらに、こうした新エネルギー車や省エネ車の大都市での普及をはかるため、政府が補助金を出すことになった。

3)船舶および水路輸送

 「2007年道路・水路交通業界発展統計公告」によると、中国の内陸河川航路は2007年末時点で12万3500kmに達した。また、水路によって運送された貨物量は24億8700万トンで、トン・キロベースでは5兆5485億5000万トン・km、旅客輸送量は延べ2億2000万人、人・キロベースでは73億5800万人・kmを記録した。

 中国には2007年末時点で、19万1800艘の輸送用船舶があり、内訳は内陸河川用18万200、沿海用9300、遠洋用2300となっている。コンテナ船は2129艘である。

 交通運輸部は2009年1月6日、春節期間の水路による旅客輸送量が前年同期を8%上回る延べ3100万に達する見込みであることを明らかにした。水路による旅客輸送用船舶は1万3000艘に達するとみられている。

 また、交通運輸部は2009年2月11日、長江本流航路の整備などに20億元を投じる考えを明らかにした。中国政府が進める内需拡大策の一環で、下流の「三沙水路整備プロジェクト」の1期、中流の黒砂洲、武穴、載家洲、張南上浅区、周天、瓦口子、沙子などの水路整備プロジェクト、上流の三峡ダム直下流部にある暗礁爆破工事などが含まれている。

 整備の対象にあがっている航路は砂床であることから、運輸面での障害となっていた。このため中国政府は2008年に8億元を投入して長江本流航路の整備プロジェクトに着手した。

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