4.1 環境および資源・エネルギー分野の概要

(1) 関連政策

1)各政策の分野別取り組みについて

 中国政府は、エネルギー資源の大規模な開発と利用が環境汚染と気候変動の主要な要因の1つであるとの認識を示したうえで、石炭を中心として、エネルギーのクリーンな利用に最大限の注意を払いながら環境保護に焦点をあてて生態の破壊と環境汚染の防止に取り組んでいく意向を表明している。

 2006年3月に全国人民代表大会(全人代)で承認された、中国の全体計画である「中華人民共和国国民経済・社会発展『第11次5ヵ年』規画綱要」では、単位GDP(国内総生産)あたりのエネルギー消費量を2005年比で2010年までに20%削減するとともに、汚染物質の排出量を10%削減する方針を打ち出した。中国では、「節能減排」(省エネ・排出削減)がエネルギー・環境問題を語るうえでのキーワードとなっている。

① 中長期科学技術発展規画(2006~2020年)

 科学技術政策に関する長期的な方向性を示した「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006~2020年)」(「国家中長期科学和技術発展規劃綱要(2006-2020年)」)は、重点課題として「持続可能な発展を可能にするエネルギー、水・鉱産資源、環境技術の開発」をあげている。

 同規画では、11の重点領域と16の重大特定プロジェクトが定められている。11の重点領域についてはさらに細かく68件のテーマがリストアップされている。エネルギー、資源、環境に関しては、重大特定プロジェクトとして①大規模な油田と炭層ガスの開発②大型先進加圧水型炉と高温ガス冷却炉による原子力発電所の建設③水質汚染の抑制と管理体制の確立――があげられている。一方、重点領域については、以下の構想と優先テーマが掲げられている。

分野

発展構想

優先テーマ

エネルギー

①省エネ、エネルギー消費量の削減を優先とする。主要な省エネ分野における重要な技術を把握するために、積極的に省エネ技術を発展させ、一次エネルギーの利用効率と最終利用効率を上げる。
②エネルギー構造を多様化し、供給を拡大する。石油・天然ガスの開発・利用、および水道、電気の技術水準を高めるとともに、原子力技術の発展をはかることによって原子力発電の自主的イノベーション能力を構築する。風力や太陽、バイオマスエネルギー等の再生可能エネルギー技術のブレークスルーを達成し大規模利用をはかる。
③石炭のクリーン・効率利用を進め、環境汚染を低減する。石炭のクリーン・高効率化技術を発展させ、国際的な先進水準に到達させる。
④エネルギー設備の技術導入、消化、吸収と再イノベーション能力を高める。先進的な石炭火力発電、原子力発電等の重要な設備製造技術の把握に努める。
⑤エネルギーの地域最適化配置技術能力を高める。信頼性のある先進的な送電技術開発に重点を置き、大容量、遠距離、高効率の送電を実現する。

・工業分野での省エネ

・石炭のクリーン・高効率な開発利用、液化および複合利用

・複雑な地質における石油・天然ガス資源の探査および開発利用

再生可能エネルギーの低コストかつ大規模な開発利用

・超大規模な送・配電と電力網の安全確保

水資源・鉱物資源

①資源の節約を優先する。農業の高効率節水と都市における水の循環利用を重点的に研究し、多流域にまたがる水の調達、雨水利用、海水淡水化等の水資源開発技術を発展させる。
②既存資源の埋蔵量を拡大する。地質を重点的に研究し、鉱山の深部評価と高効率探査技術を発展させ、チベット高原等の複雑な条件下における鉱物を早急に調査し、大規模な予備資源基地として資源の供給量を拡大する。鉱物資源の高効率採掘と総合利用技術を開発し、水と鉱物資源の総合利用率を高める。
③積極的に非在来型資源を開発する。炭層ガスと海洋鉱物資源等の新規資源の開発、利用をはかり、非在来型資源の利用技術の研究能力を向上させる。
④資源探査・開発設備のイノベーションを強化する。高精度の資源探査・掘削設備、大型鉱山機械、海洋開発プラットフォーム等の技術を積極的に開発し、資源探査設備を国際的な先進水準に到達させる。

水資源の最適化配置および総合開発利用

・総合的な節水

・海水の淡水化

・資源の探査、確認埋蔵量の拡大

・鉱物資源の高効率開発・利用

・海洋資源の高効率開発・利用

・総合的な資源利用のための区域計画

環境

①循環経済の発展を導き支援する。深刻な汚染を発生させている業界向けにクリーン生産技術を開発し、廃棄物の減量化、資源化利用・安全対策、循環経済に共通した技術の研究を強化する。
②地域環境の総合管理を行う。流域内の水環境および地域の大気環境汚染の総合的管理、典型的な生態機能悪化地域に対する総合修復技術の展開およびモデル構築、飲用水の安全確保技術および生態・環境の監視・警報技術を開発する。
③環境保護産業の発展を促進する。中国の国情に適した環境保護設備・計器を重点的に研究し、国産の環境保護製品の市場占有率を引き上げ、環境保護の設備・技術水準を向上させる。
④国際環境協力活動に積極的に参加する。

・総合的な汚染対策および廃棄物の循環利用

・脆弱な生態地域における生態システムの機能修復

・海洋生態および環境保護

・地球規模の環境変化の監視・測定および対策

 このほか中長期科学技術発展規画は、先端技術の項目で、エネルギーの将来の課題は経済的、効率的、クリーンな利用と新エネルギーの開発にあるとしたうえで、先進エネルギー技術として①水素エネルギーおよび燃料電池技術②分散型エネルギー技術③高速炉技術④磁場閉じ込め方式核融合――をあげている。

② 「第11次5ヵ年」科学技術発展規画

 「国家『第11次5ヵ年』科学技術発展規画」(「国家“十一五”科学技術発展規劃」)は、エネルギー・資源・環境分野において、以下の戦略目標を掲げている。

  • 国民経済の重大なニーズに応え、エネルギー・資源・環境における中核技術のイノベーションを強化し、技術的な障害を乗り越える能力を高める。
  • 省エネの中核技術を飛躍的に進歩させ、単位GDPあたりのエネルギー消費量の20%削減をサポートする。
  • 複数の重点業界と地区において循環経済技術のモデル事業を構築し、資源の総合利用効率を高める。
  • 環境汚染を基本的に抑制し、生態悪化の傾向に歯止めをかける。

 同規画では、こうした戦略目標に基づいたエネルギー・資源・環境分野の重点特定プロジェクトに加えて、緊急のニーズに応じて克服する必要がある各種技術を以下のように具体的に定めている。

目標

主要項目、技術

戦略目標に基づいた重点特定プロジェクト

重点特定プロジェクト:
-大規模な石油・ガス田と炭層ガスの開発
-大型先進加圧水型炉と高温ガス炉
-水質汚染の抑制と管理

緊急のニーズに応じて克服する必要のある技術

クリーンで信頼できる低廉なエネルギーの供給:
-工業・建築・交通分野の省エネ技術
-クリーン石炭技術
-風力、太陽、バイオなど再生可能エネルギー技術
-超高圧送電と電力網の安全関連技術
節約、効率向上、資源の供給能力拡大:
-節水技術
-海水淡水化技術
-油田の採収率を高める技術
-油田・ガス田の高効率探査技術
-複雑な地質条件下での油ガス・炭層ガスの高効率採収技術
循環型経済の発展の導入と支援:
-家庭ゴミ処理・資源化と資源管理技術
-生態悪化地区および重大プロジェクト周辺の生態系に関する総合整備技術
-クリーン生産と循環経済に関する中核技術の研究および事業モデル

今後の発展を見据えた先端技術と基礎研究

先進的なエネルギー技術:
-省エネ技術
-石炭の高効率利用・転化技術
-新エネルギーと再生可能エネルギー技術
-原子力・水素エネルギー技術
-燃料電池技術
-分散式エネルギー技術
-クリーン石炭技術
-石炭ガス化をベースとした複合発電モデル事業

2)重点分野推進政策

 中国政府は、国民経済と社会発展の緊急のニーズに立脚し、エネルギー、資源、環境の技術開発を優先している。エネルギー分野では省エネと供給の多様化・拡大、資源分野では戦略的資源の調査・開発・利用に関した技術水準の向上、環境分野ではクリーン生産と循環型経済の確立に加えて脆弱な生態系の管理――が柱に据えられている。

 このうちエネルギー関係では、国務院が2004年6月30日に原則的に可決した「エネルギー中長期発展規画綱要(2004~2020年)」に基づき、政府の関連部門は以下のような政策・計画を定めている。

  • 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」(2006年8月)
  • 「中国省エネ政策技術政策大綱」(2007年2月)
  • 「エネルギー発展『第11次5ヵ年』規画」(2007年4月)
  • 「省エネ排出削減総合事業方案」(2007年6月)
  • 再生可能エネルギー中長期発展規画」(2007年8月)
  • 「原子力発電中長期発展規画」(2007年11月)
  • 再生可能エネルギー発展『第11次5ヵ年』規画」(2008年3月)
  • 「国家重点省エネ技術推進目録」(2008年5月)

 このほか「再生可能エネルギー法」(2006年1月)、「改正省エネ法」(2008年4月)、「循環経済促進法」(2009年1月)が施行されるなど、中国政府の政策は、きわめて多岐にわたる。このため、科学技術に焦点を定めて、中国が重点的に推進している政策を紹介する。

① エネルギー分野

ⅰ 建築省エネの中核技術に関する研究とモデル事業

 建築省エネに関する最適化設計・一体化技術、大規模公共建築物の省エネ技術、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー利用技術を研究し、シリーズ化・セット化された省エネ・システムを開発し、新築建物の総エネルギー消費を50%以上削減する。また、新築建物の暖房用エネルギー消費を60~65%、住宅と中小規模の公共建築物の電力消費量を40%、大規模公共建築物の電力消費量を60%、それぞれ削減する。

ⅱ 高出力風力発電装置の開発とモデル事業

 2~3MWの風力発電装置を開発するとともに、近海部に試験的な風力発電所を設置し、洋上風力発電技術を修得する。2MW以下の風力発電装置の中核技術を修得し、産業化を実現する。大型風力発電装置の検証システムを構築する。

ⅲ ±800kV直流/1000kV交流超高圧送電技術・設備

 超高圧直流・交流送電に関する研究と試験によって、超高圧送電の中核技術の試験・研究の方法を把握し、大規模電力網技術と送変電設備製造技術の発展を促進する。

ⅳ 水素エネルギーおよび燃料電池技術

 化石燃料と再生可能エネルギーからのコストパフォーマンスの高い水素製造技術、経済的で高効率の水素貯蔵・輸送技術、燃料電池の基盤となる触媒の調整およびスタック集積技術、燃料電池による発電および自動車の動力システムの集積技術、水素エネルギーと燃料電池の技術規則・基準を作成する。

ⅴ 分散型エネルギー技術

 とくに化石燃料をベースとするマイクロタービンおよび新熱エネルギー・リサイクル等の最終的なエネルギー転換技術、エネルギー貯蔵技術、冷暖併給技術、再生可能燃料と化石燃料の相互補完に焦点をあてたマイクロタービンと燃料電池を融合した分散型エネルギーシステムの飛躍的な進歩を達成する。

 また、国家発展改革委員会が2007年4月に公布したエネルギー分野の専門規画である「エネルギー発展『第11次5ヵ年』規画」(「能源発展“十一五”規劃」)は、省エネを優先的に達成し、国内に足場を固め環境を保護し、国際的に見て相互に有利となるエネルギー戦略を強化するとの方針を示したうえで、以下の5つのプロジェクトを重点的に進めるとしている。

ⅰ エネルギー基地建設プロジェクト
  • 優先順位を定めて石炭基地を開発する
  • 油ガス基地の建設を加速する
  • 水力発電を積極的に開発する
  • 石炭火力発電所の建設を合理化する
  • 原子力発電所の建設を加速する
ⅱ エネルギーの貯蔵・輸送プロジェクト
  • 石炭輸送道および港
  • 油ガス輸送パイプライン・ネットワーク
  • 電力網設備
ⅲ 石油代替プロジェクト
  • 石炭・バイオマスをベースとした液体燃料および石炭化学工業の発展を加速するとともに、優先順位を定めて重点モデルプロジェクトを建設する
再生可能エネルギー産業化プロジェクト
  • 風力発電やバイオマス発電、バイオペレット燃料、太陽エネルギーを重点的に発展させ、産業化に向けてのモデルとなる規模の建設を行う
ⅴ 農村地域での新エネルギー・プロジェクト
  • 小型水力発電と配電網の建設を加速する
  • 風力発電やバイオマス、太陽エネルギー等を利用する
  • 2010年までに合計7万5000kWに達する小型風力発電装置を30万台設置する
  • 家庭でのメタンガス利用を4000万戸に拡大する
  • ある程度の規模を持った飼育場のメタンガス・プロジェクトを4700ヵ所に拡大する
  • 全国の農村でのメタンガス発生量を160億m3にする
  • 農村での太陽熱温水器の保有量を5000万m2にする

② 資源分野

ⅰ 中西部における大型鉱物基地を探査するための技術開発と実証

 三江源地域(長江、黄河、瀾滄江)をはじめとした中西部の重点10地区における成鉱帯法則を把握し、中西部の異なる地形条件に適した地質、物理、化学、リモートセンシング一体となった総合的な探査技術を開発する。また、今後採掘が可能な大型鉱床区を25~30ヵ所、商業用の銅、鉄、鉛、亜鉛などの大型鉱山を10~15ヵ所探査し、銅や鉄、鉛、亜鉛、金などの埋蔵量を調べる。

ⅱ 複雑な金属鉱山の採掘、選別、冶金に関する中核技術と装備

 複雑で処理が難しい鉱山の採掘、選別、冶金に関する中核技術を取得し、複数の大型採掘・選別・冶金プラントを開発する。また、複雑な条件下における採鉱損失率を20~30%、採鉱コストを15~20%、エネルギー消費を10~15%引き下げる一方で、資源の総合利用率を8~10%高めるとともに、利用可能な金属資源量を15億~20億トンに拡大する。

ⅲ 大規模な石油ガス田と炭層ガスの開発

 西部地域の複雑な地質条件下における石油ガス・炭層ガス、深海の石油ガスなどに対する高精度の地震探査技術と採掘技術を研究し、関連技術と設備の自主設計・製造能力を高め、石油と天然ガスに対する探査率をそれぞれ10%、20%引き上げ、石油の実収率を40~45%まで高める。

ⅳ 大規模淡水化および総合利用技術の研究と実証

 日量5万トン規模の低温型多重効用蒸発(MED)式海水淡水化技術・設備、ワンセット日量1万トン規模の逆浸透膜(RO)式海水淡水化技術・設備、原子力を利用した日量10万トン規模の海水淡水化技術・設備を開発し実証プロジェクトを立ち上げる。また、1時間あたり10万トン規模の海水循環冷却プラント技術と生活用の海水利用技術および海水資源総合利用技術を開発する。

③ 環境分野

ⅰ クリーン生産と循環型経済に関する中核技術の研究および実証

 10~20項目の「循環型経済を発展させる技術」、「重汚染業界においてクリーン生産を行う中核技術と工程」、「グリーン産業チェーンを構成する技術」を重点的に開発するとともに、30項目の「固体廃棄物の安全な処理・資源化に関する中核技術」を開発する。また、大量の工業廃棄物を再利用する50種類の高付加価値製品を開発するとともに、5~7ヵ所の代表的な工業地域を選定し「生態工業」の実証を進める。

ⅱ 代表的な脆弱生態系に対する再建技術と実証

 代表的な脆弱生態区に存在している生態面での問題に対して、こうした脆弱生態系を総合的に管理する15~20項目の技術・管理方法を開発するとともに、生態系を再建する技術開発とモデル事業を行い、技術と管理方法の普及を拡大する。生態環境に関する基礎的なデータベースと情報プラットフォームを構築し、データを共有化する。

ⅲ 水質汚染の抑制・管理

 タイプの違う代表的な流域を選定し、水域生態機能の区画を行い、水質汚染の抑制、湖沼の富栄養化の予防・改善、水環境の生態修復に関する中核技術を研究する。また、飲用水源の保護と飲用水の処理・輸送技術を飛躍的に進歩させ、安全な飲用水を保障する統合技術を開発し、国情に即した水質汚染に関するモニタリング・管理ならびに水環境品質改善体系を構築する。

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