2024年08月01日-08月02日
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AI心理カウンセラーは不安を解消してくれるのか?

2024年08月02日

 人工知能(AI)技術の発展に伴い、中国では人間の心理面における応用も徐々に深化しており、精神疾患のカウンセリングへの活用も模索されている。中国新聞網が伝えた。

 中国国家衛生健康委員会の統計データによると、2021年末現在、中国で登録された重度精神障害患者は660万人だが、中国国内の精神科医はわずか6万4000人で、医師全体のわずか1.49%にとどまっている。

 中北大学の学生チームはこのほど、「AI心理的治癒大規模言語モデル」と「AI感情認識サービスプラットフォーム」を開発した。大学生のメンタルヘルス問題をより効果的に解決するのが狙いだ。実際、ここ数年はAI技術による心理サービスの活性化は珍しいことではなくなっており、社会公益団体「木の穴行動救援チーム」を立ち上げたAI分野の専門家もいる。同チームでは発足からの約5年で、6000件余りの自殺行為を未然に食い止め、少なくとも3000人の命を救ったという。

 2022年10月、中国科学院院士(アカデミー会員)で北京大学第六医院長の陸林氏の指導のもと、臨床心理センター主任の黄薛氷氏率いるチームが開発した「北小六」AI心理サービスロボットが導入された。臨床ランダム対照試験の結果、このロボットはうつ病や不安症状の改善に顕著な効果があり、その介入効果は新人治療師よりも優れていることが判明し、これまでに約1万人にサービスを提供している。

 同医院臨床心理センターの張爽氏によると、このロボットは認知、感情、行動、人間関係、社会機能の5つの側面から来訪者の心理検査と階層評価を実施し、精密な相談サービスを行う。24時間途切れることなくサービスを提供でき、心理カウンセラーと共に来訪者に対応することも可能だという。

 2023年6月30日、華東師範大学心理・認知科学学院が設立した上海市心理健康・危機介入重点実験室は、鏡像科技公司と連携してAIカウンセラー「EmoGPT」を発表した。このオンライン型マンマシンインタラクション心理健康相談プラットフォームは、先進的なAI技術と心理学の専門知識を統合しており、危機識別と感情判断の機能を備えている。また、西湖心辰が開発したAI心理療法ロボット「小天」など製品も業界関係者の注目を集めている。

 北京市社会科学院管理研究所の王鵬副研究員は「生成型AIや自然言語処理技術の進展、および政策支援などの多様な理由により、AIの心理相談分野での応用がより精密かつ効率的になっている。このような背景の下、心理サービスはAI技術競争の新たな分野となった」と語った。

 AI技術の応用はさまざまな業界で懸念を引き起こしているが、心理サービスに活用されることで、精神科医や心理カウンセラーの仕事が奪われるのだろうか。

 長年にわたりAI技術の発展に注目してきた経済学者の余豊慧氏は「AI心理サービスにはAIならではの優位性はあるが、完全に人間に取って代わることは不可能だ。まず、AI技術は人間の心理カウンセラーによる感情面でのサポートと心遣いを代替することはできない。次に、AI技術では一部の複雑な心理的問題や精神疾患を処理できない可能性がある。こうした問題はより深い専門的な知識と技術に基づいて解決することが必要だ」と見解を述べた。

 中関村モノのインターネット産業連合の袁帥副秘書長は「AI心理の応用と人間の心理カウンセラーは相互補完関係であるべきだ。最初のスクリーニングや診断補助、初期段階の介入において、AI技術は人間の働きの一部を代替することができる。踏み込んだカウンセリングや感情的なやりとり、危機への介入といった高度な専門的技術と人間の心の奥に触れる分野については、やはりAIは人間の心理カウンセラーの代わりにはならない」との見方を示した。

 
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