中国広東省広州市の地下鉄にこのほど、「スマートヘッドギア」と「戦術ベスト」を装着した警察犬が登場した。人民網が伝えた。
この新装備は、華南農業大学のチームが広州市公安局公共交通分局特殊警察大隊と共同で開発した犬用の装備で、「ワンワンSP」と名付けられている。
「ワンワンSP」研究開発プロジェクトチームの中心メンバーで、同大学食品学院の学生である何政康さんは「この装備には遠隔映像伝送やレーザー雲台(ジンバル)を搭載した遠隔警察犬指揮システムが組み込まれ、レーザー、指令伝達、高画質リアルタイム画面が一体化しており、犬が警官の視界から外れた場所に行ったとしても複雑な指令を実行できる。また、アドホックネットワーク技術により、電波の状況が悪い場合でも、人間と犬のリアルタイム通信を維持できる。現在、広州市の複数の地下鉄駅で実際に配備されており、重要な場における警備・保安検査にも何度も使われている」と説明した。
犬が視界から外れた場合の犬と警察官の別行動は、広州市公安局公共交通分局特警大隊にとって長年の課題であった。そのため、彼らは「スポットライト測位指揮技術」を開発したが、実際の操作ではネットワーク信号や障害物、空間の広さなどの影響を受け、リモートでの指揮がうまく行えなかった。ある警察OBは「警察犬の進む方向を変えることができず、『座れ』や『前に進め』といった指示しか実行できなかった」と述べた。
リモート操作で指揮ができ、警察犬を曲がらせることもできる犬用のスマートウェアラブルデバイスを開発することは可能だろうか。何さんは友人の巫沢宇さんに声をかけた。2人はすぐにチームを作り、犬用ヘッドギアの研究開発に着手した。
離れた状態で、犬に「止まれ」や「動け」を指示するには、レーザー誘導とリアルタイム映像を送るカメラが重要だ。レーザーと高精細カメラの搭載を支援する雲台の適合性がプロジェクトのカギとなった。市販の雲台は大型で重すぎる。何さんは「市販の主な雲台を何種類も試したが、犬のダッシュが速すぎて効果や安定性が落ちた。そこで自分で開発することに決めた」と振り返った。
チームは、警察犬の高速ダッシュや運動習性に対応するため、二重フィルタリングアルゴリズムを採用して雲台の安定性を確保した。また、部品をコンパクトに集約することで軽量にし、コアモジュールは指の爪ほどの大きさにまで小型化された。
雲台の課題が解決すると、次はヘッドギアの設計だった。犬が快適に装着でき、装備がしっかり固定されるヘッドギアを作る上で、チームはフィット感に注目した。約3カ月かけて設計ソフトを研究し、曲面モデリングを学んだ。その後、スプリンガーやマリノアなど一般的な警察犬の品種の頭部を3Dモデリングし、各犬種に適合するヘッドギアをデザインした。
試験と改良を繰り返し、チームは実際の任務に適した装置を開発することに成功した。この装備は技術面では「スマート光制御感知+多径反射に強い通信統合」という特長を持ち、軽く快適に装着でき、見た目も美しくなった。この装備は現在、さらなるアップグレードが進められており、何さんは「例えば山間部の捜索救助では、バイタルサインの検出でサーマルイメージング装置が必要になるが、これを装備にどう組み込むのかについて、今後考えていきたい」と語った。
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