広州大学は、中国科学院や同済大学、米ペンシルバニア州立大学などの科学者と協力し、火星北半球ユートピア平原南部にある中国火星探査車「祝融号」着陸エリアの地下10~35メートルに、多層傾斜沈積構造が存在することを発見した。これらの地質的特徴は地球の海岸沈積物と相似しており、火星中・低緯度地域にかつて古代海洋が存在したことを示す直接的な証拠となる。関連する研究成果はこのほど、国際的学術誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載された。科技日報が伝えた。
火星北部の低地に広大な海洋が存在していたかについては、議論が続いている。軌道写真から見て取れる古い海岸線は、火星北部の低地に火星の表面の3分の1を覆う古代海洋が存在していた可能性を示している。しかし、リモートセンシングデータで導き出す古代海岸線の高度分布の不一致や、40億年前に火星の表面が経た衝突、風化、再構築などの過程が、古代海洋の表面の証拠を弱めていることから、火星の古代海洋という仮説については、議論が続いていた。
祝融号は2021年5月15日にユートピア平原南部に着陸した。搭載された火星次表層探査レーダーはデュアル周波数探査レーダーシステムで、地下構造及び存在する可能性がある水や氷の探索を可能にしている。
研究者は火星探査車探査レーダー低周波帯ルートの実測データの分析により、祝融号経由地の地下10~35メートルの範囲内で76の地下傾斜反射体を識別した。これらの層構造は地球沿岸部の沈積物のレーダーイメージング結果と相似する。その一致性と物理的特性は、風による砂丘、溶岩チューブ、川の流れによる堆積といったその他の可能性を否定した。
これらの沈積物の大規模な存在は、火星北部の平原にかつて古代海洋が存在したという重要な地下の証拠を提供しただけでなく、火星がかつて長期間にわたり、温暖で湿度が高い気候があったことを明らかにした。これは火星に液体水が存在するための気温と気圧を長期的に維持していたことを意味している。
(画像提供:人民網)
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